たか★たか☆パニック~ひと塾の経験~

たか★たか☆パニック~ひと塾の経験~

とにかく普通レベル以下の女の子主人公のお話。
天然パーマでショートヘア女の子が主人公のお話って少ないから新鮮だと思ってます。
そんな彼女にしばらく付き合ってあげてください。

情けなさすぎる主人公

情けなさすぎる主人公

「武藤さん。今日の部活はいいから、後で職員室に来てください」


 ――――先生に呼び出しされるの……今学期始まってこれで何度目、だろ。


 ここは、あたしの通う中学、原黒(はらぐろ)中学校。少女漫画に出てくる様な全寮制のお嬢様学校でもなくオリンピック出場を目指す様な部活動熱血学校でもない、ごくごく普通のどこにでもあるような学校。


 先日、三者面談があったばっかりのはずなのに。
 まだ注意し足りないところがあったのかな。
『お母さん。なみこさんの学校生活の事でちょっと気になるところがあるのですが……』
 気になる……かぁ。
 どう見ても気にしてるっていうよりも“気に障る”って言っている様な先生の表情。
 会話の合間にあたしの顔を見ては、先生もお母さんも溜め息をついて目を逸らす。
 三者面談のほんの僅かな15分間、つらつらと文句の言われっぱなし……まるで人格を完全否定され続けている様で、とても苦痛な時間だった。
 どうせ、今回もあの時の様にガチャガチャと“ああしろ、こうしろ”言われるのだろう。 
 多分、先生にとって扱い辛い、迷惑な生徒だから。
 部活出るより早く帰れたらいいなぁ。
 でも先生いつもに増して恐い顔してたから部活の方がマシだな。
 どっしりと重たい教室のドアを開け、廊下へと出る。今日何度目か分からない溜め息をつきながら。


 放課後。
 これからは部活動の時間。
 体操服に着替えたクラスメート達が、着替えずにセーラー服姿のままで職員室へと向かうあたしの姿を面白そうにチラチラと見ながら廊下の端へと逃げる。
 迷惑な生徒、とはいっても、別にケンカっぱやいってワケではない。……っていうか、ケンカができる相手も度胸すらもない。 
 校則は一応は守っている。 
 彼氏がいるからだとか、オシャレの流行に敏感で興味を持っているからだとかいう様なクラスの女の子達は上手く先生の顔色を伺いながらスカート丈を若干短くしている。正直膝丈の子の方が少ない、と言ってもいいくらい。ちなみにあたしは両方共当てはまらないのでキッチリ真面目(?)に膝丈だし。 
 学校の日は毎朝お母さんに布団を剥ぎ取られる起こされ方ですっきりと目覚め、登校時間に間に合う様に強引に家から追い出されるからよっぽど遅刻なんてものはしない。 
 そして面倒臭いと思いながらもサボるという度胸も無いし、仲のいいお友達もいない事で、授業も毎時間最後まできちんと受けている。ただ、教科書は学校にいる時にだけ“飾り”として机の上に置いているだけで、家ではめったに開いた事などない。先生が『テストにでるぞ』と言った要点箇所を蛍光ペンでラインを引いた跡など無く、新品同様でとても綺麗だけど。 
 そう。解かりやすく言えば学校には勉強をしにではなく、お昼の給食を食べに通っている、という感じ。
 所属している陸上部にもきちんと参加している。参加、とはいってもいつもストップウォッチ片手にゴール地点でボーッとつっ立っているだけでひとっ走りもせずに終わるだけだけど。


 学校。
 あたしの生活空間のなかで、ここ程に面倒くさくて苦痛なところは無い。
 ここでやらなきゃいけない事や経験していく事はいっぱいあるはずなのに、何もしたくない。何も感じたくない。
 学園ものの少女漫画を読むのは好きなくせに。


 職員室へ続く廊下がひんやりと肌寒く感じる。
 どうせ、先生に何をどれだけ言われたって、あたしはこのまま――――


「しつれい……します」


 人差し指で職員室のドアを開け、足よりも先に顔だけ出してみる。
 目の前には、まるであたしが来るのを待ち構えていた様に腕を組んでいる先生がドーンと立ちはだかっていた。


