即席幽霊

 即席幽霊

 ケイタはヒロアキと共にデパート屋上で催しているフリーマーケットへ遊びに来ていた。二人は親から貰ったお小遣いを固く握りしめ、めぼしい物がないかフリーマーケット会場をうろうろと散策していた。
 何かないか何かないかと探していた二人はガラクタを山のように積み、それを売っている老人の出店を見つけた。なんでもその店にある品物は全て五百円だと言う。五百円であれば二人のお小遣いを合わせて十分に買える値段だ。二人は目を輝かせガラクタの山から五百円で買うことのできる“宝”を探した。
 二人はガラクタを手にしては、ああでもないこうでもないと言い合い中々二人に適った宝は出てこなかった。するとヒロアキが「あった!」と感嘆の声をあげた。ヒロアキは「即席幽霊」と書かれたカップ麺の容器に似たパッケージをしている宝とも言うべきガラクタを手にし、ケイタにそれを見せた。
 「ケイタこれにしよう!即席幽霊だってよ、食べ物かなあ?いや待てよ、なになに、フタを開けお湯を入れるとあっという間に幽霊ができる・・・だってよ!ケイタこれにしようよ!お前幽霊とかUFOと好きだろ?いつもテレビで心霊特集の番組がやってたら録画までして見てるじゃないか。なあいいだろう、これにしよう!」
 ケイタはこれめぼしい物がこのガラクタの山から見つからず、自身も即席幽霊なるジョーク品であろうグッズに興味があったのでヒロアキの提案に従い二人は五百円で「即席幽霊」を老人から購入し、早速幽霊を作るべくヒロアキの家へと向かった。
 ヒロアキの家へ着き二人は早速幽霊作りに取り掛かった。
 ヒロアキはお湯を準備すべくキッチンへ向かい、ケイタはヒロアキの部屋でフリーマーケットから持ち帰った宝と向き合っていた。
 お湯の準備ができたとポット片手にヒロアキが部屋へ入ってくると、二人はいよいよパッケージに示されたようにカップ麺にも似た即席幽霊!のフタを開けた。中には固形の黒いピンポン玉のような物が入っており、それは大きさの割には重く感じた。ヒロアキがそれを手に取り匂いをいでみたが無臭であった。
 「これを容器に入れてお湯をかければいいのかな?なんだかこのパッケージにこの工程と来ると本当にカップ麺を作っているみたいだなあ。なんだか小腹が空いてきたよ。」
 ヒロアキがそんな事を漏らしながら、黒い球体を容器へ入れお湯をそこへ注いだ。
 「ケイタ、俺下に行ってなんか食べる物取ってくるわ、ケイタはポテチでいいだろう?直ぐに戻ってくるから幽霊が現れたら大きな声で教えてくれよな!」
 ヒロアキはそう言うとドッドッドッドと部屋を出て行き食料を探しに階下に降りた。そしてほんの数十秒でポテチ片手に戻ってきた。
 「ケイタどうだった?もう幽霊出て来たか?」
 「そんなに早く出来る訳ないだろう。カップ麺だって三分は待つんだぞ?」
 二人は容器の前で今か今かと幽霊の出現を待った。しかし三分が経過しても幽霊が出てくる兆しは感じられなかった。二人はそのまま五分十分とその場でうんうんと中々出てこない幽霊を唸りながら待ち、しびれを切らしたヒロアキが「もう充分待ったよな」と言いフタを開けた。フタを開けるとそこには黒く濁った生暖かいお湯があるだけだった。おそらく黒い球体は溶けたのだろう。
 二人は何の変化もない即席幽霊に肩を落とし五百円を無駄にした事やジョーク品に期待して胸を躍らせた事に後悔をしていると、キャーー!!と言う辺りを戦慄させるような悲鳴が階下から聞こえた。二人は驚き、急ぎ階段を下り悲鳴の下へ駆けつけるとそこには倒れているヒロアキと泣きわめく彼の母親の姿があった。ケイタがヒロアキと一緒に降りて来て、すぐ隣に彼の息遣いを感じていたその場所を振り返るとそこにはヒロアキの姿は無かった。

即席幽霊

即席幽霊

三分で読めるショートショートです。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-08

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