死ねない僕の未来は

<誕生日三日前>

今日も僕は死のうとする。

右手にカッター。

今日こそ、と誰もいない家のお風呂場。

だけど・・・また「彼女」がささやく。

(死んだらだめだよ)

そして、その言葉を言われた後はどうしてかどんなに力をいれても、手首にカッターは当てられなくなる。

なんどもなんども挑戦したのに。ダメだったんだ。

・・・僕は誰からも愛されない。両親には暴力を振るわれ、教室ではいないもの同然。先生ですら出席で名前を呼ばないほど。

そんな僕が生きる意味なんて

「どこにもないじゃないか・・・」

小さく呟いてみた。その言葉を聞くものは誰もいない。

<誕生日二日前>

昨日両親に殴られたところが痣になっている。

だけどそれももう慣れた。

病院に行こうなんて考えない。警察に行こうなんて考えない。

どうせ死ぬんだから。

今日は高いところから飛び降りてみよう。近くに廃墟ビルがあったはずだ。

靴を履いて家を出た。廃墟ビルに着いた僕はその匂いにとまどう。

なかは暗く、人など全く入っていないようだった。

今にも崩れそうな階段を上がり、屋上へたどり着く。

三階建ての屋上は、打ち所が悪ければすぐに死ぬ高さだった。

足を踏み出そうとしたその時。

(なんで死のうとするの?ダメだって言ってるでしょ?)

また、また。「彼女」が僕の邪魔をする。

足が、前に動かない。後ろには行けるのに。

今日もダメだった。痣のじわじわくる痛みが生きていると感じさせる。

<誕生日前日>

僕はまだ生きている。早く死にたい。

だけど・・・なんで邪魔をするんだ。いやだから死ぬ、それだけじゃないか。

そうだ、明日はそういえば僕の誕生日だ。ちょうど15歳になる。

きりがいい。どうせ今日も自殺を阻まれるのだから明日、特別な日に死のう。

プレゼントは「天国行きチケット」とかがいいのかな。

今日はナイフを用意した。いつも通り風呂場へ向かう。

・・・また来るかな。

ナイフを自分の首に思いっきり突きつけてみた。

だけど・・・今日は違った。寸止めでためらった。

声がない。

なのに自分はいつも通りとめている。

自分自身が・・・自分を止めた?死にたいはずなのに。なぜ。

そしてそのまま今日は終わった。

<誕生日当日>

3、2、1、0・・・

誕生日になった。夜0時。

両親は今日出張でいない。家には僕一人。

今日は、きっと・・・・・・

ポケットのカッターを取り出した。

「・・・ダメ!」

前に、女の子がいる。聞いたことのある声。

「死なないで・・・私も消えちゃう・・・」

幻覚・・・?泣いている。体温を感じない。

「私は・・・あなたが死なないために存在してるの・・・あなたは死ななきゃいけないと思っているみたいだけど死にたくないって気持ちもあるの。その気持ちが私、なの・・・」

・・・急なことで理解に苦しむが、きっと僕の気持ちが幻覚に表れているだけなんだ。

「ねえ、本当にそれでいいと思ってるの!?死んだら全部終わりだよ!?世界には優しい人もいるんだよ!?」

「・・・」

何も言い返せない。たしかにどこかで「死ななきゃいけない」という考え方はあったかもしれない。

・・・・・・・・・

昔に一人だけ僕の前で笑顔を見せてくれた少女がいた。でもそれは夢の中の話で。

そんな夢を見たということは心のどこかで愛情を求めていたのかもしれない。

「--・・・・」

僕は呟いた。

「彼女」はいつのまにかいなくなっていた。

ただ一人の僕の世界で

呟いた言葉は「生」か「死」か。

死ねない僕の未来は

最後はっきりしない展開でもやもやした方はすみません。

死ねない僕の未来は

なんどもなんども僕は死にたいと思った。なのに、死ねない。どうして、どうして、死なせてくれない。

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-02

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