そうだインドに行こう。9

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最初にこの話は20年以上前の話だと言う前置きを理解していただきたい。


ここ数日 ホテルの部屋にアニルが居る。
一緒に泊まってる訳ではないのだが
ギリギリの時間まで部屋に居る。

1人で部屋に居るよりも
やはり話し相手がいるのはありがたい。

会話も交わす。
だが アニルには目的がある。
今 思い返すと アニルは虎視眈々と機会を狙っていたのだろう。旅の終わり、別れの時まで気づかなかった。

アニルが部屋に居る理由・・・

それは・・・

雑誌。
成田空港で時間潰し用に買った雑誌。
その雑誌を執拗に見つめている。
その雑誌に載っているのは
本当にちょっとした小さな写真。
穴があく程 見つめる。

女性の裸の写真。
小さな小さなストリップ劇場の記事。

最終的に数日に渡り 延べ数時間
アニルはその写真を見つめ続けた。
飽きもせずに ひたすらと。

誤解しないでほしいのは
アニルが特別 スケベだと言う話では無い。
(と思う。)
インドは宗教を重んじる国で 男女の戒律も厳しく
テレビや雑誌等で女性の裸など決してお目にかかれるモノでは無いと言うのだ。
きっと今の時代なら携帯やネットで気軽に見れる様になっているかも知れないが
当時のアニルには小さなソフトな裸の写真でも
驚愕の写真だったのであろう。

アニルは私の部屋に居る間
決してその雑誌を離す事は無かった。

そんな中 アニルとの会話で
インド人が貰って嬉しい日本の土産の話をした。

まずエロ本だそうだ。・・・
それならアメリカの無修正の方が良さそうだが

次に 日本酒。
当時 免税店とかでも日本酒はなかなか販売されず貴重な品だったらしい。
私はウイスキー派なので 日本酒は持ち込んでいなかった。そう伝えるとアニルは少し残念そうな表情に変わった。

そして三種の神器 最後の一つは
・・・
コンドーム。
世界的に日本のコンドームの薄さはダントツだとの話をアニルに熱く語られる。
持ってたら ぜひ分けてくれと 熱い眼差しを向けながら前のめりに迫って来る。

持ってないよ。
ある訳無いでしょうよ?
1人旅よ?
宗教の国 インドよ?
持ってる方が変だよ?

あからさまに落胆するアニル。
『じゃあ 次に来る時は お願いしますね?』

いや・・・
どんだけ?・・・
と言うか 次なんて そうそう無いっての。
キラキラと子犬の様に瞳を輝かすアニルにかける言葉は見つからなかった。

そうだインドに行こう。9

そうだインドに行こう。9

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-08

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