試験管
環境問題を考える時、ある日の学校の授業を思い出す。試験管の限られた液体培地にいれたバクテリアは始めのうちは急速に増えるが、培地の栄養が無くなり液も汚れてくると増殖は止まって、逆にバクテリアの数は減少してくる。また、寒天培地にできたコロニーは中心の栄養が無くなると外側に向かって広がっていく、という話だった。
私は地球を試験管に見立てて、そこに人間を置いてみた。
すると人間は地下資源、海洋資源、山林資源を存分に活用し始め、生態系で食物連鎖の頂点に立った。その後爆発的な人口増加で地球は傷みだし、様々な問題を抱える事になった。そのなかに資源の枯渇と環境悪化がはいっている。これを加速させているのは人間の欲望か。国家間の争い、産業界の競争、個人の富の追求は尽きる事がない。また、上空から見た大都市には建物が密集し、その中で巣箱のミツバチの様に大群をなして人間はうごめいている。そして、大都会だけでなく青いアルプスの山脈に、緑のカンボジアのジャングルに、白いアラスカの雪原に、そして茶色いエジプトの砂漠など、何処にでも住んでいる。人間はアメシロがアカシアの葉を求めて次々と木を丸坊主にしていくように大切な自然を破壊し、ザリガニが餌の取り合いや、餌が無くなると共食いをするように戦争で殺し合いをする。いわば人間は地球の厄介な征服者になってしまった。
それでも人間は単独では生きていけないのは周知の事だ。地球には人間を含めて多くの生物がいる。全ての生物は共存共栄、弱肉強食、食物連鎖にかかわっていて、宇宙から見たら小さな地球の中で、今はまだ微妙なバランスを保っている。が、頂点に立つ人間は今後の地球をどのように管理していくのか重大な責任を負っている。近年、再生可能エネルギーの開発が進められている。明るい見通しだ。しかしもっと根本的にやるべきことがあると思う。人間同士の不毛の争いや過度の競争をやめ、全ての面で節度ある世界をめざし、早く地球温暖化や核汚染を無くしていかなければならない。地球という狭い試験管に我々が住めなくならないうちに。
「山の食べ物は少なくなり、環境も悪くなってきた。これでは生きていけない。里に出てみようか。」と、山からクマやサルのつぶやきが聞こえてきた。
2016年6月3日
試験管