désir〜デジル〜

小夜子

佐々木陽介 43歳 会社経営

夜中の2時を回っていた。さっきまで降っていた雨はすっかり止みアスファルトがしっとりと湿っている。街路樹は濡れた葉で自己主張するように街の灯りを照らし返す。風はゆっくりと陽介の頬を撫でいく。秋の香りを含んでいた。駅前の喧騒を過ぎたところで足が止まった。駅前でタクシーを降りたのは少し歩きたかったから、少し飲み過ぎたから、と自分に言い聞かせた。家に帰れば妻と息子がいる。二人共眠っているだろう。いや、由美子は起きているかもしれない、そう思うと身震いがした。今朝のやり取りが頭の中に渦巻く。
「あなはただの傲慢な詐欺師だ。」
軽蔑したような歪んだ笑みを浮かべた由美子の口からその言葉は発せられた。陽介にとっては何の意味も成さない音でしかなかった。アナタハタダノゴウマンナサギシダ。
「離婚したいの。」リコンシタイノ。
「好きにしろ。」
本心だった。いてもいなくても、どちらでも良かった。自分はほとんど家にいない。毎晩のように接待で酒を飲み、囲うほどではないが一応いる愛人宅かビジネスホテルへ泊まる。由美子だって浮気をしているかもしれない。1人息子は可愛いが、引き取り一人で育てるつもりは毛頭ない。多少の慰謝料と養育費で片付くなら願ったり叶ったりだとも思った。結局自分は仕事が全てなのだ、と。仕事こそが全てで、その他の事は本当にどうでもよかった。離婚が成立したら、こんな無駄な戸建ではなく管理の行き届いた高層マンションでも買って家政婦を雇おう。もしかするとそれが自分には理想の生活かもしれないなと考えていると由美子が歪んだ笑みを浮かべたまま話しを続けた。。
「あなたは結婚してから一度も家庭を大切にしたことなんてなかった。毎日本当に寂しかったけど優志のことを想ってずっと我慢してきたわ。だけどもう限界。いくら子供だからって私達が普通の夫婦、お友達の家みたいな普通の両親じゃないんだってことくらい気付きだす年頃だと思ったら決心がついたの。」
そう言う由美子に、これで会話は終わりだというつもりで聞いた。
「で、離婚か。慰謝料と養育費はいくら欲しいんだ。」
もともと俺が由美子を飾りとして悪くない女程度で結婚したのと同じように、由美子だって俺の経済力だけで結婚したようなものだ。なんの未練もない。
「あなた名義の財産を私に50%、残り半分の50%を優志に下さい。全部で75%。もちろん会社の権利もね。月の養育費は別途請求させてもらうわ。」
陽介は耳を疑った。浮気の証拠もつかんでいる、弁護士と相談中だとも言っていた。

「ふざけるなっ!」
思い出すだけで怒りがこみ上げて来た。決して少なくない社員を抱える会社にここまで成長させた自分から、妻は簡単に奪おうとしている。深夜の住宅街で怒りに身体を震わす自分がとても惨めに思えてきた。裁判になったらどの程度勝ち目はあるのだろうか。由美子の請求は妥当なものなのだろうか。弁護士と話していると言っていたから、それなりに知恵をつけられているに違いない。俺の稼いだ金で雇った弁護士が、俺から全てを奪おうとしている女に助言をしている。
「笑えない皮肉だな。」
「楽しいことでもあったんですか?」
急に話しかけられギョっとして声のする方を振り返ると、見知らぬ男が立っていた。
「おやおや失礼しました。その顔は、どうやら楽しいことではなくて厄介事みたいですね。」
スーツ姿のその男は、年齢も背格好もまるで自分のようだと妙な親近感を感じながらも、こんな夜中に笑顔で話しかけてくる男に陽介は身構え無言で立ち去ろうとした。
「家庭の事情で悩んでいる、そう顔に書いてありますよ。」思わず立ち止まる陽介の背中に再び男は声をかける。「そんな顔して帰ったら、また今夜も喧嘩ですよ。きっと。」
由美子がまだ起きていたら…。その不安もあり思わず男の方へ振り返った。
「まぁ立ち話もなんですから、そこの公園まで行きませんか。」
男は笑顔でそういうと、陽介を追い越しゆっくりと前を歩いていった。どうするか迷ったが結局男の後をついていくことにした。(急いで帰らなければならない理由はないからな…。)正直なところ好奇心があった。何の目的で自分にこの男が声をかけて来たのか知りたいと思った。