     ☆     ★     ☆


 案の定、先生の言いたい事は全教科、平均点の半分にも及ばないあたしの成績の事。そして人とコミュニケーションを取るのが苦手な性格の事だった。
「頑張ればできる」
 口ではそう言っているけれど、『どうして君はそんなに要領が悪いんだ』と、組んでいた両腕を腰に当ててあたしを上から見下ろしてくる先生。冷たく血走った瞳から心の声がビシビシと伝わってくる。
 目を合わすのが怖い。
 我慢ができなくなって逸らしたら、
「真面目に聞きなさい!!」と叱られた。
 もう早くおうちに帰りたい……。
『保護者の方にも話をしておいた』――――なんて言っていたけれど、一体何を吹き込んだのだろうか。
 まさか『塾に通わした方がいい』とか言って薦めたりなんかしていないだろうか。
 はっきり言って“ありがた迷惑”。不幸にも1年生の時から続いてあたしのクラスの担任の……しかも陸上部顧問というヒドイ巡り合わせなこの先生、森田金八先生は熱血どころか一方的に自分の理想を押しつけてくる人なんだ。
『頑張ればできる』――――
 できないよ……。どうやったら頑張れるの? 
 他人事だからって自分を基準にした様な言い方で簡単に言わないでよ……。
 そんな事言われたって、どうしようもないんだもん。こんなあたしの性格じゃ――――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 カラスが寂しく鳴く夕暮れ時の、とある平凡な住宅街。
 歩道のない道端でオーバーな身ぶり手ぶりで何やらペチャクチャと話に花を咲かせている、歳は40代後半のおばさん2人。
 そこに学校帰りだろうか。セーラー服を着た天然パーマのショートヘアの小柄な女の子が下を向きながら歩いて通り掛かる。
「あらっ、なみちゃん。こんにちは」
 先に彼女に気付いた、痩せている方のおばさんが声を掛けてきた。
「……こんにちは」
 顔を少し上げて恥ずかしそうに返す女の子。


 彼女の名は武藤なみこ。中学2年生。
 学力はガッカリするほど落ちこぼれ。恋愛経験、まるっきしなし。親友、ナシ。


 そんなグダングダンな彼女に、実はこれからスッゴいコトが次々と起こるのデス。
 一体何が起こるのかって?
 ソレは読んでからのお楽しみです。

- 『塾になんかに行きたくない!』塾1日目(主人公・武藤なみこちゃん) -

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 通り過ぎたあたしの後ろ姿を見ながら、再び甲高く、ヘタすると5軒くらい先の家までにも響き渡る程の大きな声で話し出す彼女達。
 どうせ近所の家に住む主婦同士の会話なんだし、スーパーの特売の話とか、お昼にテレビで見たワイドショーの話がネタだと思うんだけど――――


「いいわよねぇ、女の子は。可愛くって羨ましいわ」
「あらまあ、松浦さんったら何言ってんのよ。おたくの鷹史くんハンサムだし、頭もいいじゃない。ほーんとにもう、あの子ときたら勉強はしないし、かといって家の手伝いも全然しなくって――――」


 うわぁ……。聞こえちゃってるよ“お母さん”。


 まさかあたしの話をしているとは。しかも余計な事ベラベラ言っちゃって。
 5軒どころじゃない。体の大きさに比例した大きな声。さらにあのお母さんは無駄に交友関係が広いから……広いせいで、おそらく7、8軒先まであたしの“ぐうたらネタ話”が届いているのかも。
 よくお母さんに『学校へ通う時や帰る時ぐらい、もっと元気良く行きなさい』って言われるけど、こんなんじゃ胸を張ってなんて歩けないよ。
 足元のアスファルトに誰かが捨てたガムがへばり付いている。それはまるであたしに仕掛けた罠の様に。
 危うく踏んづけそうになった。
 下を向いて歩いてなかったら踏んづけて靴の裏がガムまみれになっていたかもしれない。
 ガムまみれになった靴って洗うの大変なんだよ。
 かといって今まで一度も靴なんて洗った事ないけどさ。
 せめて紙に包んで捨ててよ……。
 味が無い。美味しくもない。周りに迷惑掛けてばかりの堕ちたガム。
 何かに理由を付けていつもお母さんから逃げようとしているあたしもこれと似て、なんて情けないんだ。


『ほらみなさい。だからあんたは!!』
『武藤。こんな事本当は言いたくないのだが、先生は君のためを思ってだな……』
 こんなだからいつまでたってもあたしは――――


 歩くペースを競歩大会の選手の様なペースに上げ、逃げ出した。
 あたしがたまたまここを通り掛かっただけでそこまで盛り上がるだなんて。
 お母さん達の話がヒートアップすればする程あたしの元から低いテンションがさらにダークダウンする。
 もういやだ……。もう少し声のボリューム落としてよ。
 家の玄関の前に着いたというのに、まだ彼女達の会話が聞こえている。もしかしたら普段からこの調子で、家庭内事情を町内中にまき散らしているのかもしれない。


「はぁ。一応申し込んでみたはいいけど、“あそこ”に行けば少しは変われるかしら、あの子。
 あんな子だけど今日からよろしく、って鷹史くんに伝えといてくださいね、松浦さん」


『あそこに行けば……』
『今日からよろしく……』――――って?


