今年は秋がないまま冬になった。
「ほら、あの会社の人は自殺したっていうじゃない。
自殺が良いってわけじゃないけど、それだけ仕事を頑張ってたということでしょう?」
電話越しに彼女の険しい表情が浮かぶ。僕は何も返事が出来なくて黙ったまま。
「私だって就職したとき、2kg痩せたもの。営業してノルマがあって、やらなきゃいけないことがいっぱいだった。」
僕は入社して3kg太った。それは仕事ができていなかったということなのか。
僕は静かに、僕を戒めた。
その後も彼女の声は途切れることなく続いて、
「こうやって私と話す時間があるなら、さっさと行動することね。」
その言葉の後、僕の返事を待たずに電話は切れた。通話時間12分8秒。
電話中に僕を戒めた傷から赤い水滴がひとつ、できていた。
あなたはすごい。僕の自殺願望を意図せず払拭してくれた。
「仕事を頑張れないやつは自殺する価値もない」
そういうことでしょう?
ありがとう。
僕は僕を戒めて生きていくよ。
今年は秋がないまま冬になった。
僕の戒めだけじゃ、僕は頑張れないのだろうけど、戒めがないよりかはマシだと、そう思っている。