キミに吐いた最初の嘘

その日、アタシは生まれて初めてキミに嘘を吐いた。
今思えばどうしてうそを吐いてしまったかは解らない。
きっと、軽い気持ちだった。
その嘘で、まさか。
こうなるとは思わなかったから。
誰も。
勿論アタシも含めて。

高校一年の春。
入学式。
周りの子はみんな両親と一緒だった。
アタシは知らないおばさんと一緒にいた。
おばさんも知らないから。
重い空気だけがそこにはあった。
「沙奈子は来ない?」
友人の早紀はそういった。
アタシは遠慮した。
「用事があるからごめんね。早紀、また誘ってくれる?」
「オッケー。」
早紀はそう言って笑った。
アタシはクラスに戻り隣の席の男子の名前をしっかり覚え帰ろうとすると。
ガラララ…
扉が開く音がした。
「あれ?アンタが俺の隣の子?よろしくなッ」
そう言ってニコッと笑ったのは。
アタシの隣の席の。
麻俚輪廻だった。
「えっと…。名前なんだっけ?」
「朝比奈沙奈子。」
「同じ名字だね。俺ら」
「漢字は違うけど。」
「そっか。」
「そうだ。友達になってくれますか?」
「ん?何言ってんの?」
輪廻はそう言って首をかしげた。
あぁ。
アタシってやっぱダメなんだ。
そう思っていると輪廻は
「もう俺ら友達でしょ?沙奈」
と言って笑った。
「あ…。輪廻、ありがとう。」
笑ってアタシは言った。
でも、頬が濡れていた。
「可愛い顔が濡れちゃって、勿体ないぜ」
そう輪廻は言ってアタシの頬に垂れたしずくをペロッ。
と舐めたのだ。
その時アタシの胸の奥でドキッと音が鳴った。
「な、ななななななな、何をすすすすす、するんですかアアアアアアアアアアア!?」
アタシはそう言って輪廻を少し突き飛ばした。
どうしよう。
「好きになっちゃうじゃん。」
「え?沙奈どうした?」
「え?今アタシ何かいっちゃった?」
「うん。『好きになっちゃうじゃん。』って」
「はぅ!!」
「ププっっ おもしれえな。沙奈は。 でも、なってもいいぜ?」
「何に?」
「好きになっても。もちろん俺のことだけど」
「ッッッッッッ!!!」
アタシは顔を林檎のように真っ赤に染めて
「本気になっちゃうゾ?」
と言って輪廻を見上げた。
「いいぜ?沙奈 俺からも一つ。」
目を少し閉じてと言って輪廻はごそごそ何かをやっているようだったけど。
そして。
いいよの合図でアタシは目を開けた。
そこには一つの小さなバラの花と指輪があった。
「俺と、結婚を前提に付き合ってくれないか?」
驚いた。
でも、アタシの答えはもう決まっている。
だから、生まれて初めてのおもいっきりの笑顔と涙で
「不束者ですがよろしくお願いします。」
と言った。

