ゆめみるタンポポ

 天地創造について宗教家は「神が全てをなし、森羅万象をあらわした。神は神秘であり人知の及ばないところにある。姿、形を見る事はできないが存在することは真理である。」と説明している。それに対して、実証を基本とする科学者は「ビックバーンが宇宙の始まりだ。」として肝心かなめのところをスッと通過している。天体観測や宇宙物理学の理論に基づいた結果と思うが、宇宙の諸々の謎を全容解明するとなればそう簡単にはいかないだろう。全てを知ることが出来たら私は満足だが、その日まで待てない。
 知識がないのに自分の住む宇宙のことを考え始めた。でも知りたいことの殆どが分からない。宇宙の始まりと終わり、宇宙の大きさや形、宇宙の変化とメカニズムを知るのに、まずビックバーン、ブラックホール、ゆがみ、泡、反物質、ダークマターを理解しようとしたが無理だった。それらの諸説が真実なのか、仮説なのか。まだ仮説の段階であれば私も独自の空想を楽しむことができる。
 私はタンポポが好きだ。学者のように「考える葦」になれなくても、「ゆめみるタンポポ」になって空想の世界にふわふわと自由に飛んで行きたい。
ここでひとつ、太古から多くの人々が考えているように「死後も魂は不滅である」という前提条件にたち、「百聞は一見にしかず」の方法論を使って「私の知りたい事の全てが解明できる」という仮説を立て、それを証明してみたい。可能性は無きにしもあらず、命の尽きるいまが丁度良い機会だ。
私は魂だけになったら、光に乗って、時間に乗って夢の宇宙旅行に出発する。ときどき宇宙線に乗り換えながら、宇宙の過去も現在も未来も、果てから果てまで、時間の始まりと終わりも自由自在に見てまわるのだ。地球外のいろいろな宇宙人に会えるから面白いぞ。両親とも再会したい。過去人では信長に本能寺から消えて何処にいったのか、卑弥呼に邪馬台国を何処につくったのか聞きたい。未来人では成長した孫娘に会ってみよう。どんな娘になるのか楽しみだ。それから、アトランティス大陸は存在したのか、恐竜絶滅の原因は隕石だったのかの真偽も知りたい。謎といえば、徳川埋蔵金を見つけるのは簡単だが、分かっても、夢は無くならない方がいいから誰にも教えないことにする。一番の懸案であるが、神様の仕事場をたづねて、宇宙の謎を一気に解明してしまおう。全知全能の神は、「時間」を「無」に作用させて「有」とし、「反時間」を「有」に逆作用させて「無」としたりしているか。その原理を応用して、サタンのいない新しい宇宙を造ったり、サタンのいる老朽化した宇宙を消滅させたりしているか。早く知りたい。
残念な事に私はあの世で確かめた結果をたぶん報告出来ない。かつてこの世に戻った人間はいない?からだ。それほど天国は良い所らしい。きっと私も辛い経験をしたこの世には戻って来ないだろう。       
いつも興味を持って宇宙科学や脳科学の番組を見ている妻にだけはなんとか真相を知らせてやりたいものだが、どうしたらいいか。例えば、驚かないように耳元で囁くことにするとか…..。
 「NHKの囲碁の時間が始まったわよ」、妻の声にびっくりして目が覚めた。そうか、ダークマターどころじゃないぞ。     
                                    2016年7月15日

ゆめみるタンポポ