天使狩人 10
前回と同じ
「シーラ!」
油断だった。会話が長すぎた……それが、命取りとなったのだ。
「ダーク!!」
そう叫んではいるが、天使の手は慈悲の心も虚しく力が込められていく。
「アア……あああぁぁぁぁァァアア」
徐々に悲鳴は酷くなっていく。ダークの脚はガクガクと震えた。
ーー動け……動けよ! 頼むから……俺はもう失いたくねぇんだ! だから………動いてくれ!
ダークは駆け出した。動いたのだ! 天使との恐怖に打ち勝ったのだ。目標は目の前の天使……そして、シーラの救出だ。
ダークは、右手に日本刀の神黒刀を持ち、目で目標との距離を見た。
ーーこれなら……。
不思議なことに次に行うべき行動は全て頭に流れ込んでくる。そして、それに追い付ける能力もあった。もしかしたら、これが《洗礼》だったのかもしれない……。
最初に、後ろに回り込む…そして、本来人間であれば足の腱である部分を両足削ぎ落とす。後ろに体が傾いた瞬間、跳躍し左膝を切断…、そのままの勢いで脊髄目掛けて水平切り。前につんのめったところで首を切断だ。
シーラが、屍と化した天使から抜け出してきた。
「ありがとうね。強いじゃない!」
「いや……このーーー」
ボォォォォ
死んだ天使から、炎が燃え上がった。
「な…に…が…?」
「天使は炎から生まれ、人は塊から生まれる。炎から生まれたんだから炎に還るんじゃない」
「ふーん、シーラって物知りなんだね」
「常識よ、常識!」
少し、常識と言われたのが傷ついた。
「んで、次は?」
「その必要は無いみたいよ」
「え?」
「自分の体を見てみなさいよ」
そう言われて自分を見た。見下ろす感じになるのだが……。小さな白い球体が体を下から囲んでいっている。シーラは、胸のあたりまで球体が来ていた。
「大丈夫?」
シーラからの返事は聞けず、またダークも球体に呑まれていった。
「お疲れだ。ダーク、シーラ」
聞き覚えのある声……。素早く起き上がった。
「お前……なんであんなことしたんだよ? 人が死んでいるんだぞ! ふざけすぎだろ」
「でも、お前達は生き残った。初めての天使との戦闘で恐怖感に打ち勝ち、ここにいる……、この世界は弱肉強食なのだよ。弱い奴は強い奴に食われる………しかし、生き残らなければならないのだ。元の平和を取り戻すには……」
ーーだからって、人の命を軽々しく扱っていいのかよ!
「そういえば、お前の名前は?」
「ん? 俺か? 俺は、ソーマだ」
まだ、わからなかった、誰にもわからなかった。このダークとソーマがこれから起こす奇跡を……。
天使狩人 10
続く