 お母さん達、何話してたんだろう。
「ま、いっか」
 玄関のドアを閉めて、あたしはいつもの様に家に入って直行で台所に入った。コレは帰宅後のあたしのお決まり行動ルート。そこで食卓の上に置いてあるかごの中のポテトチップスの袋と冷蔵庫の中でひんやり冷えているペットボトルのオレンジジュースを手に取った。
 昨夜、宿題に飽きて、息抜きのつもりで“ちょっとだけ”読んだつもりが気が付いてみたら半分以上読んでしまっていたマンガ本。続きをせっかくだから……というより続きが気になるし、今日の宿題にとりかかる前に一気にスッキリ読んでしまおうと思い、そのまま2階に上がろうと玄関を横切った。
 ちょうどその時に玄関のドアを開けてお母さんが帰ってきて、開口一番あたしにとんでもない事を言ってきた。


「あら、なみこ。今日からお隣の松浦さんとこの鷹史くんが通ってる塾に、あんたも行く事になったから」


「え!」
 靴箱の上に脱ぎ捨ててあったエプロンを身に着けながら淡々とした顔で話すお母さん。信じられないその言葉の内容にビックリしたあたしはゴローンとジュースを落とした。
 しかも今日からっ、て……。
 だって、突然すぎるでしょ。
「ホラ! もうとっくに申し込んであるんだから行かなきゃダメよ。ボサッとしてないで早く用意しなさい。6:30に迎えのバスが来るわよ!」
 そんな事、たった今学校から帰ってきたばかりでいきなり玄関で言われたって――――!!
 本日の晩ご飯までのおくつろぎタイム(ぐうたらタイム)の計画が崩れ散ってゆく。……正確に言うと予定が無い、という事だから計画でも何でもないが。
 っていうか! 
 お母さんは自分の言いたい事だけ一方的に言うだけ言って、
「分かったわね!」
 強い口調に加え、力を込めた手の平であたしの背中をベシッ! っと叩き押して台所へ向かった。
 ちょっと待ってよ! 待っ……!
 あたしは自分の背中をさすりながら、もうガマンできなくなって、
「ひどい! お母さん! あたしに何も聞かないで勝手に決めちゃうなんて!!」
 ハアハア言いながら怒り散らかした。
 すると台所から肩をいからせながらUターンして戻ってきたお母さん。
 あたしの右手からポテトチップスの袋を取り上げ、もっとこわい顔……そう、まさにあたしの読んでいる漫画雑誌“シュシュ”で大人気連載中のギャグ漫画“ゆめみるこちゃん”に登場する主人公の女の子のお母さん、事あるごとに稲光を背負って怒るシーンがお約束の彼女の様な顔をして、
「そんなの聞いたって、どうせあんたの事だから“いやだ”って言うに決まってるでしょ!! 学校から帰ってきては、いっつも部屋でゴロゴロしてばっかりいて……。あんたの将来を心配してお母さんはねえ!!」
 お母さんもハアハア言って怒っている。
 気が付けばお母さんはドアを開けっぱなし。
 近所にすべてが丸聞こえな玄関での母と娘のこの情けないバトル。軍配はどちらにあがるのか――――
 両手をギュッと握り締め、歯ぎしりをしながらお母さんをを睨みつけた(つもりだった)あたしだけれど、言われた言葉が“釘”のようになって何本も体に突き刺さり、頭の上から白旗が飛び上がったこんな負け惜しみ丸出しの顔でなんかで対抗したって敵うわけがない。


「わかったよ。……いくよ、いきます」


 声の大きさ、体の大きさ……それ以前にこうなった原因は自分の要領の悪さ。お母さんの迫力に負け潰されたあたしは仕方なく松浦くんの通っている塾に行く事にした。……そうするしかなかった。
『行く』と答えた途端、お母さんはコロッと態度を変え、
「あら、そ。良かったワぁ。鷹史くん頭はいいし優しくていい子だから安心だわァ。仲良くね」
 と言い、台所へと消え去った。


 それにしても“優しくて、いい子”、って――――
 あたしはお母さんの言った言葉に全く納得いかず、ブツブツ一人ごとで文句を言いながら自分の部屋のある2階へと上がった。


『毎日通う、ってわけじゃないんだから、そんなに構えなくても大丈夫よう! 街の方だからちょっとばかし遠いけれど、いい評判の塾らしいわよ』


 塾、って聞いたら構えるに決まってるでしょ。だって! 塾っていう響きから“猛勉強”を連想するんだから。何を言ってるんだ、あのお母さんは。
 いくら週に2回だけだからって、せっかく学校帰ってきてからもまた勉強しに行かなくちゃイケナイだなんて。


