朝焼けは朝まで

痩せこけた野良猫を見た 目が合うと逃げ出した

朝焼け プレスカブのエンジン音 カラスの鳴き声
鈍色に瞳を滲ませてつまり朝日がその色で

細やかな酒飲みの幸せ 辿れば吐瀉物と化して
踞った路地裏 室外機が「出でいけよ」と息を吐いた

この街のアスファルトに個人的な恨み辛みを
叩き付けて潰れたら腹を抱えて中指を立てて笑う

スーツ姿の兄ちゃんが持てる全ての嫌悪感を
浴びせて一瞥くれて足早に朝イチの駅のホームへ

そんなお前が遅刻して怒鳴られちまえよと
遅刻の理由は…何処かの誰かの飛び込みで(笑)

と馬鹿丸出しの気狂い達の呪いが電信柱に
引っ掛けられた犬の小便みたいに立ち込めて
目を付けられない様にと襟を立て
イヤホン捩じ込んで爽やかなFM
例えば誰かが脅されたって皆の為 糧となって

許して

ゴミ収集車のおじさんが不貞腐れて
八つ当たりする様にゴミを叩き込んでいた
街から全てのゴミ(人間的な意味も含めて)が
無くなっても鼻をひん曲げる臭いは消えないな

それを思って鬱々とした約39万人分の溜息の黄砂
見ればどいつもこいつもガスマスク面 生気なし

煙草のポイ捨ては自宅でやれ
卑猥な声は踏み切りが降りてから上げろ
万引きするならもっと価値在るものにしろ
108円で延命可能な些末な命の分際で
誰かの指輪に手を掛けて指を切り落とそうとしてる

人としての生きる価値を探るのはつまり
それに見合わない人間が存在する証明
生きる意味を模索しているのはつまり
そうでもしなきゃ生きられない生物的惰弱の証明

性的倒錯事案にでさえ身体はきっと正直で
目の前の安上がりなモノへと焚き付けられて

走りたくないなら走らなくていい
汚い容姿でこの先やっていけっこない
それならいっそ それならいっそ


(クラクション)



大きなクラクションの音がして我に帰る
コンビニ袋をぶら下げて千鳥足の僕

一斉に電線のカラスが飛び立って
急にさっきの野良猫が気掛かりに

朝焼けは朝まで

朝焼けは朝まで

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-07

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