海が鳴く
頭の中で月夜の海が鳴いている
それは砂浜の隅の方に埋めた飼い犬の夢
悲しい出来事に相応に悲しんで
涙を流すことは血を流す痛みでもあって
それを勝手に結び付けて僕は泣くことを
「海が鳴いている」と陳腐に言ってみたりした
重たい足を引き摺り帰る様な日も
都会に向かう友人の背中を送る日も
静かに海が鳴いている 還元されない涙の元に
僕らの嗚咽は潮風に似た様な面持ちで
申し訳なさそうに吹き抜けていけ
たまにある穏やかな日には笑って過ごせ
すぐそこで聞き慣れた犬の鳴き声が聞こえて
嵐を報せてくれたのか それとも散歩に行きたいか
こんな日にこそ僕は訪ねるのだ
鳴いて止まない今日の海を思うのだ
海が鳴く