過去テレビ

 アール氏は両親を誇りに思っていた。母は純粋で優しい女性だった。父は、強く聡明だった。そんな二人に育てられた。アール氏は名の知れた博士になった。その日、アール氏が密かに開発していた過去テレビが完成した。そこで自分の生い立ちを振り返ることにした。
 
テレビに専用のアンテナを付けるだけで過去テレビは使用可能になるのだ。それを取り付けるとテレビの前の椅子に腰を下ろした。画面の砂嵐が消えた後、椅子に座っている自分が映った。

 「ちゃんと映ってるぞ。大成功だ」

 アール氏はまずちゃんと動くことに感動した。これを発表して歓喜する民衆を思い浮かべて気持ちよくなった。すると画面が変わった。
 「懐かしいな。大学生の頃だ。」
 アール氏は教授の顔を思い浮かべた。

 「高校生の時か。家族で夕食を食べているのか」

懐かしさよりも、機械が正常に動いているのが喜ばしかった。
 
「中学生...小学生...おぉ、これは」

 次の画面では父親が赤子のアール氏を抱き上げていた。

 「次は私が生まれる前か」
 それを見てアール氏はすぐにテレビの電源を消した。母親とベッドで絡み合っていたのは知らない男だった。過去テレビが世に出る事は無かった。

過去テレビ

過去テレビ

過去を見る事が出来るテレビを開発したアール氏。 自分の生い立ちを見て見るが....

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted