天使狩人 9
前回と同じ
広場に行くと、なにやらイベントが起きるのかと大勢の人が集まっていた。そして、彼らが見上げている人物に
ダークは見覚えがあった。自分を招待した男だ。
ーーそういえば名前聴いてないや。
「え~ゴホン、今からサバイバルゲームやるから、みんな生き残れ」
言葉が空気を振動させた後、広場にざわめきが起きた。
「魔方陣の中に入って、スリー、ツー、ワン………ゼロ!」
有無を言えることを許されず、無理矢理ワープさせられた。誰も、何も言えなかった。いや、発言のタイミングが無かった。ダーク達は、唐突に起きたこのワープに戸惑いを持った。
次に目が開け、光を捉えたときダークは、草むらに寝転がっていた。慌てて起き上がり辺りを確認する。
ガサッ
後ろの草むらで物音がした。続いて血塗れの男性……。もはや、服を着ているのかわからなかった。
「どうした! 大丈夫か?」
男は、微かながら唇を震わせ言った。
「天使……に…殺され…………みんな……死んだ…」
そこで、男は事切れていた。
ダークは、悩んだ。逃げるか、戦うかを……。
ーー逃げたら助かる…でも、誰かが死ぬ……。俺はどうすれば………。
「キャァアアア」
シーラらしい声が鼓膜に突き刺さった。ダークは、迷うことを止めた、代わりに男が来た方向に向かって足を運んだ。
草むらを抜けると、隕石が落ちたかのようなクレーターがある場所に出た。
無表情の顔……慈悲が無い心……。天使はいた、それも大きかった。一見、ただの灰色の石像に見える。しかし、図体は動き、人を死に至らせる。
ーーこんなのが天使だなんて………狂っている!
灰色の天使は、拳を握り降り下ろす。その先には、一人の天使狩人……。
ブシャッ
その天使狩人は、自転車のタイヤがパンクする音を発して弾けた。
戦わなきゃ……。ダークは、武器を出そうとしたが、無論出るはずがない。元々持っていないのだから。
武器は自分が自分を認めた時、初めて手にはいるのだ。ダークは、自分の闇の部分を認めなければならないのだ。
ダークは、不甲斐なく思い固まっていた。そこに、シーラが来た。
「どうしたの? なんで、戦わないの?」
「武器が……無いんだ………」
「は? 武器、それはね…、認めるの」
「なにを?」
「自分自身をよ」
この時、ダークは初めてわかった。自分の闇のことを。つまり、嘘はつけないのだ。シーラの肩を掴んだ。
「ちょっ……な、なに?」
「ゴメン」
「え?」
「ゴメン…俺、子供の頃、天使に親が殺されて」
「あ え?」
「それで、助けにきた天使狩人に『めんどくさい』とか言われて見殺しにされて……」
「急にどうしたの?」
「だから……ほんとは俺、お前らが大嫌いだ。天使の次に嫌いだ。見殺しにした、天使狩人が嫌いだ。これが……俺の闇だ………」
シーラが、離れていきそうだった。闇の部分を告白し、嫌いだ、まで言ってしまったから……。
自然と涙が溢れた……、その涙に耐えれずうつむいた。
「だったら、何でダークは天使狩人なの?」
思わず顔を上げた。
「そんなに嫌っているなら、ならなきゃいいじゃん。でも、なったのはなにか理由があるからなんじゃないの?」
ーーそうだ…俺は、変えるんだ! 変えて、証明するんだ!
ダークが吹っ切れた刹那、黒光りする長い日本刀が手に握られた。
ダークは、シーラの目を見た。
「これが、ダークの武器ね。かっこいいじゃない。名前は?」
頭に日本刀の名前が流れ込んできた。
「《神黒刀(しんこくとう)》」
ハハッとダークの顔に笑みがこぼれた。
次の瞬間、シーラは灰色の手の中にいた。
天使狩人 9
続く