とても短い物語 零
ゆの字
光陰あやめは、夏の日。
とても酷いことをした。
少年を、一人孤独にしたのだ。
ただの少年ではない。
自分の弟だ。
弟のいかしは元々は、影の存在だった。
あやめが光の存在。
しかし、彼女は彼に言った。
「お前は、人を生かす力がある。だから、代えよう。」
みんなが幸せになるか、自分だけ幸せになるのなら私は前者を選ぶよ。
と言って、いかしを突き放した。
いかしは泣いて拒んだ。
姉様が不幸せになるなんて可笑しい。
そう言った。あやめはニコッと笑って言った。
「不幸せじゃない。みんなの苦労を私が食べるだけさ。」
と。
そう言った彼女の瞳は潤んでいた。
「そんなの、ただの自己犠牲じゃないか。」
彼女、あやめはそういわれ続けた。
そう、これは。
単なる自己犠牲。
単なる自己満足。
これは、そんな彼女の人生と言う名の物語だ。
あやめは、25歳の夏の日。
風間卯月と、結婚した。
娘を2人産んだ。
とても、いい家庭だった。
しかし、彼女は陰の中にすむもの。
全世界の不幸せを持つ者。
だから、娘が高校生になったときに話をした。
自分のことを。
娘は、涙を流して
「母さん。安心してください。夕も日も母さんを愛しています。」
と言って、強くあやめのてを握った。
あやめは、娘を一回部屋から出した。
この時既にあやめの中で病魔は彼女の身を蝕んでいた。
あやめはそれを知り、あと、一時間しかないのを実感した。
だから、家族を、一人ずつ呼び言葉を残した。
夫には、娘の性格やら自分だけ知る面を言った。
長女の夕には、
「母さんは、まだ何も見せられなかった。だから、最期にこれだけ言わせて。初恋は運命の人だから、その人と仲良くしなさい。もし、何かあったら母さんに言いなさい。」
と言って、強く抱きしめた。
夕は、泣かないんだからと言いながら。
幼児のように泣いた。
あやめは、泣きながら夕に何事も、挑戦よ。と言った。
最後に日を呼んだ。
「日は、とても強がりなんだから、泣きたいときにわーっと泣きなさい。いっぱい泣いたあとに泣いた百倍笑い飛ばしなさいよ?母さん、これでも一番心配なんだから。」
日のことがと言つて泣きながら抱きしめた。
日も、泣きながら抱きしめた。
そのあと、光陰あやめは。
とても、幸せそうに行きを引き取った。
とても短い物語 零