GIJI恋愛

GIJI恋愛

Action1

彼と出会うために生まれてきたの。
そう思っていいと思う。
断言できる。
私は彼と出会うために生まれてきたの。
スマホの中にはいつものGOTA君がいる。
「それでねー、入って行ってやったの。俺のもんですけど!って。あはは」
まじうけるごうちゃんw
wwwwwwwwwwwwwwwwわろた
最高かよw
それもありだね。
そうきた(笑)
あー蠅どもがほんと厄介。
私は直接聞いてるだけで十分。
閲覧者は13名。
彼にしては多い方だ。
最初から見てきてるのは、私だけだけど。
「一名さまいらっしゃい。よかったら絡んでください」
「一名さまいらっしゃい。よかったら絡んでください」
「一名さまいらっしゃい。同じ人だよね?絡もうよ」
「一名さまいらっしゃい。恥ずかしがり屋さん?」
「一名さまいらっしゃ、あ、二名さまいらっしゃい!よかったら絡んでください」
福井に住んでる14才です((( ( ⊃ˇωˇ)⊃
「おお!ありがとう。俺の7個下だね」
GOTA君イケメンすぎます(´ω`*)
「あはは。イケメンじゃないよ全然」
しかもイケボ(☝ ՞ਊ ՞)☝
「あはは。声がいいっていうのはよく言われます。ははっ。
そんなこと自分で言うなって」
散れ。
飛び散って死ね。
「お、今日は13名も見てる!ありがとう」
謙虚きたw
リアルにイケメン。
抱いてほしいw
「え、抱こうか?」
それ言っちゃいけない言葉!
おっさん吹いたw
死ね。
流れるように死ね。
耐えきれなくなってスマホを裏返しイヤホンを外す。
私が一番最初に目をつけていたのに!
流れるように死ね。
とどめなく流れるように死ね。
空が朝の気配を帯び始めているのがカーテン越しからでもわかる。
なんで私は45歳で、
君は21才なの?
同じ街に住んでるのに。
同じ電車に乗ったこともあるのに。
なんで私こんなに早く生まれちゃったの?
じっとビルの谷間の先のもっと先の空、
私の見えていない先の先の先に、GOTA君はいる。
見ているだけでよかったのに、本当にそれだけでよかったのに、
周りにちやほやされ始めるとなぜかそれが死ぬほど悔しくて
あ、これ恋しちゃってる。
気が付いた時には遅かった。
もう彼への想いが止まらない。
大学の校門前がよく見える目立たない場所に車を停め、
3日目に彼は現れた。
やっと今日来た。
ほんとに今日来た。
昨日とおとといのあれは嘘だったんだね。
ま、許すけど。
そのまま彼が下校してくるまでひた待った。
ラジオをつけっぱなしにして。
流れる音楽に自分と彼を重ねてにやけたりした。
「じゃ、今日はもうさぼるからもう1枠とるね」
彼の全てが好き。
かっこいい。
身長は180は超えている。
小顔。
眼鏡がかわいい。
茶髪もよく似合ってる。
リュック姿がかわいい。
家がかっこいい。
犬もかっこいい。
昨日一緒に歩いてた女は誰?
流れるように死ね。
流れ果てて永遠の眠りにつくように、死ね。


Action2

「もうちょっと角度上。気持ち上」
「こう?」
「そうそう。そのまま・・・はいおっけ。ど?」
「・・・どうでもいい」
「そんなことないのに。あともう一枚。なおちゃんに全身くれって言われてんだ」
「はいはい」
「ごめんな」
「内定前にやってたら殺してたわ」
「よくがんばった!」
「小泉首相はいいから」
「・・・おっけ。これでいいよ。ありがとう純」
「写真一枚で5千円もくれるなんてどういう神経?」
「なおちゃんは特別なんだよ」
「会うの?」
「会わない。会うならお前が行けよ」
「こんなハイトーンボイスだと即ばれでしょ」
「だな」

