うさぎ
"ふぁぼしたひとの派生イメージより 掌編" シリーズ
うさぎは孤独だった。何度か住まいを転々とした。都会の排気ガスにはうんざりだった。山野を駆け巡り、そこで新しい発見をし、星空を見上げ、穏やかに息をつく生活を愛していた。
うさぎは走るのが速かった。だれよりも速く走った。走る意味を考えたこともあった。しかしうさぎのちっぽけな頭では、その意味を探し出すことはできなかった。それでもうさぎは考えることをやめなかった。うさぎは走ることこそ速かったが、うまく走れるかというと、けしてそういうことはなかった。
やがて走りすぎて足が疲労骨折しても、うさぎは走り続けた。通りがかりの別のうさぎがその手当をした。
うさぎは再び走り続けた。
うさぎはうさぎが走ることによってのみ救われることを知っていた。
そんなうさぎは幸せだった。幸せがどういうものかうさぎは知らなかったが、それでもうさぎは幸せと言えた。
いまでもあの海が見える山へ行けば、うさぎの墓標があるはずだった。
うさぎは辛かった。うさぎは苦しんだ。うさぎは悩み、そして悲しさを知るうさぎだった。
うさぎは幸せだった。空は快晴だった。
うさぎ