昏い部屋

「そんなに沢山の鍵をどうなさるの?」

 天鵞絨のカーテンがはためく。

「たっぷり愛撫した果てに殺すの?」

 鉄格子は十字に。

「目睫に浮かべてユリイカ! と叫ぶのが癖になっているの?」

 鍵穴たちの幾何模様。

「目睫に浮かべてユリイカ! と叫ぶのが癖になっているの」

 同時に鍵を差し込む遊び。

「体現するの。好きを。憧れを」

 昏い部屋。

「誰の何を閉じ込めているの?」

 最後に。最後まで。最後の夜に。

「それを何と云うか知っているかしら」

 刻限を知らせる針の音。

「恋と云うのよ」

 止まる。

昏い部屋

昏い部屋

目睫に浮かべてユリイカ! と叫ぶのが癖になっているの。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-09-28

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