「やってらんないよぉ、もおっ!」


 お母さんに反論できなかった悔しさを120%込めてベッドの上に向かって脱いだ制服を投げ捨てたあたし。今の気持ちとは対照的な爽やかな薄ピンク色のタンクトップとパンティー姿になって深呼吸。
 そういえば“裸になると開放的な気分になれる”ってテレビかなんかで聞いた事がある。
 コレは……うん。言われてみれば確かに気持ちがいい。
 このイライラした気持ちを少しだけでも落ち着かせようと、ついでに「うーん」と伸びをした。
 よし、こうなったらタンクトップとパンティーも全部脱いじゃってラジオ体操でもしてみようかな?
 と、パンティーに手を掛けて下ろそうとした瞬間――――


「ぎゃ!」
 最悪……。窓越しに松浦くんと目が合ってしまった。
 実は、隣の家に住んでいる松浦くんの部屋のベランダにある大きな窓とあたしの部屋のベランダにある大きな窓が向かい合わせになっていて、着替える時にきちんとカーテンをしないと、お互い丸見え状態……という厄介な家の造りになっている。


 ――――解放しすぎた!!


 あたしは慌てて隠そうとした。
 下着だけであらわになっているあたしの体。上か下か、どっちを隠したらいいのか分からなくって戸惑っていたら、向こうから“あっかんべー”をされ、シャッ、とカーテンを閉められた。


 よりにもよって、あんな嫌な人と一緒に嫌な塾に。


 結局イライラはさらに募る一方。
 あたしはさっきお母さんに言われた『仲良くネ』の言葉を思い出した。さらに『優しくていい子だから』の言葉まで思い出してしまった。


 どこが……。松浦くんは外ヅラがいいだけで、本当の性格はめっちゃいじわるなんだよ――――


    ☆     ★     ☆


 あーあ。いつもなら夕ご飯が出来上がる時間になるまでベッドの上でゴロゴロとくつろいでいられた身分だったのに。
「初日がカンジンよ!」
 あたしの部屋にノックもしないでズカズカと入ってきたお母さん。楽しく読んでいた途中の漫画を無言で強引に本棚の中に片付けられ、ベッドから引きずり下ろされた。
 引きずり下ろされながらもしぶとく抱き締めていた腕の中の枕。それに顔をうずめ、まだ心の準備が整っていない、ってダダをこねても、やっぱり通用しなかった。


「へりくつばっかり言ってんじゃないの!」


 バスが来る10分以上も前なのに。
 学校に居る時以外、家の中に引きこもりっぱなしの生活に慣れ親しんだ運動不足気味のわたしにとっては肌寒い、夕暮れ時のこんな寒空の下の玄関の外に追い出され、ドアを閉められた。
 しかもこの手さげカバンで。
 あたしが小学校に入学する時に、お母さんにミシンで縫って作ってもらったいちご柄の手さげカバン。
 キルティングの生地は頑丈だから長持ちしちゃってるんだよね。結構使ったのに。
 手作りってなかなか捨てられないから多少黒ずんでも大事にとってあるんだ。思い出と一緒に。
 いちご柄……。
 よりにもよってコレ持って行くんですか……。


「……へりくつだって。だっせ」


 あげくの果てに、家の前の道路でサッカーボールを蹴って遊んでいる近所の小学生の男の子に思いっ切りバカにされた。
 恥ずかしい。もうやだ……。
 余計に塾に行く気が失せた。どうする事も出来ないあたしは、歯ぎしりをしながら足元に転がっていた小石を力を込めて踏ん付けた。


 小石を1つどころじゃなく2つ、3つと踏んづけて八つ当たりしている間に6:30くらいになったのだろうか。排気音をたてながら白い塗装が所々錆びた古くさい感じのバス(……って言っていいのかワゴン?)が来た。
 別に早く外に出て待ってなくってもこの音で気付くじゃん。
 異様な視線を感じ、ふと振り向いてみる。玄関の隣、リビングの窓のレースカーテンの隙間から『気をつけて行ってらっしゃい』なんかではない、あたかも疑う様な顔であたしを見送ってるお母さん。


 はいはい……ちゃんと行きます。行く気満々まんですっ。


 バスが来たと同時に、相変わらず無愛想な顔で家から出てきた松浦くん。一応これから(しばらく?)お世話になる身なのだし、何か一言、挨拶みたいな事を言っておいた方がいいのかも。
 極力目を合わせたくない彼の顔を我慢して見る。お母さんは『優しい』って言うけど、どこをどう見ても恐い。
 戸惑いながらも社交辞令。『今日から、よろしくね』と言おうとしたら、後ろに回った彼に背中を押され、「さっさと乗れ」と急かされた。
 モタモタしてるとまた松浦くんに何か言われそう。
 パッと乗り込んでバスの中を軽く見渡してみる。
 どうやら10人くらい乗れる程の小さなバス。あたしと松浦くん以外の生徒はまだ乗っていない。多分これから塾に向かうまでに何人か乗せていくのかもしれない。 
 そういえばさっきお母さんが『塾までは遠い』だとか何とか言っていた。到着するまで一体何分くらいかかるのか分からないけれど、遠い塾までバスの中、松浦くんだけを相手に過ごすのはとても気まずい。とにかく1人だけ、男の子でも女の子でも誰でもいいから途中で生徒を乗せていって欲しい、と願いながら運転手さんに頭を下げた。
「お、おねがいします……」
 運転手さんはあたしの顔を見て優しい笑顔でニッコリと微笑んでくれた。


