老人ホームの一角
短編
やーひでえ顔持ちだねー
老人ホームの一角
「やーひでえ顔持ちだねー、何処か死神にでも取り憑いているみてえだ」
「ところでおめえさん、売らないかきねには垣根の魅力さえねー、また、喧嘩かしらしなすったのかい?」
「なあに、顔中あざだらけさ、横っ面厳しく海に飛び込んちまうくらいに面と向かってきやしねー」
2人はお互いを見つめ合いながら5分くらいが過ぎた。
「顔持ちってのーわよー、内面の映し出す鏡だ、忘れちゃーいけねー恩義みてーなもんよ」
「それじゃーあれかい?死神に取り憑かれた顔も横っ面な顔も表に出した内面写してるってことかい?」
「人は嘘はつけねー、ついたからには一生かかえて墓にでももっていかなきゃなんねー」
「そう、それが世の常ってやつよ。」
写し出される嘘を2人は5分間見つめあったままで、どちらか口に出すことを伺っていた。
「分かるもんしか分かんねー、分からないと決を踏んだならそのまま垂れごとで誤魔化すしかねーのさ」
「えらい、分かったふうに言うじゃないか?」
玄関から女将さんが顔を覗かせた。
「嘘を一生つけた人が本当にいると思っているのかい?」「一つ嘘をつくたび内面が腐って、横っ面や死神に取り憑かれた顔になっちまうんだよ」
だから、「だから、全て顔でお見通しなのさ」
2人のご老体は「ははー」と同時に頭を下げた。
老人ホームの一角
超高齢化社会