たとえば

私が馬鹿にされたら
面倒臭いな、なんて思いながら
その人とはそっと距離を置き始めるだろうし

あなたが揶揄われたら
内心ムッとしながらも
屈辱を忘れることに努めるだろう

そんなよくある話を
たまに想像するけれど
怒りを覚えるのは
あなたが傷つくほう
私の大切なひとに
どうか痛みを教えないで

私が交通事故に遭ったら
血文字であなたに伝えたかったたくさんの言葉を
命の続く限り書いてしまうだろうし

あなたが突然余命三ヶ月なんて言われたら
大好きなその声や息づかいが消えてしまっても
骨張った手を強く握りしめているだろう

そんなまさかの話を
たまに想像するけれど
怖いのは、涙が出るのは、
あなたを失うほう
あなたをしあわせにする前に
どうか遠くに行かないで

私が上司から認められたら
何もかもが輝いて見えて
それからの一週間までもが楽しみに思えるだろうし

あなたに穏やかな出来事があれば
少し気取ってみる余裕が出来て
眠りにつくときまで優しい気持ちに包まれるだろう

そんな愛らしい話を
よく想像するけれど
嬉しくて堪らなくなるのは
あなたが喜ぶほう
私が選んだひとだから
大好きなあなただから
毎晩、祈っている
あした天気になりますように
あなたに訪れる一日に
どうかひとつでも良いことがありますように