公園に着くと男は自動販売機で缶コーヒーを二つ買い、一つを陽介に渡しベンチへ腰をかけた。
「さあ、話を聞きましょうか。」そう言ってゴクリとコーヒーを飲む男に陽介は聞いた。
「なぜ俺が悩んでいると?」
ふぅと息を吐き男は陽介に座るようにベンチをポンと叩いた。
「火を見るより明らかでしたよ。あんな顔をしていたら。」
そう言う男の笑顔は陽介に何もかも話してしまいたくなる気にさせた。


「…なるほど。」
腕を組み目を閉じる男。結局陽介は昨日のいきさつだけではなく、由美子と自分の結婚生活についてまで話してしまっていた。この男なら分かってくれるような気がしていたが、目の前で考え込む姿を見ているとなんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。口に出したことですっきりしたのか多少気持ちも楽になったような気がする。
「あんたが誰だか知らないけれど、こんな夜中に面白くもない話を聞かせてしまって申し訳なかった。お詫びに酒でもご馳走したいがあいにく今月は予定がいっぱいなんでね。来月以降ならなんとか時間は作れそうだ。気が向いたらここへ連絡をしてくれたらいい。ぜひお詫びをさせてくれ。」
目を閉じたままの男の横に名刺を置き「じゃあ。」と言って立ち去ろうとする陽介の背中に男は声をかけた。
「悩み事、解決できたらいいですね。」
後手に手を振って応える陽介に男は声をかけた。
「すぐに解決できますよ、あなた次第では…、といったらどうしますか。」
どうしますかと聞かれ陽介は足を止め男の方にに振り返ると、最初に声をかけられた時と同じ笑顔で男がこっちを見ていた。
「俺次第…。どういう意味だ。」
男は笑っている。
「どうゆう意味だよ、俺次第っていうのは。」
男は笑っている。
「あいつの言う通りに金も会社もくれてやれば、そりゃすぐに解決するだろうよ。」と、自分で言いハッと気付いた。
「お前…?!あいつに雇われた弁護士だな!俺がどう出るか探りに来たのか?」
男は笑っている。
「汚い女に雇われた弁護士もやっぱり汚い手を使うんだな!」
男は笑っている。
「いいか、俺は徹底的に戦ってやるぞ。決着がつくまで家には帰らない、次会うのは法廷だとそうあいつに伝えておけ。」
男は笑っていない。
「くそっ!」
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさす。会社の近くのホテルへ泊まろうと足早に公園を横切る。
「勘違いしないでください!」
男の声が公園に響く。
「あなた次第では願いを叶えることも可能だと言っているんです。」
かまわず立ち去る陽介に男は声をかけ続ける。
「あなたにその覚悟があるのならどんな願いでも叶えましょう。」
「どんな願いもだと?!」
陽介の苛立ちは絶頂だった。
「どんな願いも叶えるんだな?!」
掴みかかる勢いで目の前まで戻ってきた洋介を男は両手で制し、ニヤリと不気味な笑顔を浮かべた。
「結果にご自身で責任が持てるのなら…、どんな願望も叶えましょう。」そうささやいた。
男の笑顔にゾクリと悪寒を感じた。力が抜け喉がカラカラに乾き、さっきまでの威勢の良さは一瞬にして陽介から消えていた。今すぐ走って逃げたい衝動に駆られながらも振り絞り、やっと出した聞こえるか聞こえないかの小さな声で男に伝えた。
「俺は…、俺は…、あいつがいなくなればいい…。」
首の後を虫が這う感覚を感じながら悲鳴に近い叫び声をあげた。
「由美子を消してくれ!」

