春の役割

これが私の役割なのでしょうか。

年長者として、求められているのでしょうか。

私は、昔から、小さい子に懐かれやすかった。

それと同時に、その子のコンプレックスの吐き出し口として利用されることも多々あった。
私は、優しくあろうとして。

そうして、壊れたのだ。



近頃世の中に出て、ようやく秋らしくなってきたな、と思える天気になったと町を眺めた。
一人歩きも様になって、犬を連れてやろうとしたら奴は逃げた。
ぽてぽてとゆっくりと歩く。小さな一人乗りのかたつむりなどが家に上手く収まっているのを見て、「よく入るなあ」と思ったりする。

最近も、やはり立場の弱い人からの攻撃というものはあって、私は付き合う義理もないし、それに人権もあるしと、断ってばかりいたのだけど、あれもやはり、年長者として頼られている証拠だろうか、と考えたりする。

ぽかぽかと日差しが差す枯葉の舞う神社を歩く。
この地にも観光名所と言うのはあって、歩いている神社など、なるほど、長くこの地を離れて見れば、立派に、それなりに見える。
意外な盲点だったな。
この町にも良いところはあったのだ。

何故、私なのだろうと考える。
世の中の鬱憤など、知るかよ、自分で解決しろよと言いたくなるのだけど、それをすると本当に縁が切れてしまうので、どうしたもんかとその人を眺めては思う。
こちらから歩み寄ってみようとしても、拒否ばかりされて、それになんだか怒っている。

私、何かしましたか。

あなたの抱えている問題は、あなたのものではないんですか。八つ当たりもいい加減にしないとヘッドロックをかませますよ。

そう心で呟いて、今日も見て見ぬふり。いつまで私がお優しい人だと思えるのか、そして罪悪感で潰れるのはいつなのか静かに観察する所存。

そうだよ、私は怖い人間なんだよ。
初志貫徹する。こうと決めたらやる。だからあなたの決意が弱いのをこちらのせいにしないでください。
そんなことを考えながら、ジュースを飲んで植木鉢を眺める。
ホームセンターの空気は優しくて、とても癒される。自分もその他大勢。そう思える。

私はそれなりに苦労しましたよ、いつまで甘える気なんですか。そろそろ目を覚ましてくださいよ、そう思う。
ま、どうでもいいんですけどね。
私の目標はそこにはない。

夢見ているのは、ハッピーエンド。
それまで待つ、深い雪の下。越冬する。

春になったら、飛び立とう。
そんなことを考えている。

あの子が大人になるまで、今はまだ暫し、ここにいよう。見守っていよう。
優しい気持ちを精いっぱい思い出して、そんなことを考える。

馬鹿につける薬はないというけれど、優しさには優しさが返ってくるから。
そう思い、春を待つ。

冬ごもりの準備をする季節。

春の役割

誰よりも、大人になるということ。

春の役割

大人として、君を見守る。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-19

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