鏡の中の自分

進藤 海(K.Shindo)

鏡の中の自分

 誰かが僕を見ている。

 ある男は言った。

「抜け殻みたいになっちまったな」と。

 ある女は嘆いた。

「全く魅力のないブルドッグのよう」と。

 僕は言い返す。

「ブルドッグをバカにするな! お前にやつの何が分かるんだ!」

「救えない人ね」

 彼女はため息まじりにそう言って、その場から立ち去った。


 街を歩いていても、太陽の光に目を瞑る。
 なんて暑い日だ……。そう思いながら道を歩む。

 そんな時、ある通りすがりの少女が

「あなたはなんで諦めたの?」

 と尋ねてきた。
 数秒目を合わせたが、やっぱり意味が分からず、

「早くおうちに帰りな」

 とだけ言った。

 そうしたら、今度は近くにいた老夫婦が口を揃えて、

「失望した」

 コンビニの店員も出てきて、

「見損なったよ」

 と続いた。

 辺りを見回すと、どんどん人が寄ってきて、暴言を吐いた。
 人の波に押しつぶされそうになったが、

「いい加減にしろ! ただ道を歩いているだけだろ!」

 そう叫んで、僕は走って街を抜け出した。


 なんとか家に帰り、コップ1杯の水を飲み干した。

「どうなっているんだ、あの街は!」

 やり場のない怒りがこみ上げる。顔でも洗って目を覚まそう。嫌な夢なら早く覚めてくれ。そう思い、洗面台に向かった。

 そこにある鏡に本当の自分の姿を見た。
 僕はその時、自分自身に負けていたことを悟ったのだった。

鏡の中の自分

鏡の中の自分

鏡に映った本当の自分。

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
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