サイフォンの胎児
シロクマの空
此羽(こはね)はため息をついた。
22歳で新卒入社した会社で8年目になるともうそろそろ毎日が単調になって来たように思う。このまま世間で言う、所謂「お局」という人種になってゆくのだろうか。いや、気づいていない間に、もうなっているのだろうか。
「はぁ…。」
休みを知らない汽車の煙のように、ため息が口からぽっと出て消えていった。みんな昨日と変わらず、ただ無機質に電車に揺られている。そんな様子をぼーっと眺めながら。此羽のため息は底をつくことを知らなかった。
一昨日3年目の後輩が結婚の報告をしてから、直接言われたのではないが、何かいたたまれないプレッシャーを感じているのだった。
「なんか荒んでるな…。」
口にしてみるとまだあんまり落ち込んでいないような錯覚に陥る。 その日此羽が電車の窓から見た空は、今朝テレビでみた動物園のシロクマの毛のようにくすんでいた。
サイフォンの胎児