ゲームの世界に吸い込まれた!?
「あぁ!惜しい……。」
「勇斗、いつまでゲームやってんの?」
「うっさい、あと少しでクリアだったのにー!」
「本当、ゲーム好きだね。呆れちゃうよ。」
「勝手に言ってろ!」
「はぁ。」
あぁ、もう如月はうっさいな……。
俺はゲームが大好きな中島勇斗。このうるさいやつはおさななじみの如月千奈。ホント、うるせぇ。
「もう、取り上げ!」
「な、何をする!」
すぐ目の前がゴールだったゲーム画面が一瞬にして真っ暗になった。
「ふっふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「だって、勇斗ゲームばっかりやって、つまんないもん。」
「だからってゲームの電源を切るのは……。いくらなんでも……。」
「あ!ちょ、勇斗!」
如月に取られた携帯ゲーム機を無理やり返し、電源を付け直した。
「あれ……。おかしいな……。」
「どうしたの?」
ゲームの電源は入っても画面は白く光ったままだ。
「あれ~?壊れちゃった?」
ニヤニヤしながらこちらを見る如月に睨みをきかせ、携帯ゲームに目をやった。
「う……。まぶしい!」
あまりのまぶしさに携帯ゲーム機を落としてしまった。そのとたん。
「勇斗!すっ吸い込まれるぅぅ!!!」
「わぁぁぁぁぁ!!如月ぃ!!!!!」
何が起こったのだろうか……。
「ここは……。」
ここって。僕が先程までプレイしていたゲームのステージにそっくりだ……。
「まっまさかな……。」
横を見ると如月が倒れていた。
「おいっ……。如月!?大丈夫か!?」
「……んっ…。……勇……斗?」
「とりあえず……。意識はあるようだな……。」
「ここ…………。どこ!?」
「ここ……、俺がやってるゲームのステージにそっくりなんだ。」
「はぁ?」
この青空の下にきれいな草原が広がっている。
「し……信じられない!」
「ただそっくりになっているだけかもしれないが……。」
でもここまで似てる世界なんて……。
「っ……!」
まさか……。ありえない……。
「どうしたの?」
「俺たちゲームに吸い込まれた!?」
いったいどうしちまったんだ……。
「ふっ。人間か。」
空から声が聞こえてきた。
「だ……。誰だよ!?」
「お前ら、本当不幸だよな。」
「な……なんだよ!」
「三百年に1度。ゲームばかりやってだらしない人間には成敗としてゲームの中へ吸い込む。お 前らはそれに当たっちまったんだよ。」
「なに、その流れ。なんで私まで!?」
如月が怒りながら声の主に叫んだ。
「こいつにいつも付きまとっているのが悪いのだろう。自業自得だ。」
「はぁ!?」
「とりあえず、君たちには試練を受けて自分の罪を償ってもらう。すると本物の自分に会える。
その時点で君たちは元の世界に戻れるだろう。それまではこの世界、”非現実”で生きてもらお
う。」
「本物の自分……?」
訳がわからない。なんでこんなことに……。
「まぁ、そのうちわかるだろう。まずは、歩いてすぐの街へ行くんだ。……ま、どうせ死ぬだけだと思うがな。あばよ」
「……あ、ちょ!」
すでに声の主は消えたようだ。
「行くしかないわよね……。」
如月が心配そうな顔をして言った。
「あぁ。行くぞ如月。」
「うん!」
こうして俺たちの長い長い旅が始まった。
ゲームの世界に吸い込まれた!?