熱帯夜のブルース
あの悪い子には名前が無い
片田舎 見栄張った通りの裏
排気ガスの向こうで鼻を掻いた
その指は泥に塗れていた
あのとっぽい子には唄声が無い
甘え仕草もやり方を知らない
愛された記憶もとうに消えた
その頬は涙に濡れていた
僕はいったい誰だ
冴えたアイデンティティに
窄まった身をつまされ
せめてさいごには名前を呼んでおくれ
くだらない生を繋ぎ止める為に
あの女学生には友情が無い
本で読んだ淡い絵空事
上辺だけの付き合いを覚えれば
その愛は何処へ向かうのか
あのリーマンには居場所が無い
薄い壁の向こうは痴話喧嘩
安い肴と缶ビールで冷えた
その身は何を求めるのか
僕はいったい誰だ
冷えた関係性にちっぽけな自尊心が震え
せめて別れ際に名前を呼んでおくれ
くだらない生を繋ぎ止める為に
あの可愛いレディにはツキが無い
携帯なぞる指には泥も無い
他人を恐れることを覚え始めた
その性はなお弄ばれた
あの冷めた上司には彩が無い
恋されるのが怖くて着飾らない
社交辞令に頬は乾いていた
その罪は永久に隠された
僕はいったい誰だ
冴えたアイデンティティに
窄まった身をつまされ
せめてさいごには名前を呼んでおくれ
くだらない生き様晒す為に
君はいったい誰だ
惜しみもせず枯れた金魚鉢に水を与え
せめて愛するなら名前を呼んでおくれ
くだらない生を繋ぎ止める為に
熱帯夜のブルース