どうやって公園からホテルへ移動したのか覚えていない。タクシーに飛び乗った気もする。ベッドへ入っても一睡も出来ずに朝を迎え、昨夜のことが現実だったのかすらも曖昧に感じる。とりあえず熱いシャワーでも浴びて目を覚まさなければと陽介はバスルームへ向かった。
「昨日の男は何者だったんだ…。」
頭から熱い湯を浴び考えを巡らせるが答えは出てこない。たちの悪いイタズラだったのか。いや、あの男の不気味な笑みに捉えられたときの悪寒。
「恐怖…。」
そう口に出してからその考えを打ち消すように頭を何度も振った。
「そんなバカなことがあるか!」
あの男はどんな願いも叶えると言っていた。陽介は由美子に消えて欲しいと願ったが、もし本当に消えてしまったとしたら俺はどうなる。願っただけで実際に消えてしまったとしたら、それは俺の責任なのだろうか。いや、だいたい本当に消えるわけがない。馬鹿なことを考えるのはよそうともう一度頭を強く振ってシャワーを止めた。
仕事はいつも通りの忙しさで、余計なことを考えずに一日が過ぎて行った。夜に予定していたクライアントの接待が、別の日にして欲しいと先方から連絡があったのは夕方の17時をまわった頃だった。そのためにスケジュールを調整していたので予想外に予定がぽっかり空いてしまい陽介は急に、家へ帰ることに戸惑いを感じた。(大丈夫、どこからも連絡はなかった。もし本当にいなくなったのなら連絡がはいるはずだ。)そう言い聞かせながらも頭から昨日のことが離れない。
「由美子を消してくれ!」
何故あんなことを見ず知らずの男に訴えたのか今となっては後悔しかない。あの公園へ行けば男はいるだろうか。でも会ってどうする。本当に消したのか?なんて間抜けな質問をするのか。だいたいもう一度あの男に会うことに気が進まない。正体の分からない恐怖と向き合うことを避け、陽介は空いた夜の時間をどうすごすか考えを巡らせていった。

結局、部下を数人連れ食事にいき、わかれてから一人でクラブへきた。接待でもたまに使う店で今日はクライアントを連れてくる予定だったので、お詫びのつもりと自分に言い訳をした。
「佐々木さん、わざわざすみません。」和服のママが席へつく。
「いや、ちょうど飲みたい気分だったしね。あ、今日はロックで頼むよ。」
はい。と見慣れない女の子が水割りグラスを下げロックグラスを持ってくるようボーイに耳打ちする。
「この子先週から入った瑞穂ちゃんです。ホステスは初めてみたいだけど、なかなか色っぽいでしょ。瑞穂ちゃん、こちら佐々木さん。会社の社長さんで接待なんかでよく利用して頂いてるのよ。お名刺渡してご挨拶しなさい。」
そう言われ陽介は瑞穂を見ると彼女もこっちを見ていて、目が合うと恥ずかしそうに下を向き上目遣いで名刺を渡してきた。「瑞穂です。」なかなか色気のある子だ。
「こんなに可愛い子じゃ、あっと言う間にナンバーワンだね。」
「あら、佐々木さんもうお気に入りですか。マリちゃんに恨まれちゃうわよ。」
「ああ、マリは何度か同伴したけど、お気に入りって訳でもないからね。」
マリと聞いて瑞穂の目が光ったような気がした。
「じゃぁ私にもチャンスありますか。佐々木さん素敵だからライバル多そうだけど頑張ります!」
「あら瑞穂ちゃん、佐々木さんはハードル高いわよ。」
「バカいうんじゃないよ、ママ。」はははと笑う。たわいもない話で時間は過ぎ、酒も回る。昨日のことも夢だった気がした。酔いにまかせ、むしろ今日は家に帰り本当に由美子が消えたのか確かめてやろうと決めた。