 しょうがない。頑張る、しかないもんね。


 とりあえず自分の精神を守りぬくため、今日第一にわたしに優しく接してくれた、この運転手さんの真後ろの席に座った。
 ひんやりとした、まるであたしの今の心境と同じような座席の硬いシートがお尻と一緒に背中を包み込む。
 それにしても松浦くんは、どうして頭いいはずなのに塾になんかに通ってるんだろう。
 あたしの後からバスに乗り込んできた松浦くんをチラッと見てみる。
「!」
 ビックリした。
 何故か彼は他にもいっぱい席が空いているのに、わざわざあたしの隣にドカッと座ってきたのだ。
「あ……」
 拒否反応を起こしたのか、思わず漏れてしまう声。
 それに対し、顎を上げて上から見下ろした顔で、
「あ?」
 胸をえぐるナイフの様に返してくる松浦くん。
 実はさっきモロに下着姿を見られているからめちゃくちゃ気まずかったりする。 
 まるで時代劇に登場する悪代官。隣のシートの背もたれにのけ反り返って長い足を組んでいる松浦くん。
 何も言葉を発してこないところが余計に気まずい。
 あ、あっちに座ればいいのに……。
 彼から逸らした視線をガラガラに空いている周りの席を指すように見渡している時、ハッと気付いた。
 分かった! いやがらせか――――!
 次第にムカついてきた。


 ムカついたところで、やっとバスが動き始める。
 バスのスピードが上がると共に、あたしの鼓動のスピードも上がっていく。
 何か話した方がいいのかなぁ。
 しかし、こんな人に何を話題にして話したらいいのか分からないし、タイミングも掴めない。
 すると隣に座っている松浦くんは、あたしの目も見ずに自分の前髪を指先で触りながらボソボソと話し出した。


「ああ、言っとくけどこの塾、原黒中(あたしと松浦くんの通ってる学校)俺とおまえしかいないから。ちなみに、このバスに乗る生徒も2人だけだ」


 そう言って、やっとあたしの方を見たかと思ったら、
「――――ってゆーか、おまえ友達いねぇから関係ねーよなァ、ハハ!」
 と、小バカにした目をして笑い出した。


「――っ!」
 本当の事だから言い返す事ができなくて、あたしはくちびるを噛んで我慢した。
 悔しいけれど、こんな事はよくある事。
 彼に会う度毎日の様に言われている事だけど、よりにもよって初日からこんな目に遭うとは。ただでさえ塾に通う事になっただけで憂鬱なのに――――


 古寂びれたバスなのか。
 走行中ガタガタと音を立てる小さな牢獄の中。世界一……いや、宇宙一大嫌いな監視員の隣で、あたしはムシャクシャしながら運転手のびみょうに……いや、気持ちいいくらいに見事に丸い形でハゲた後頭部を見ていた。

- 『いざ! 出陣!』塾1日目(主人公・武藤なみこちゃん) -

     ☆     ★     ☆


「はい、着きました。それでは松浦くん、武藤さんの事お願いしますね」
「……分かりました」


 そう返した松浦くんの顔には明らかに『めんどくせぇなぁ』と書いてあった。
 さて、30分もかけて、やっと到着した塾。
 あたしの家の近所は、この時間になると裏山の辺りから虫の合唱なんかが聞こえ始めてきたりする様な静かでのどかな町ってところ。
 だけど、ここは夜に向かって栄える、っていうか、大衆食堂とはいえない様なオシャレなレストラン。そしてパチンコ店には見えないゴシックな造りのパチンコ店。映画館やボウリング場を備えた大型ゲームセンターなどがあって、行き交う車や人が多い、流行最先端、って感じの“街”。
 水垢でくすんだバスの窓の向こうに見えるコンクリート打ちっ放しの質素な3階建てのビル。
 ここが塾?
 ん……確かにそうだ。“真剣ゼミナール”と縦書きに書かれた小さな緑色の看板が塾の入り口の横にひっそりと立て掛けてある。
 中は一体どうなっているのだろう。早く入ってみたい様な……いやいや! どっちかと言えば入りたくない、っていうのが本音だけど。


 “必勝”とか書いてあるハチマキだけは絶対したくない。


「あっ、ありがとうござい、ました」
 運転手さんに深く頭を下げてバスを降りたあたし。
 松浦くんは彼に軽く会釈をして降りてから、あたしをジロッと睨み、舌打ちをした。
 この人が塾になんかに通ってなかったら、こんな目に遭わなくて済んだかもしれなかったのに。
 ――――舌打ちしたいのはこっちの方ですっ。


