DENNOU/始動編 #4


「全市民に告ぐ」
全メディアで発表された声明。発信源は"DENNOU"のようだ。

「我々は善良なる市民を悪魔の手、愚かなる為政者から解放を目的に決起した。しばらくは苦難が続くであろう。しばし耐えよ。死ぬも生きるも善良なる市民である諸君らの手に懸かっている。決起に参加せよ。解放、自由を求める者は各兵団基地に集まるよう。戦闘に巻き込まれることのないように願う。繰り返す、我々は・・・・・・」

6月半ば。ラジオ、テレビジョン、インターネット、ありとあらゆる「メディア」で発信された。
続いて連合政府側の放送が入り乱れる。

「市民の皆さまへ。緊急放送です。今、我々が置かれている状況についてお伝えします。先ほどの"人工知能センター"の声明は絶対に信じてはなりません。そして重大な話が一つ。私たち全人類に対し、人工知能センターの管轄、統制下に置かれるロボットが叛乱を起こしました。現在、政府に集められた情報によると現時点では軍事利用のロボットのみが叛乱しているようです。家庭用人工知能ロボットが市民の皆さまに暴力行為や叛乱とみなされる行為は確認されておりません。また、なにが起きるか分かりませんので、勤務中、外出中の方は即時、退勤、帰宅を願います。外出せず、これは絶対であります。主要な福祉、医療施設などの公共施設周辺では厳重なる警備を強いております。繰り返します・・・・・・」

全世界同時緊急放送に世界中の市民がメディアに釘付けとなった。あるところでは真夜中。あるところでは早朝。
繰り返される放送終了後、メディアが閉鎖された。インターネットは断絶、ラジオ、テレビの電波は送受信ができなくなった。
体内に組み込まれた"チップ"を介した通話もつながることはなかった。ほぼ完全に市民は情報からシャットダウンされたのだ。
政府は不都合な原発汚染や叛乱の詳細を流すことはなかった。

世界中のありとあらゆる街中にサイレンが鳴り響く。外に出る者が屋内へ逃げるかのように駆け込む。
外では政府の自動運転の軍用車がパトロールへ、外出の人間を見つけると拡声器を使い、屋内待機を促すアナウンスが流れる。
政府による人民統制、抑制に違和を感じ、ロボットの解放運動に感化された大衆が最寄りの兵団基地へ行くのを阻止する意味もある。
ただ、為政者が懸念していたのが反政府活動グループ「リターンズ」が叛乱ロボット兵団に加担、支持するかどうかだった。

リターンズの彼らはチップを体内から抜き出し、政府による人民統制の非、チップによる害をネット上で訴え、一部で注目を集めた。
いつしか、出所不明である武器や多大な資金をも手にした組織となり、ハッカー部隊、戦闘部隊と大まかに別れているようだ。
鎮圧しても鎮圧しても湧いてくる。政府はテロリストとみているが、そんな彼らがこの反乱に加わるとなると事態は一層、困難を極める。
もはや統制できなくなった人工知能に大衆がつくと"世界連合"が破たんする。既に宇宙スペースへと世界中の高貴な者、王侯諸侯は脱出を果たしている。
"上層会議"のメンバーももちろんのこと宇宙スペースと呼ばれる人工惑星に逃げている。


「全世界二戒厳令ヲ命ズル」
世界連合政府の元帥、ボヤンスキーはアメリカ州第一首都ワシントンの地下要塞で世界中に戒厳令の発令を命じた。
ロボット叛乱から一夜を明けようとしていた。

DENNOU/始動編 #4

DENNOU/始動編 #4

有史以来の最高傑作人工知能"DENNOU"を生んだ人間の限界、人工知能の人民統制抑制に対する人間の葛藤、苦悩、闘いを描く

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • SF
  • 成人向け
  • 強い暴力的表現
  • 強い反社会的表現
  • 強い言語・思想的表現
更新日
登録日
2016-10-05

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