タクシーに乗り、家に近づいてくると周りがさわがしくなってきた。
「なんかあったんですかね?」運転手が話しかけてくるので、目を閉じていた陽介は窓の外を確かめた。いつもこの時間は人も歩いてない静けさに包まれいるはずの住宅街が、今夜は所々に寝間着のまま玄関先にでている住民が何人かいる。電気がついた家も多い。タクシーが家に近づくと、家の前にパトカーが止まっていて陽介の心臓はドキリと震えた。
「ここで降りるよ。」冷静さをなんとか保ち運転手に料金を払うと、走り出したい衝動を抑えながら自宅へ向かった。
まさか、とは思っていたが陽介の自宅前には数人の警察官となにやら話し込む由美子の母親の姿があった。陽介を見つけた息子の優志が泣きながら走り寄ってきた。
「何があったんだ?ママはどうした?」動揺を隠しきれず息子に詰め寄る。
「僕、塾が終わっておうちに帰ってきたけど、ママはずっと帰ってこないからお婆ちゃんに電話したんだよ。」
「帰って来ないって、朝はどうしたんだ?朝からいなかったのか?」
「わかんない、いつも朝はママ寝てるから…。」
と、そこまで話すとまた優志は泣き出した。
「ご主人ですね。佐々木陽介さん。」
声の方を向くと警官が陽介をジロジロと観察でもするように近づいてきた。
「こんな時間に何の騒ぎなんですか?妻がどうかしたんですか?」
警官の視線に不快感をあらわにして陽介は尋ねた。
「どうかしたって陽介さん、由美子が行方不明なんですよ。それなのに何を呑気に…!」
由美子の母親とは殆ど面識がない。今自分に話しかけてきた老女が義母なのか実のところ確信がなかった。
「まぁ、お母さん。事情は我々で伺いますので、お母さんはお孫さんをお願いします。」
たしなめる警官とは別の警官が陽介の脇へ寄ってきた。
「佐々木さん。我々も何も詳しい事情を把握していないのですがね。」
そういって陽介の腕を掴む。反射的に振り払おうとすると、大人しく応じたほうがいい。何もないのなら直ぐに済むことなんだから、というような事を言ってきた。腕を離すつもりはないようだ。
「応じるってなんですか。俺は昨日は家に帰ってないし、今日だって今帰ったばかりで何もしらないんだ。」
グっと陽介を睨みつけた警官は
「あんた、昨日は家に帰ってないんだね。」といって更に腕を掴む手に力をいれてきた。
「ああ、そうだよ。今朝は早くから打ち合わせがあって、会社のそばのホテルへ泊まったんだ。調べてもらったっていい、確かだよ。」
「帰っていないのは確かなようですが、昨夜この近くの公園であなたを見たという人がいましてね。」
「昨夜」「公園」という言葉に反応するように汗が滲む。
「おや?公園にいたのを見られては不都合でしたか?随分と親しげに男と何か密談でもしていたようですしね。」
「誤解だ!あの男とは昨日初めて会ったんだ。会ったというよりも、ほんの少し雑談をした程度でしかないんだ。名前も知らない、本当だ!」
「詳しい話は署で聴きましょう。あなたが男に奥さんを消してくれ、というようなことを依頼されていたという証言もありますから。」
そう言うと警官は陽介をパトカーへ乗せようと腕を引いた。」
「ちょっと待ってくれ、本当に違うんだ、誤解なんだよ。あの男が俺の願望を叶えるとか訳のわからないことを持ちかけてきたんだ!」
「あなたの願望ね…。それ以上話すとご自分に不利になりますよ。息子さんは一旦、奥さんのお母さんが引き取ってくださるという話になってますんで、安心して。会社も心配でしょうがまずは署で色々と伺ってみないことにはね…。」

字のごとく由美子は「消えて」しまったようだ。
ベッドはさっきまでそこに寝ていたような様子で財布や携帯電話などは全て家の中にあり、昨夜着ていたと息子の証言による寝間着は見当たらない。室内には争ったような後は何もなかったそうだ。
妻から俺たちの離婚について依頼を受けていた弁護士の話も警察はかなり重要視しているようだ。慰謝料として俺に請求していた内容などはとくに興味をもっただろう。しかし、何を聞かれても同じ話を繰り返すしかない。あの日の夜、男に話しかけられ、話しているうちに妻がいなくなれば面倒な事にならないんじゃないかと、ただそんな気がしてしまっただけだと。