「――――ふぅ」
 疲れた。 
 塾の中に入る前から松浦くんのせいで、かなりの精神的ダメージを負った。


 お母さんの言っていた通り、長い……とても長く感じた道のりだった。
 ただし、これだけは……“松浦くんが一緒だから安心”は大間違いだ。だって、想像を超える程に心地が悪かったから。


 はーあ。こんな遠くまで来ちゃったよ。
 いちごカバンを腕の中に隠すようにギュっと抱きしめる。
 いちごいちえ……新しい出会いを大切に、か。
 こんな栄えた街の人達から見たら、あたしなんてつまんない女の子だよ。


 なんか塾の入り口の脇にある自転車置き場が騒がしい。 
 どうやらここに通うあたしと松浦くん以外の生徒達の殆どは自転車で来ている様だ。自転車で通う人が多過ぎて、自転車置き場の中に収まらなかった自転車は駐車場のスペースを利用して停めている。バス1台……あとは先生達の車が3、4台しかないわりには異様に広い駐車場。そして狭過ぎる自転車置き場。
「へんなの……」
 塾の3階辺りをふっと見上げた時、気が付いた。
「え? パブ? ……ヤード? な、なんだコレ?」
 目を凝らして見てみると、壁に1部か2部か消えかけたピンク色で書かれた文字が残っている。それこそ塾にはとても似合わない、赤いハイヒールとキスマークのデザインが添えられて。
 どうやらこの塾は、塾になる前にオトナの通う怪しげなお店? だった様だ。これで駐車場がやけに広い意味がやっと分かった。でも――――
「やっぱり、へんなの……」
 余計にそう思った。


 バカにして笑っただけ。この塾に通う事が今日初めてのあたしの案内をしてくれる気配りの気の字も見えない松浦くん。案の定、彼はサッサと一人で歩いて塾の中に入って行ってしまった。
 あんな人と毎回バスで行き帰り合計1時間も一緒だなんて。
 あたしは、これまで腹の底に溜まり続けた彼へのいかりを絞り出す様にため息をついた。


 別にあんな人の案内なんて要らないもん。
 自動ドアをおそるおそる抜け、塾の中に入ったあたし。
 しかし入ったはいいものの、自分の教室がどこなのか分からない。
 自動ドアから続々と入ってくる塾の生徒達が、あたしを通り過ぎていく。みんな学校が違うから、という事もあって、なかなか思い切って声を掛ける事ができない。


 えっと、誰か女の子で……親切そうで、一人の人――――いませんですか?


 目だけをキョロキョロとさせながら通り過ぎていく人達の中から選んでいた。
 まるでクローゼットの中から自分に合った地味な服を一着ずつ手に取って探しているかの様に。


「ねぇ、君」


 うわっ! こっ、これは多分、男の子の声っ! 
 突然、後ろから声を掛けられビックリしたあたしは、反射的に振り返りもしないで逃げてしまった。
 お願い! 男の子だけは勘弁して欲し――――
 ……だなんて文句言ってる場合なんかじゃない。自分のクラスの教室の場所を聞けるせっかくのチャンスだったのに。結局あっさりと逃してしまった大バカ者。
 しかし運良く、ちょうど廊下を走って逃げた所に偶然にも職員室らしき部屋をを見付ける事ができた。
 つばを飲み込んで、その部屋のドアに付いている小窓にそっと顔を近付けてみる。中を覗いてみると、スーツやネクタイを身につけた先生っぽい感じの人が何人か見えた。
 やっと職員室に辿り着けたとはいえ、学校と同じで、いくら職員室だって入るのはもちろん緊張する。けれども、こんな所でずっと一人で立ち止まっていたって何も始まらない。うかうかしてる間に講習が始まる時間がきてしまう。あたしは思い切ってドアを開け中に入り、たまたま近くにいた多分先生だろう人に背後から尋ねてみた。


「あのっ! 今日からこの塾に入った2年生の武藤なみこっ、でっす!
 えっと、その、あたし……教室が分かりません、くて……」


 あたしのヘンな日本語に振り向いた、先生な感じのおじさん。
 グレーのズボンに腕まくりした白いシャツ。赤いネクタイを締め、ストレートで脂ぎったオカッパ黒髪を手でかき上げながら話す彼はきっと先生だ。間違いなく先生。昔の青春学園モノドラマでこういう人、なんか見た事ある。


「おおっ。君が武藤さんかね。真剣ゼミナールへようこそ。
 おほほ。初めてだから緊張しておられるのかもしれませんが、そんなに堅くならなくても大丈夫ですよ。肩の力を抜いてください。
 2年生? でしたね。2年生……はい。話は聞いております。今日からでしたね」
 異様に“2年生”を強調していた先生。身長138センチ・体重36キロしかないあたしの体型はどう見たって小学生だからかな。
 加えて教養のない話し方。
 しまった。そういえばノックもしないで入ってきちゃってたよ。
 外見どころか内面までも小学生。ヘタしたら低学年児童並み。
 口に手を当て笑いを堪えながら対応する先生。
 そして恥ずかしさを堪えるあたし。
 いけない。ちゃんと聞いておかないと。


