wa。




たった今 頬をなでた風




水面のように揺れる木洩れ日




吸い込まれそうに高い空






離したくないと思える一瞬を、




この「時」を、




一枚に収めて残したい。




その瞬間の空気まで感じさせたい。





そう思わせてくれたのは、



本当に大切なものは



すぐ側にあると教えてくれたのは。








右膝にお風呂場のタイルがくい込む。




ビー玉が、カランと涼しい音を立てる。



いて、、でもあと一枚。



またこうやって、撮り続けてしまう。




本当の「 あと一枚 」が終わったところで、




久しぶりに駅前まで出てみようと思った。




自分の充電はそこそこに




それより大切なのは、相棒の充電。



今日は大丈夫。






夏と秋の狭間



彼岸花の咲く庭先を抜けて、



人混みの中へ溶けていく。







ダークブラウンとモスグリーンを基調とした



店内に、長いカタカナの注文が静かに響く。





ちょっとの愛想笑いと左手を添えて、



出来たてのものを渡す。





窓際の席には、


パソコンとにらめっこをするサラリーマンと


スマホを片手にはしゃぐ女子高生達が座っている。




今日は何か起きそうな予感がする。




とりあえず、まだ明るいうちに



あの川沿いの廃墟へ 行ってみようか。








「 ねぇ〜!!あたしのイヤーカフ返して!」



「 えーー? これ耳痛くなるから要らんって言ったの、誰?!」



「 ん〜〜…!欲しいなら自分で買ってよ!! 」



喧嘩みたいだけど、ただのじゃれあい、


いつもの帰り道。



今日は、終業式のために午前授業だった。




まだ空が明るいうちに帰れるなんて…!



帰ったら、



夕陽でも撮りに家の周りを歩いてみよう。




いつもは、見ているだけで撮れないから。




「 はいはい…じゃがりこ買ってあげるから許して!」



「 話逸らさないでよ〜〜!」




なんで、



この子はこんなにイヤーカフに必死なの、、




「 てかさ、」



いつの間にか ころっと機嫌を直した蒼さんは、


何かを思い出したように歩く足を止めた。




「 この先にある総合公園、いまコスモスがすごく綺麗なんだって! 行かない?」



コスモス!!!



撮りたい、、夕焼けとコスモス撮りたい!


「 行く!」


そして、約束通りじゃがりこを買ってから



「 総合公園行き 」のバスに乗り込んだ。







カラカラと音を立てつつ、


自転車を押していく。





今日は歩いて帰りたい気分だった。





川面に夕焼け空が写り込んでいて、


まるで映画のワンシーンのようだ。



そっとリュックからカメラを取り出し、


フィルムを巻き上げて ファインダーを覗く。





…あぁ、最高だな。





シャッター音まで跳ね返しそうな、



つるんと綺麗な水面だ。





そしてまたまっすぐ、川沿いを歩いていく。







どうして



この子はこんなにも可愛いのだろう。



車道側は怖いから内側を歩かせたら、



「 えへへ椿ちゃんイケメン〜!」




って言ってきた。可愛すぎる。



何もないのにずっと笑ってるし。



ほっとけないなぁ、



と彼氏目線で見守ってしまう。



彼女の、「 コスモス畑に行きたい! 」の一言で



今日のお出掛けの行き先は決まった。


頭の中が常に「 お花畑 」な彼女と一緒に。








今、とてもドキドキしている。



あれは、



あれは、きっと、




「 お写んぽ 」ってやつだ!!



みんな、首からカメラを下げている。



うらやましい、、私も混ざりた……




あれ?




ここ、


さっき誰かのツイートで見た景色とそっくりだ…




まさか。




『 これって総合公園?』



とリプを送る。返事を待ちつつ、



女の子5人がいるところへ近付いてみる。



この景色の写真が


この中の誰かのツイートなのだとしたら。




思いがけず


「 リアル 」で会うことになるとは。




『 そうだよ!コスモス畑〜!』



しばらくすると、瞬から返信が来た。





『 いま、その近くの噴水のとこにいるの。分かる? 』




なんて送るのが正解なのかは分からない。




ここにいるよと叫びたい。




その時、



「 あー!黎姉ちゃん!」


!!


「 今はもう黎じゃないよ〜!久しぶり!」



うそ、



「 今はつくねか!!」



つくねちゃんだ…!




「 右から、蒼ちゃ、ゆうちゃん、椿ちゃん、りぃねぇだよ!」



まじか……!




「 わぁ〜みんな可愛い……!!」



つくねちゃんが、



口元を抑えて涙声になっている。



これは、行くしかない!



「 あの!」



瞬が、あっ!と声を上げる



「 初めまして…? えっと、東雲リンゴ!です!」




わぁぁ!!と彼女達の声が揃う。




ゆうちゃんが、



フィルムの神だ…!と目を丸くする。



椿ちゃんが、



「 瞬と蒼ちゃん、ゆうちゃん、つくねちゃんは学校帰りに、私とりぃちゃんは、お出掛けみたいな感じで来てて、たまたま会ったんだー!」



と、説明してくれた。


デートだよ、とりぃちゃが訂正する。




たまたまって、、すごい縁だなぁ。





ふと、りぃちゃが小声で、



「 あそこにおる人、颯みたいやねぇ 」



と言った。



するとつくねちゃんが、




「 いや、『 みたい 』じゃなくて、あれ颯だよ! 」



まじで?! と全員一斉に彼の方を向く。




彼もこっちを見ていた。




お互い考えてる事は同じなはずのに、


なんとなく気恥ずかしい瞬間だった。



「 お兄ちゃん〜!!」



と、瞬が笑う。




「 これ、初めましてって言うべきなのか、迷うなぁ!まさか、みんな揃っとるの?」




と、颯さん。



「 みどちゅんと、だちゃん以外ね!」




瞬が答える。




「 わぁ〜暖炉系男子いいとこに来た〜!
少し肌寒かったの!!」



りぃちゃが楽しそうに笑う。









コスモス畑を見に、


この日、この時間にみんなが集まった。




私は勝手に、あおちゃとだーちゃんも


来てくれるような気がしていた。



LINEを交換して何度目かの通話。



私はあおちゃに、


なんの前振りもなく電話を掛けた。



「 …..♪*゚もしもし?」




でた!!




「 あおちゃ!今どこにいる?」




「 んーとね、だーちゃんと川沿い歩いとるよー 」



まじか!!?




「 聞いて! 今ね、総合公園のコスモス畑のとこに、みんないるの!! だから今すぐ来て!」



「 あ、そうなん?!
それはすごいなぁ〜、少し待っとって!」



数分間の会話だけど



やっぱりあおちゃの声が好きだな、と思った。





すごい、、



ここにいる人はみんな写真が好きで、



それがきっかけで繋がって



いくつかの小さな輪がくっついて



少し大きな輪になって、



いつかみんなで会いたいねって話していた。





ここにいる。




確かにここにいるんだ、私の大好きな人たち。




そのとき突然、


後ろから誰かに抱き締められた。




!!!あおちゃ!!!!! ( 消去法 )




「 …だよ、ね? 」




「 せやで! つくねちょん!!!」




と言うことは、




「 だーちゃん!!」



「 初めましてー、TLの癒し系女子!」




やっぱり全身黒、イケメン。




「 入ったお店が、偶然だーちゃんのバイト先で、だーちゃんのシフトが終わってから廃墟巡りしとったんよ〜!」




と、あおちゃが言った。



「 勢ぞろいやんか〜!」




「 みどちゅん!!!」




瞬があおちゃにアタックする。やばっ。




「 りぃた…!!」




りぃちゃのところへ逃げるあおちゃ。




みんな、実際会っても面白いよ…



最高だよ。




あ、、




「 ねぇ!
夕陽が沈む前に、みんなで写真撮ろ!!」




離したくないと思える一瞬を、




この一枚に収めて残したいから。





またしばらく会えなくても、



この日は夢じゃなかったんだって、



思えるように。





「 自撮りで10人も入るかな〜?!」




撮っては誰かの顔が半分になったり、



ブレたりしながら、何枚も撮った。




気が付けば、近くの明かりは街灯だけになり、




電車の走る音だけがまっすぐ聞こえる。





秋の夜風は澄んでいて、月がよく見える。




「 日が短くなったねぇ 」



「 夏にまた会おうよ!」





暗くて表情がよく見えないけれど、


みんな名残惜しそうに話していた。




そうだね、また会おうね。



きっと、



ちゃんと予定を決めたのに




誰か一人だけ寝坊しちゃったりして、




でもなんだかんだ会えて、




行き当たりばったりだからこそ




思いがけず良い瞬間がたくさん撮れて、




夜まで話して、




帰りたくないと思える日になるだろう。





その日まで、また、




それぞれのやるべきことをやろう。




いつも支えてくれるみんなに感謝して。






. 「 またね! 」









みんなへ




最後まで読んで下さり


ありがとうございます!!



そして、




いつも私に自信を持たせてくれて、



臆病者の私の背中を押してくれて、




本当に、本当にありがとうございます。





みんなに



どれだけ救われていることか。





感謝の気持ちを



「 ありがとう 」以外で伝える方法が、



私にはイラストか小説しか思い浮かびません。





不器用でごめんね。



ゆっくりでもいいから、




いつかちゃんと伝わればいいな、と思います。





「 好き 」を越えたこの気持ちが。











つくね ( @tkn__clps__ ) より



wa。

wa。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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