このときは、まだこんなことが起きるとは思わなかった。
明日から地獄が始まるなんて。



アタシと輪廻はいつもどうでもいい話をしていた。
いわゆる世間話。
「今日、あのアニメ始まるみたいですよ?」
「マジ?!録画してねえ!!あんがと。」
「そんなに面白いのですか?」
「うん。あれはケッサク!!」
「へ~。」
見てみようか、な。
「沙奈は今日あいてんの?」
「ん?まあ。」
「じゃあ。デートしようか。」
「え!?」
アタシは席を立ってしまった。
ガタッと。
数学の時間だった。
数学担任英。
学校内一番ウザい先生。
「朝比奈~。ちょっと廊下にでなさ~い。」
と言った。
英は鬘である。
「どうしたんだ~い?いきなりっさ~。」
う、ウザい!!
「きいてんのっかな~?」
!!!!
どこ触ってんだよ!!
このセクハラ鬘野郎!!
アタシのお尻触りやがって…!!
英はまだ触り続けている。
「朝比奈?どうしたんだい?」
ひっっ!!
英はアタシの胸(Dカップに近いCカップ)を触りだした。
「な、何すんのよ…。」
「ん?なんかいったか~い?」
女子高校生をセクハラしといて何!?その台詞は!!
英はついに胸を揉みだした。
やばい!!もう限界!!
そう思って、アタシはメールで助けを求めた。
勿論、輪廻に。
輪廻は多分、ちょっと廊下の様子でも見に行くよとか言ったのだろう。
アタシは半分気絶状態だった。
輪廻は
「英先生が女子高校生にセクハラしてる!!」
と叫んだ。
クラスの子や隣のクラスの子は一斉に廊下を見た。
英は輪廻の方を見て
「麻俚!!!!何やってんだ?!貴様は!!!」
と睨んで言った。
「何やってんだはこっちの台詞だ。英練橡さんよォう?」
と輪廻は手を軽く鳴らして英に言った。
「俺の女に手ェ出すたぁいい根性だな?許さねえぞ」
輪廻はそうにらんだ。
完璧にキレてる。
そのあと、輪廻は英を一発殴りとばした後。
校長室に行き事情を言い英は即退職か転勤になった。



月日がたって。
アタシと輪廻は高校3年になった。
季節は夏。
ちょうど夏休みになる時。
アタシは、輪廻に嘘を吐いた。
「アタシ、輪廻のこと嫌いになったかも。」
全くのウソ。
真っ赤なウソ。
そんなこと思ってないのに。
輪廻はそっかと言って笑った。
「俺がお前に愛情を注げなかったんだな」
と言った。
どうして、その時言わなかったんだろう。
嘘だよって。
ジョークジョークって。
本当。それだけが後悔。
でも、このことがあったからこそ今があるんだろうな。
と、ポジティヴに考えてみた。

その日の夜。
ニュースを見て驚いた。
「今夜、19:00ごろ。2tトラックの人身事故がありました。被害者は麻俚輪廻さん。17歳です。逮捕されたのは百々川瑠衣子容疑者28歳です。被害者は意識不明の重体です。」
と、アナウンサーが言った。
う、嘘だろ?
「何で? アタシのせい…?」
そう呟いてアタシは泣いた。
すると、
「姉ちゃん?何泣いてんの?」
と弟の美弦が言った。
「なんでも、ないよ。みっちゃん。」
そう言って笑って見せた。
美弦とは7歳離れている。
美弦はサッカーと野球が出来るどこにでもいる普通な男の子だ。
アタシは美弦には何も言っていない。
「姉ちゃん。人前でそういうのはやめてよね? 恥ずかしいから」
おお?
いうじゃないか。
小学生くん。
アタシは美弦をぎゅっと抱きしめて
「みっちゃんは姉ちゃんよりも早死にすんなよ?」
と言った。
美弦はするワケねえってと言った。

深夜になった頃。
美弦は当然眠っている。
アタシも眠る時だった。
突然の隙間風に驚いて窓を見ると。
輪廻がいた。
「沙奈。お前は、俺に嘘を吐いた。その罪でお前には人間をやめてもらう。」
そう輪廻は言った。
その時ちょうどニュースで
「今夜19:00頃に遭った人身事故で被害者の麻俚輪廻さん17歳は経った今病院で死亡を確認されました。」
とアナウンサーは言った。



「輪廻!!ごめんなさい。ただのジョークだったの。」
アタシは必死になって謝り続けた。
自分の誤りを。
謝った。
「そんな事言ってももう無駄だ。あと三分でお前は人間じゃ無くなる。 弟に言いたいことは紙に書いとけ。」
と輪廻は紙とペンを渡してきた。
アタシは小さく頷き。
三分まるまる弟への遺書を遺した。
そして、約束の時間。
アタシは息苦しくなって。
体が火照てきた。
そしてその後すごく冷えた。
寒くなった。
沖縄から急に北海道にとばされた感じだ。
そのまま。
アタシは失神した。