息子は妻の実家へ引き取られた。俺の会社は部下がなんとか回してくれているようだが、このままではそう長くは続かないだろう。公園で俺たちを目撃したという話によれば、俺は妻を殺人依頼とも受け取れるような発言をしたあと狂ったように駅の方へ走り去り、男はゆっくりと俺の自宅の方へ消えて行ったそうだ。目撃者も俺も不思議と男の人相は思い出せない。ただし、俺はあの歪んだ口元の笑みだけは一生忘れることはなさそうだが…。

河口桃香 4歳 幼稚園児

パパもママもあかちゃんがうまれてからずっと桃香のことわすれちゃってるみたい。いままでは桃香のおはなしをちゃんときいてくれてたし、よるだって桃香がさみしくてベッドでないてたらパパはこっちへおいでって、パパとママのおへやにダッコしてつれてってくれて、パパとママのあいだにいねかしてくれたのに。
きのうもさみしくなっちゃってないちゃったら、もうおねえちゃんなんだからなかないで!ってママがこわいかおして桃香のおへやでおっきいこえだしてドアしめちゃったの。
ママがびょうきになって、びょういんにおとまりしてて、もどってきたらあかちゃんといっしょだったの。桃香とパパとママのなかまになるんだって。あかちゃんは、いもうとっていって、遥香っていうんだって。おなまえがたくさんあるんだね。

きのうパパは桃香のことたたいたんだよ。桃香のほっぺをパチっ!って。いっぱいいたかったし、なんだかおなかのなかもグーっていたくなったの。あかちゃんがないてたから、だめだよっていったのに、ぜんぜんなくのやめないから、桃香のだいすきなオレンジジュースをわけてあげたの。でもやっぱりあかちゃんだし、ねたままだとじょうずにのめなくて、おくちからあふれちゃって、おふとんにもいっぱいオレンジジュースをこぼしちゃったんだよ。わるいことしたら、ママにおこってもらわなきゃいけないのに、おへやにもどってきたママはキャーっておっきいこえだして、おかちゃんをだっこしてつれてっちゃったの。そのあとこわいおかおしたパパがおへやにはいってきて、桃香のことパチしたんだよ。こぼしたのはあかちゃんなのに。じょうずにのめなくてこぼしたのは、あかちゃんなのに。

「あなた、私桃香が怖いわ…。」
「何言ってるんだ。自分の子を怖がる親がいるか。」
「だって、昨日のジュースのこと。本当にぞっとしたわ。」
「飲ませようと思っただけだろ。俺もちゃんと叱ったし、もう同じことはしないよ。」
「昨日だけじゃなくて、よく考えたら色々あるのよ。」
「何だよ、色々って。」
「たとえば…、人形に向かってなにかブツブツ言ってたのよ。近づいてみたら、あかちゃんどっかいけ、あかちゃんどっかいけって。」
「俺らが遥香にばっか構ってるから嫉妬だろ。お前も遥香に手がかかるのはわかるけど、二人とも俺たちの子なんだ。同じようにせっしてやれよ。」
「わかってるわよ。けど…」
「けどどうした?」
「とにかく桃香が遥香をもる目が怖いのよ。」
「気のせいだって。俺たちの接し方が良くなかったんだよ。反省しよう。桃香もかわいそうだよ。」
「そうね…。」

désir〜デジル〜

désir〜デジル〜

どんな願いも、叶える事ができるとしたら…。あなたはその代償になにを差し出しますか。 願望désir、と引き換えに失うあなたの大切なもの。願うものも失うものも人それぞれ。他人のそれをほんの少し覗いてみませんか、あなたの願いを叶える前に…。

  • 小説
  • 短編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-04

Copyrighted
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  1. 佐々木陽介 43歳 会社経営
  2. 河口桃香 4歳 幼稚園児