海が鳴く

頭の中で月夜の海が鳴いている
それは砂浜の隅の方に埋めた飼い犬の夢

悲しい出来事に相応に悲しんで
涙を流すことは血を流す痛みでもあって

それを勝手に結び付けて僕は泣くことを
「海が鳴いている」と陳腐に言ってみたりした

重たい足を引き摺り帰る様な日も
都会に向かう友人の背中を送る日も
静かに海が鳴いている 還元されない涙の元に

僕らの嗚咽は潮風に似た様な面持ちで
申し訳なさそうに吹き抜けていけ
たまにある穏やかな日には笑って過ごせ

すぐそこで聞き慣れた犬の鳴き声が聞こえて
嵐を報せてくれたのか それとも散歩に行きたいか

こんな日にこそ僕は訪ねるのだ
鳴いて止まない今日の海を思うのだ

海が鳴く

海が鳴く

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-04

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