時を越える推理  第三章

今日は、千郷はいつもよりかなり早く起きた。それもそうだ。何せ今日は旧友の、弟の事件の捜査会議なのだから。普段の談話に遅れてくるのだったらまだ許せるが、流石にここまで事が重要だと遅れてきては、申し訳が立たない。陽に絶交だってされるだろう。
千郷は今すぐ身支度をした。
現時刻は、AM8時。予定は十時だがどうせだったら早く行けばいい。千郷は軽く朝食をととって九時に自宅を出た。

目的地に着いたのは、AM九時半だった。予定より、三十分も早く、着いたので少し上機嫌だったが、それにしても会いづらい。昨日、店で見たときの陽は言葉に出来ないほどだった。あんなに暗くて、落ち込み、更に憎悪を掻き立てるような面持ちで、今思えば、とても、安易に話しかけられるような様子ではなかった。そのときの自分の態度ときたらっ!千郷は、自分がとても情けなく思った。
部屋に案内されると中には既に陽が居た。他にも、見知らぬ人だらけだったが、数はそれなりに居た。千郷が六番目くらいだった。
奥のほうには、警察の格好をした中年の男が居た。おそらくその男が担当刑事なんだろう。刑事らしき男は絶えず、横の若手刑事と話し合っている。
しばらくして、続々と、老若男女幅広い世代が案内され部屋にはいってくる。
そうか。ここにいる人は、全員、陽君の事件の関係者なのか。千郷は改めて実感した。しかもこの中に殺人鬼がいるかもしれないのだ。そう思うと血の気がよだち、鳥肌が立つ。
すると、刑事が席を立った。
「それでは、第一回、野村谷陽殺人事件の捜査会議を始めます。」 
 
「ではまず、事件のいきさつを順を追って、説明したいと思います。私は、この事件の、第一代担当警部を務める、一日 研平(ついたち けんぺい)です。」
一日警部は自己紹介を終えると、資料が手元に渡された。
「では、事件の事を説明する前に、右から自己紹介と行きましょう。」
右に座っていた公が席を立った。公は、被害者の弟だとい事を述べた。勿論、名前も。
津ずく千郷も名前と、陽の親友である事と被害者と顔見知りである事を話した。席に着いた千郷は、辺りを一望した。一体ここにいる人たちは、この事件にどう関わっているのか。
千郷の次に立ったのは若い二十代前半の男だった。
「私は虹岡 享(にじおか とおる)と言って被害者の遺体を最初に発見しました。」
なるほど、第一発見者という訳か。次は・・・。
「僕は、被害者のすんでいた家の近所の中金 懸耶(なかがね けんや)です。」
中金氏は、立場で言ったら証言者と言うところだろう。
「僕は、軸野 圭郎(じくの けいろう)と言って、中金君と同じく家の近所です。」
軸野氏も証言者のようだ。今日、来ている人では次の人が最後だった。
「私は、詞木 嶺鷹(ことばき みねたか)です。先ほどの虹岡君と一緒に、現場にいて、私が近くの交番に連絡しました。」
「これで自己紹介は終りですかな。それでは、事件の状況について話したいと思います。
会場は、一瞬で緊張感が走った。千郷は一回深呼吸を、公は、身を、前のめりにした。

時を越える推理  第三章

時を越える推理  第三章

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-01

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