     ☆     ★     ☆


「しつれいしました……」
 ホント出だしから終わりまで失礼極まりない態度だ。これじゃあ第一印象最悪だよ。
 ため息をつきながらドアを閉めたあたしは先生に教えてもらった通りに廊下を渡り、階段を昇る。
 あたしたち2年生クラスと1年生クラスの教室は2階になっていて、AクラスとBクラスの2クラスに分かれている。 
 あたしのクラスはBクラス。 
 自分のクラスを聞くついでに聞いてみたところ、松浦くんはAクラスらしい。
 彼と違うクラスになれた事は幸いといえば幸いなのだが、知らない人達ばっかりの中にいきなり飛び込むのには、かなりの勇気が要る。


 教室のドアを開けると、学校の教室よりも少し狭く感じるくらいの部屋の中に20人くらいの人達がいた。多分学校が同じ子同士なのだろう。何グループかに分かれた仲良しグループの塊が、机の周りや壁にもたれて楽しそうにおしゃべりをしている。中には静かに一人で本を読んでいる子もいるけれど、バッチリ“わたしに話し掛けないでくださいオーラ”を出している。
 手の平に指でなぞった“人”という字を何回も口に入れながらドアの前で立ち止まっていたら、さっきあたし達が乗ってきたバスを運転していた、まんまるハゲの先生が入ってきた。
 彼があたしの肩にそっと手を置き、
「始めるぞー」
 講習がいきなり始まり出した。
 あたしは慌ててぐるりと教室の中を見回して、たまたま目に入った空いていた席に着いた。


 講習が始まると、さっきまで賑やかだったはずの教室の中がまるで空気が変わったように静かになった。 
 居眠りなんかしたら絶対バレるなぁ。
 お腹空いた……。帰り何時だろ。
 あ。そういえば今夜テレビでバカ殿スペシャルやる日だったのに。
 なんて、みんな真剣な顔をして先生の話を聞いている中、あたしは一人でくだらない事ばっかり考えていた。


「はい、テキスト58ページ開いてくださーい」
 講習の大切な時間をムダな時間をとって費やさないためなのか、新入生の紹介はなく授業が進まれていく。
 面倒臭い事をしなくて良かったはずなのに、あたしは少しドキドキしていた。
 何故かというと――――


 隣の席の子、どんな人かな?


 適当に空いていた所に座ったはいいけれど、気になってしまう。
 実は塾第1日目早々いきなりやってしまったのだ。
 人と関わるのが……特に男の子が苦手だというあたしのくせに、よりにもよって男の子の隣の席に座っちゃってしまうという大失態を。
 せめて女の子の隣だったのなら仲良くなれる確率が少しは高かったかもしれなかったのに。
 学校でだけじゃなくて、塾でも“一人ぼっち”決定かぁ。
 くちびるを尖らせながらシャープペンの先で消しゴムに穴を開ける。


 どうせ女の子だったって、こんなあたしと友達になりたいって思ってくれる人いるわけないや。


 結局こうなる運命に導かれるワケなんだ。ホント情けない。バカ……何やってんだろ、あたし。
 壁に掛かっている時計を見ると見せかけ、さり気なく隣に座っている男の子をチラリと見てみた。
 すると偶然なのか、彼の方も左手でペンを回しながらあたしの方を見ていた。
 うわ。目が合っちゃった。話題が何にもないのに。
 ぐ、偶然、だよね?
 初対面でいきなり目が合ったのに視線を逸らさずにわたしの顔をずっと見つめている彼。
 回していたペンを顎に付け、微かに笑みを浮かべながら、こんなあたしなんかの顔を……まだ見ている。
 それが羨ましいほどのサラサラヘア。鼻の周りに“そばかす”を付けた優しそうな、かっこいい……というよりも可愛らしい顔をした男の子。
 服装は淡いグレー色の大人っぽいシャツの胸ポケットにМADE IN 外国? っぽいバッジを付けてオシャレにキメている。
 彼の顔を見た瞬間、まるで金縛りに掛かってしまった様にコチーンって固まってしまったあたし。
 今まで、これっぽっちも男の子と関わった事の無い……というか関われないあたしだけど、一応は学校で様々な男の子を見てはいる。
 けれど男の子を見た途端、いきなりこんな気持ちになったのは初めてだった。


 あっ、あたしは勉強をしにきた!