目を開けたら。
そこには真っ赤な瞳の輪廻がいた。
「大丈夫か?」
輪廻はそう言った。
ああ。
いつもの。
「輪廻だ。」
と言って。
アタシは微笑んだ。
なんか。
変な感じだ。
体が軽い。
「輪廻。アタシって今どんな感じ?幽霊?」
「何でそう思う?」
「体が軽いの。体重がないみたい。」
「ふむ。でも、俺とお前は今幽霊じゃない。」
「じゃあ何?」
「魔術師。」
「嘘!?」
「本当。でも、今の沙奈の発言をもとに考えてみると…。俺は光魔術師(ハード・ル・リープ)。お前は陰影魔術師(ダークベローヌ・ル・リープ)ってところかな?」
「そっか。」
アタシは陰影で彼が光か。
納得。
ちょ→納得。
てか、アタシ魔術師になったって事は。
「魔術って使えるの?」
「俺はまだ少し。でも沙奈はすぐにでも使えるだろうな。」
「と言いますと?」
「俺は沙奈のこと色々調べてみた。お前の母さんや父さんのことも。それで解ったことがある。」
「何?」
「お前の両親は超一流の陰影魔術師だったこと。とくに、お前の母さんの家計はそりゃみんな一流の陰影魔術師。」
「それとこれと何が関係が?」
「お前、自分の母親見たことあるか?」
「7歳の時までなら。」
「お前とそっくりだったよ。多分。いや絶対にお前は、母親の血を濃く受け継いでいる。」
「だから…。陰影魔術師…。」
「そういうこった。」
そっか。
父さんも母さんもそんな偉い人だったんだ。
「ちょっと真面目な話。俺はとある女性。まあお前の母さんかな?まあ女性に、人間界とは別の不思議な世界(ファンタジー・ヴェ・ワールドゥ)を救って欲しいと頼まれた。その為に朝比奈沙奈子を魔術師にして連れてきてくれと言われた。だからこうした。」
「それがあの人身事故の日?」
「うん。その時お前が嘘で軽くショック受けていたら前からその人が来て俺に言った。その後、事故った。」
「ゴメンなさい。」
「いいよ。もう。で、どうする沙奈。救うか。救わないか。」
輪廻はアタシに問いかけた。
アタシは真剣な顔をして
「救うよ。」
と言った。
輪廻はニコッと笑って了解と敬礼のポーズをして言った。
そのあと。
俺も手伝うよと言った。

これから、アタシたちは世界を救うことになる。
たったひと組のカップルが。
むりだとおもわれても。
アタシ達は諦めない。
この命が終えつきるまで。

キミに吐いた最初の嘘

世の中には、犬が嫌いでも犬を飼っている家があります。
私の家がそうです。
姉が大好きで飼い始めたんです。
二年前ぐらいに。
最初はまあ可愛かったんですが。
なんとどんどん大きくなっちゃって。
「いや、デカ!?」
と、つい言っちゃいます。
まあ、飼い始めたからには責任もって愛してやろうと思います。



今回の話は、一つの嘘で始まったものです。
あの日、あの時ああしなければもっと良かったのにな。
というのはよくあると思います。
でも、そこから今があって。
それがなかったら別の今があるみたいです。
私が好きな本にはそんな事が書かれていたような…。
主人公が
「変わるモノなんて無いというのなら運命にも変わってもらうとしよう」
的な事を言っていたんです。
そこにグッときました。

以上。
どうしようもなく小さな著者こと神鬼百合孤でした。

キミに吐いた最初の嘘

主人公は一般人の女子高校生。朝比奈沙奈子。 彼女が彼氏に吐いた嘘から物語が始まる。 これは、この序章である。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-03

CC BY
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