ぼくの夏休み

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夏の夕暮れ時が好きだ。
午後6時、未だ布団に縮まる哀れな学生に、カーテン越しの茜色が降り注ぐ。暑さと眩しさに目を覚まし、眠い目を擦りながら時計を見て、ひとまず溜息。眠気覚ましのコーヒーを飲み、当てもなく外へ出る。どうやら世間は1日を終えつつあるようで、下校中の高校生や疲れた顔のサラリーマンが町を歩く。そんな時、どうしても感じてしまうのだ。
気怠さの混ざった優越感を。
あの不思議な昂揚感はいったい何物なのだろうか。
世間が活動を終えそれぞれの場所に帰る中、自分だけが今日という日をスタートさせる。むろん褒められたものではない事なのに、半ば自虐的な気分の高ぶりを抑えずにはいられない。まるでこれから流れる時間が自分ひとりのためにあるかのような、そんな感覚。こういう日は必ず、サンダルに文庫本携えて近所の神社へ行く。山のふもとにある、名前も分からないような小さな神社だ。境内の石段に腰掛け、風に揺れる森の音とヒグラシの鳴き声に耳を傾け、沈みゆく夕暮れを眺める。すると、次第に周囲の音は遠のいて、意識は茜色の真ん丸に吸い込まれていく。その浮遊感がたまらなく心地いい。世間から隔たれた、自分だけの意識が流れる空間。ほのかな温もりに包まれた、短くも優しい時間。ささやかではあるが、こういう時間や意識の流れが存在することを、何だか忘れてはならない気がする。得体の知れない不安に悩み続ける、僕たちのような人間にはとても大切なものである気がするのだ。
何とも支離滅裂な文章になってしまったが、以上、僕の夏休みの活動記録である。

ぼくの夏休み

ぼくの夏休み

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-12

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