 反応がおもしろいから、からかっているのですか?
 もしかしてわたしと仲良くなりたくて……ですか?
 調子に乗るな。
 飲んだら負けだ。
 自然(?)にあたしの方から目を逸らし、気を取り戻して自分にこう言い聞かせる。
 机の上に置いてあったテキストを慌てて開く。
 ん? 今やってるとこって何ページだったっけ?
 あたふたしながらとにかく動く。
 なんだろう。この気持ち――――誰かおしえてください。
 足のつま先から、なんか熱いものがカーッと昇ってくるんです。


「……61ページ」
 小さな声で呟いた隣の席の男の子。横からスッと伸びてきて、あたしのテキストをめくる細く長い彼の指。
 もう彼の指を見ただけでドキドキしてしまう。
 そんな事あるわけないのに、一瞬、手を握ってこられるのかと思った。
 乱れた気持ちをコントロールしなくっちゃ、と意識をすればするほど余計におかしくなる。


 あたしは、勉強しにきた!! ここは塾なんだから!
 何回も……何回も自分に言い聞かせた。


     ☆     ★     ☆


 それからおそらく15分くらいは経っているはず。なのに、目が合った時からずっと変わらずに隣の席からあたしの体の色んなトコロを撫でてくる様な視線を感じる。
 黒板の横で少ない髪の毛を何度もかき上げながら懸命に数学の公式やら何やらを説明している先生。先生の話を集中して聞きたいのに、隣に座っている彼からあたしに向かって一直線にふり注ぐ強力な紫外線の様な視線のせいで、全く聞き取る事ができない。


 ――――もう集中できない! 気になってしょうがないっ。
 右手に持ったシャープペンを開いたテキストの間に置き、呼吸を整える。
 そして勇気を出して、もう一度隣の席を見た。


「 !! 」
 こんなの集中できないはずだって!
 隣の席の“そばかすくん”は、さっきよりも更にこっちに身を乗り出し、頬杖をつきながらあたしの顔を見つめている。
 頭の中でせっせと積み上げ続けてきた公式やら何やらが、大きな音を立ててバラバラに崩れ散る。
 もう、どうしたらいいのか分からない。
「エへへ……」
 顔まで崩し、戸惑いながら笑うあたし。
 だって、あんな風に見つめられたらもう……笑って逃げるしかないでしょ?
 ちゃんと隠せてるかな? この胸のドキドキ。
 すると目を細めて優しく微笑んだ彼から、不意打ちでウインクをもらった。


     ☆     ★     ☆


 ――――はっきりいって勉強どころじゃなかった。


 結局、始まりから終わりまで、ただでさえ男の子に対して免疫というモノをこれっぽっちも持ち合わせていないあたしが、初めて会った隣の席の男の子にずっと見つめられっぱなし……という息の詰まるような講習があと1分でやっと終わる。


 キーンコーン。
「はい、今日はここまで!」
 終了のベルと共に、静かだった教室が徐々にざわめきだす。
 ああ、(色んな意味で)終わった。今日から塾生活が始まったばっかりなのに。
 大嫌いな人と大嫌いな勉強をしに塾へ通う……それ以上に大きな試練。学校の違う人達に囲まれ、男の子に見つめられ続けるという、とんでもないカルチャーショックを味わった。
 とにかくこの場から早く消え去ってしまおう。
 机の上に置いてある文房具とテキストを手提げカバンの中にかき込み入れて立ち上がった途端――――


「あっ! ねえ!」
 さあ、また出ましたそばかすくん。彼はあたしがうっかりカバンにしまい忘れた、小学校の時からずっとあたしの筆箱の中に住んでいる消しゴムを手に取り、呼び止めた。
 うわあ……。よりにもよって、さっきプスプス穴開け、無惨な姿となった消しゴム。
 あたしの顔は今、絶対に赤くなっているに違いない。
 こんな顔、彼に見られたくない。
 勘弁してよ……。今日はもうこの人とはこれ以上関わりたくないのに。 
 消しゴムなんて別に要らないって……と思いながらも、
「どうも……」
 彼の手に触れない様、それを親指と人さし指の先でつまんで受け取る。目を合わさない様に気を付けながら。
 その瞬間、あたしの手首がギュッと握られた。そのせいで消しゴムは床に落ち、どこかにコロコロと転がっていってしまった。
『なッ! 何するのッ!』
 思っただけで言葉にできず、彼の手を振り払ったあたし。
 そんな強く突き放した態度にも全く動じず、余裕に「ふっ」と小さく笑ったそばかすくん。
 彼はあたしの全身をゆっくり見て言った。


「可愛いね」

たか★たか☆パニック~ひと塾の経験~

たか★たか☆パニック~ひと塾の経験~

冴えない女子中学生が体験するラブ・パラダイス。舞台はなんとお母さんに無理やり通わせられる事となってしまった“塾”である。 『あの子が欲しい!』彼女を巡り、2人の男“たか”が火花を散らす!

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-10-19

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