「4(10月)月」
私の10月は未だに1996年の4月にある
柔い皮膚の下1枚に4月の世相が
浅く息をして蔓延るのが伝わってくる
春の嵐に見舞われた惰弱な精神が
獣の貌で海岸へと流れ付く頃には恐らく
赤いランドセルの彼女は狂喜を煽動し
冷笑の365日に息絶え絶えな心臓は轟き
先駆者によって刈り取られた稲穂は崇拝する
当年の10月の来訪に歓喜し喚起する
私の10月は未だに1996年の4月にある
生殺与奪に耐え兼ねた自意識はアクセルを踏み
鼻先をかすめたゴミ山へと突っ込んでいく
遠巻きにそれを知った私の10月は
死期迫る4月の枕元に三途の川の冥銭を置きに行く
「4(10月)月」