くれない花の咲く帰路で
サルビアの赤は好奇心の赤だ、
朝は首すじに、夕暮はふくらはぎに、
触れるあたたかさを確かめるためだった、覚えておくためだった、
僕らは寒いと言い合う口先を、
まるで手をつなぐ代わりだというように、こっそり結び合うのだ。
かなたに立ち尽くす常緑樹の切っ先が秋を縫い止めている。
曇り空を剥がした隙間に宝石のような
(宝石のような?)
黄緑色がのぞいている。
気付きたかった、知りたかったものを固めて出来た栃の実を、今なら拾えるだろうか。尋ねるすべは僕にはもうない、だから見計らって花びらを摘んだのだ。
舌の上から胸の奥の奥の奥まで、
甘さが滲みわたるのを感じるのだ、
僕らの全身から、はらはらと零れる記憶と記録が、落ち葉になってゆくのを見つめるのだ。
サルビアの赤は好奇心の赤だ。
蜜を吸った下校路の、さやけき風を連れた色だ。
くれない花の咲く帰路で