カップ

太陽ver

好きな人のリコーダーに口付ける。

小学生が考えた「好きな人を感じる方法」なのだろう。
私は、今、あの人のカップを手に、頭の中の天使と悪魔が議論している。
天使は、「ダメよ!私の虫歯が移ったらどうするの!」
悪魔は、「そこかよ、でも虫歯になったあの人を見て、私の虫歯が移ったんだなってニヤニヤしそう…」
私の中の天使と悪魔は変態らしい。
つまり、私も変態なのか…。

私はあの人のカップをテーブルに置いた。

三日月ver

『一番星の輝き』
そんな言葉に私は引き込まれた。
どうやら、目の前にあるカップの名前らしい。
外側からの見た目は陶器のように真っ白だったので
どこが星でなんでカップなのに輝きなのかとても気になってしまった。
手に取ってみる。
中を覗き込む。
内側は濃く深い夜空色をしていた。
そして、カップの底には星がプリントされて
1つだけ大きな輝きのある夜空だ。
なるほど、これが『一番星の輝き』か...と納得した。
私は咄嗟にレジに向かう。
値段は見ていない、ただ惚れ込んだのだ。

家に着くや否や
そのカップを包み箱から取り出し眺めた。
あの感動がもう一度おきる。
そこで私は思い立って
お気に入りの茶葉を用意する。いつもより量を多くして。
ティーポットにお湯を注いで紅茶を作る。
そして今日買ったカップに紅色を注いだ。
あぁ、やっぱりだ。

カップの中に夕暮れが広がった。

カップ

カップ

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-28

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  1. 太陽ver
  2. 三日月ver