ピア・サポート

ほんとにほんとの、マジな話。

目下問題中の弟について、私の見解。

こいつだけは、どうにもならないな。

そう思っている。弟について。

奴はニコチン中毒者で、気弱な癖に人に喧嘩を売りまくり、中指を突き立てては父にしばかれている。
私は奴が地元のヤンキーの前の煙草入れに煙草をなかなか捨てずグズグズするのを「早よせーや!待っとんじゃ!」と何度も声を掛けながら、奴だけは、本物の阿呆だと思った。

思うに、どうしても勝ちたいのだな。勝たなければやられてしまうと思っているのだな。
かの新島襄も、船上で海外密航する際外国人に殴られ、日本刀で切ったろかと思ったが、福沢諭吉の「ペンは剣より強し」という言葉を思い出し、「時流に乗らねば」と自ら愛刀を海へ捨てたという。

奴にもそれだけの心構えを持ってもらわなければ困る。

どんなに本を進めても何をやっても無駄にし、碌に読まない本を流行りだからと欲しがる奴にイライラしながら、私は「お前は一体どうなりたいの」と思っていたが、母から聞くと「働きたい」とのこと。

おお、やればいいじゃん、そう思った。

祖母も言っていた。ああいう子は、仕事にはまるとぐっと違う。
そう思う。
やってみればいいじゃん。

そのためには、勉強と根性が大切だ。

奴はどちらも欠いている。
この先どうすんだと考え、私は何気なく「ピアサポート」と検索し、その内容を見てから「やっぱ止めた」と投げ出した。

思うに、同じ穴に落ちた私にお鉢が回ってきたということか。

あのヤンキーの前でぐずぐずしていた時も、傍に行って「大丈夫だから、早くしなさい」と囁いてやればよかったのだ。

少しこちらが、優しくなればいい。

小さな子を相手にしているのだ。つまりはそういうこと。
格闘技なんか、覚えなくていいよ。
それより根性を身につけなさい。

大丈夫だよ、何にも起きないから。
気の狂った連中なんか、朝っぱらから何もやることなく、目標も目的も何もなくぷらぷらしているだけだ。能無しなんだ。お前はそうじゃない。

生きてくって目標、あるでしょう?
そう言ってやるつもりでいる。導いてやらなくては。

誰かの犠牲が必要として、それは私なのだ。
そう考え、うええと思いながらも、私はそうなる覚悟でいる。

世の中よ、いつまでも舐めていてくれ。
私達は世界の片隅でひっそりと生きていく。案外幸せに日々を過ごす。

奴が馬鹿なのは仕方がない。本物の馬鹿になれない本物の馬鹿だ。言葉遊びがわかるか?

わからない人にはこれを読んでも頷けまい。
私は喧嘩はごめんだよ、とそちらに持ち込もうとする人に尻を叩いて見せ、「やーい、馬鹿がみーるー、馬のけーつー」と歌ってやった。

弟よ、死ぬまで贅沢させてやろう。
そのためにも、とりあえずは煙草止めろ。
そう言いたくても、止められないだろうな。
そして案外早く死んでしまったり、色々あるのだろう。

その日に向けて、覚悟を決めねばなるまいよ。
私は日々を堅実に生きながら、再び決意を硬くした。

ピア・サポート

ほんとに困ってます。

ピア・サポート

奴はマジでいかれポンチ。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-02

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted