wa。
*
たった今 頬をなでた風
水面のように揺れる木洩れ日
吸い込まれそうに高い空
離したくないと思える一瞬を、
この「時」を、
一枚に収めて残したい。
その瞬間の空気まで感じさせたい。
そう思わせてくれたのは、
本当に大切なものは
すぐ側にあると教えてくれたのは。
*
右膝にお風呂場のタイルがくい込む。
ビー玉が、カランと涼しい音を立てる。
いて、、でもあと一枚。
またこうやって、撮り続けてしまう。
本当の「 あと一枚 」が終わったところで、
久しぶりに駅前まで出てみようと思った。
自分の充電はそこそこに
それより大切なのは、相棒の充電。
今日は大丈夫。
夏と秋の狭間
彼岸花の咲く庭先を抜けて、
人混みの中へ溶けていく。
*
ダークブラウンとモスグリーンを基調とした
店内に、長いカタカナの注文が静かに響く。
ちょっとの愛想笑いと左手を添えて、
出来たてのものを渡す。
窓際の席には、
パソコンとにらめっこをするサラリーマンと
スマホを片手にはしゃぐ女子高生達が座っている。
今日は何か起きそうな予感がする。
とりあえず、まだ明るいうちに
あの川沿いの廃墟へ 行ってみようか。
*
「 ねぇ〜!!あたしのイヤーカフ返して!」
「 えーー? これ耳痛くなるから要らんって言ったの、誰?!」
「 ん〜〜…!欲しいなら自分で買ってよ!! 」
喧嘩みたいだけど、ただのじゃれあい、
いつもの帰り道。
今日は、終業式のために午前授業だった。
まだ空が明るいうちに帰れるなんて…!
帰ったら、
夕陽でも撮りに家の周りを歩いてみよう。
いつもは、見ているだけで撮れないから。
「 はいはい…じゃがりこ買ってあげるから許して!」
「 話逸らさないでよ〜〜!」
なんで、
この子はこんなにイヤーカフに必死なの、、
「 てかさ、」
いつの間にか ころっと機嫌を直した蒼さんは、
何かを思い出したように歩く足を止めた。
「 この先にある総合公園、いまコスモスがすごく綺麗なんだって! 行かない?」
コスモス!!!
撮りたい、、夕焼けとコスモス撮りたい!
「 行く!」
そして、約束通りじゃがりこを買ってから
「 総合公園行き 」のバスに乗り込んだ。
*
カラカラと音を立てつつ、
自転車を押していく。
今日は歩いて帰りたい気分だった。
川面に夕焼け空が写り込んでいて、
まるで映画のワンシーンのようだ。
そっとリュックからカメラを取り出し、
フィルムを巻き上げて ファインダーを覗く。
…あぁ、最高だな。
シャッター音まで跳ね返しそうな、
つるんと綺麗な水面だ。
そしてまたまっすぐ、川沿いを歩いていく。
*
どうして
この子はこんなにも可愛いのだろう。
車道側は怖いから内側を歩かせたら、
「 えへへ椿ちゃんイケメン〜!」
って言ってきた。可愛すぎる。
何もないのにずっと笑ってるし。
ほっとけないなぁ、
と彼氏目線で見守ってしまう。
彼女の、「 コスモス畑に行きたい! 」の一言で
今日のお出掛けの行き先は決まった。
頭の中が常に「 お花畑 」な彼女と一緒に。
*
今、とてもドキドキしている。
あれは、
あれは、きっと、
「 お写んぽ 」ってやつだ!!
みんな、首からカメラを下げている。
うらやましい、、私も混ざりた……
あれ?
ここ、
さっき誰かのツイートで見た景色とそっくりだ…
まさか。
『 これって総合公園?』
とリプを送る。返事を待ちつつ、
女の子5人がいるところへ近付いてみる。
この景色の写真が
この中の誰かのツイートなのだとしたら。
思いがけず
「 リアル 」で会うことになるとは。
『 そうだよ!コスモス畑〜!』
しばらくすると、瞬から返信が来た。
『 いま、その近くの噴水のとこにいるの。分かる? 』
なんて送るのが正解なのかは分からない。
ここにいるよと叫びたい。
その時、
「 あー!黎姉ちゃん!」
!!
「 今はもう黎じゃないよ〜!久しぶり!」
うそ、
「 今はつくねか!!」
つくねちゃんだ…!
「 右から、蒼ちゃ、ゆうちゃん、椿ちゃん、りぃねぇだよ!」
まじか……!
「 わぁ〜みんな可愛い……!!」
つくねちゃんが、
口元を抑えて涙声になっている。
これは、行くしかない!
「 あの!」
瞬が、あっ!と声を上げる
「 初めまして…? えっと、東雲リンゴ!です!」
わぁぁ!!と彼女達の声が揃う。
ゆうちゃんが、
フィルムの神だ…!と目を丸くする。
椿ちゃんが、
「 瞬と蒼ちゃん、ゆうちゃん、つくねちゃんは学校帰りに、私とりぃちゃんは、お出掛けみたいな感じで来てて、たまたま会ったんだー!」
と、説明してくれた。
デートだよ、とりぃちゃが訂正する。
たまたまって、、すごい縁だなぁ。
ふと、りぃちゃが小声で、
「 あそこにおる人、颯みたいやねぇ 」
と言った。
するとつくねちゃんが、
「 いや、『 みたい 』じゃなくて、あれ颯だよ! 」
まじで?! と全員一斉に彼の方を向く。
彼もこっちを見ていた。
お互い考えてる事は同じなはずのに、
なんとなく気恥ずかしい瞬間だった。
「 お兄ちゃん〜!!」
と、瞬が笑う。
「 これ、初めましてって言うべきなのか、迷うなぁ!まさか、みんな揃っとるの?」
と、颯さん。
「 みどちゅんと、だちゃん以外ね!」
瞬が答える。
「 わぁ〜暖炉系男子いいとこに来た〜!
少し肌寒かったの!!」
りぃちゃが楽しそうに笑う。
*
コスモス畑を見に、
この日、この時間にみんなが集まった。
私は勝手に、あおちゃとだーちゃんも
来てくれるような気がしていた。
LINEを交換して何度目かの通話。
私はあおちゃに、
なんの前振りもなく電話を掛けた。
「 …..♪*゚もしもし?」
でた!!
「 あおちゃ!今どこにいる?」
「 んーとね、だーちゃんと川沿い歩いとるよー 」
まじか!!?
「 聞いて! 今ね、総合公園のコスモス畑のとこに、みんないるの!! だから今すぐ来て!」
「 あ、そうなん?!
それはすごいなぁ〜、少し待っとって!」
数分間の会話だけど
やっぱりあおちゃの声が好きだな、と思った。
すごい、、
ここにいる人はみんな写真が好きで、
それがきっかけで繋がって
いくつかの小さな輪がくっついて
少し大きな輪になって、
いつかみんなで会いたいねって話していた。
ここにいる。
確かにここにいるんだ、私の大好きな人たち。
そのとき突然、
後ろから誰かに抱き締められた。
!!!あおちゃ!!!!! ( 消去法 )
「 …だよ、ね? 」
「 せやで! つくねちょん!!!」
と言うことは、
「 だーちゃん!!」
「 初めましてー、TLの癒し系女子!」
やっぱり全身黒、イケメン。
「 入ったお店が、偶然だーちゃんのバイト先で、だーちゃんのシフトが終わってから廃墟巡りしとったんよ〜!」
と、あおちゃが言った。
「 勢ぞろいやんか〜!」
「 みどちゅん!!!」
瞬があおちゃにアタックする。やばっ。
「 りぃた…!!」
りぃちゃのところへ逃げるあおちゃ。
みんな、実際会っても面白いよ…
最高だよ。
あ、、
「 ねぇ!
夕陽が沈む前に、みんなで写真撮ろ!!」
離したくないと思える一瞬を、
この一枚に収めて残したいから。
またしばらく会えなくても、
この日は夢じゃなかったんだって、
思えるように。
「 自撮りで10人も入るかな〜?!」
撮っては誰かの顔が半分になったり、
ブレたりしながら、何枚も撮った。
気が付けば、近くの明かりは街灯だけになり、
電車の走る音だけがまっすぐ聞こえる。
秋の夜風は澄んでいて、月がよく見える。
「 日が短くなったねぇ 」
「 夏にまた会おうよ!」
暗くて表情がよく見えないけれど、
みんな名残惜しそうに話していた。
そうだね、また会おうね。
きっと、
ちゃんと予定を決めたのに
誰か一人だけ寝坊しちゃったりして、
でもなんだかんだ会えて、
行き当たりばったりだからこそ
思いがけず良い瞬間がたくさん撮れて、
夜まで話して、
帰りたくないと思える日になるだろう。
その日まで、また、
それぞれのやるべきことをやろう。
いつも支えてくれるみんなに感謝して。
. 「 またね! 」
*
みんなへ
最後まで読んで下さり
ありがとうございます!!
そして、
いつも私に自信を持たせてくれて、
臆病者の私の背中を押してくれて、
本当に、本当にありがとうございます。
みんなに
どれだけ救われていることか。
感謝の気持ちを
「 ありがとう 」以外で伝える方法が、
私にはイラストか小説しか思い浮かびません。
不器用でごめんね。
ゆっくりでもいいから、
いつかちゃんと伝わればいいな、と思います。
「 好き 」を越えたこの気持ちが。
*
つくね ( @tkn__clps__ ) より
.
wa。