海月

海月

ふわり…ふわり…
      街に溶け込む

ゆらり…ゆらり…
      人波彷徨う

どこを目指しているのかも

何を捜しているのかもわからない

ふわり・・・ゆらり・・・
      ただただ揺れる~ふわり…ゆらり…


見知らぬ誰かが声かける

心根みえてる笑顔は白濁の闇

まだ付き纏う気なのかしら ?

刺される覚悟があるのなら

あたしは別に構わないけどね


あたしは海月

漂いながら人を刺す

姿を隠して毒を打つ


ガラスで遮られた世界では

あたしは癒しの女王よ

無数の瞳が釘付けとなり

賛美の声を投げかける


美しいと声がする

可愛いと笑顔する

この手にしたいと指を出す


遮断されたこの世界

ふわり・・・ゆらり・・・

揺れながら嘲笑してるのよ

気づかない?


見世物のあたしは美しい

ゆらりゆらりと踊るのよ

ふわりふわりと揺らめくの


透明な体を照らす鮮やかな光

美しくて当たり前

白濁することさえ出来なくなった


あたしは海月

思考なく身を任す海月

漂う事しかできない海月

いつか溶け込み消える

運命の日を数えながら

今を揺れている

哀しい海月


伝えたい気持ちがいっぱいあるの

分かって欲しい想いがあふれているの

抱きしめあいたい程さみしいの

こんなに・・・こんなに・・・

こぼれ落ちそうなのに

伝え方がわからないの

我が儘だって分かってる

けれどあなたから察してほしい

あなたから歩みよってほしい


無理な事だとわかってる

わかっているから 苦しいの

だから

淋しく恋しいの

海月

海月

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-10-02

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