昏い部屋
「そんなに沢山の鍵をどうなさるの?」
天鵞絨のカーテンがはためく。
「たっぷり愛撫した果てに殺すの?」
鉄格子は十字に。
「目睫に浮かべてユリイカ! と叫ぶのが癖になっているの?」
鍵穴たちの幾何模様。
「目睫に浮かべてユリイカ! と叫ぶのが癖になっているの」
同時に鍵を差し込む遊び。
「体現するの。好きを。憧れを」
昏い部屋。
「誰の何を閉じ込めているの?」
最後に。最後まで。最後の夜に。
「それを何と云うか知っているかしら」
刻限を知らせる針の音。
「恋と云うのよ」
止まる。
昏い部屋