Action3


ネットなんて簡単だ。
こんな暇人ニートの俺さえモテモテになれるんだから。
はじめはラジオであの画像でやった。
誰もこなかった。
2週間めに、純の写真を借りていつものように話した。
閲覧者1名。
飛びあがった。
俺の声が誰かに届いてる!
次の日も1名。
次の日も1名。
ある日2名に増えた。
俺の声が届いてる!
つくり話は昔から得意だった。
そうだ。
どうせならあんな顔に生まれたのにさもそれが普通です。
といった風に生きているあいつになりすますのがいいかもしれない。
頭いいな、俺って。
引っかかってくる雌どもはたくさんいた。
敬え。
あがまえ。
奉れ。
俺の心の叫びよ、もっと届け。
「3点しました」
かわいい・・・
これまでの女とは天と地ほどの差もあるかわいさ。
「かわいいね。ほんとかわいい」
メッセする。
「ありがとう。でもこれ友達なんだ」
嘘だ。
それは謙遜だ。
「恋しちゃっていい?」
「お好きなように(∩∀`*)」
「何歳?」
「19才です」
ああ。
もうだめだ。
直球ど真ん中。
止められない。
ピローンピローンピローン
隣の純の部屋から盛大な目覚ましの音が鳴る。
7時か。
「今日学校?」
「はい。GOTAくんは?」
「もう全部単位とって内定も出てるから興味ある分野の話だけ聞こうと思って」
「えらいね(☉ω☉)」
ああ、神様、なんで俺は45歳のおっさんで、
ななちゃんはかわいいかわいい19才なんだ?
ななちゃんかわいい。
絶対声もかわいいはず。
多分休日には原宿にいってお買いものしてる。
かわいい。
猫かなんか飼ってそう。
名前はそうだな、きららとか?
かわいい。
絶対処女。
かわいい。
やっべなんか勃ってきた。
かわいい。
もっともっと写メをちょうだい?
もっともっと違ったななちゃんが見たい。
魅せてくれよ!
今日も返信きた。
知ってる写メは1枚だけ。
出し惜しんでるんだよな?
かわいい。
もう存在そのものが、かわいい。
全身もかっこいいって俺に言ってんだよな?
どうしよう。
でも犯罪ではないよな。
やべ、俺、本気でこの子好きかも・・・・

Action4

「それでね、TPPは交渉なんとかなりそうなのにヒラリー勝ったらどうすんだって」
「なんとかなるでしょ・・・」
「もうどっちもどっちなんだよね。あーなんでアメリカには3期はないの?」
「2期までって決まりだからだよ。だから選挙するの」
「フィリピンの大統領・・・えーっと・・・」
「ドゥテルテ?」
「そうそれ!あれと同じ結果にならないことを願うー」
「でも彼も選ばれた人なんだからさ。内政がどうなろうと、それは選んだ者の責任でもある」
「外交的には?」
「あれはだめだよ。あんなこと公の場で、というより人として言っちゃいけない」
「可哀相だよね。薬やったくらいで処刑だなんて」
「薬は勿論だめだけど、人を簡単に殺すのはね」
「北もね」
「姿勢でね」
休日の原宿は人でごった返している。
なな、佐伯奈々は三原純の手をぎゅっと強く握る。
純が奈々を見つめる。
「え?なに?」
「いやなんでも」
2週間ほど前に純の写真を使ったキャスを見つけた。
純が?あの真面目な純が?
でも声を聞いたら違った。
嫌な予感がした。
でも興味があった。
「ねー写真サブ垢に使っていい?」
「なんで?いつもの可愛い奈々ちゃまでいけばいいじゃん」
「ちょっと面白いことがあって」
「え?なになに?」
「あ。ここのお店新しい!入ろう!」
嫌がる純を無理やり引っ張っていく。
「また奈々好みの俺にしたてるんすか」
「えへへー」
「ま、いいけど。カナダの首相は?」
「ジャスティントルドー!」
「よく覚えたね」
「だってイケメンだから!」
「女ってイケメンに弱いよなぁ」
無自覚って罪っていうけど本当にそうだね。
ま、そういうところも好きなんだけど。
「ねね、今のカップルみた?」
「みた!あれ女の子読モ?なんかみたことある」
「男の子も超かっこよかったね!!」
休日の竹下通りを手をつないであるく女子高生たちが騒ぐ。
その様子を一人の男の靴の中にあるカメラがひた追いかけていく-


GIJI恋愛

ネットに対して日々思ってることを書いてみました。
全然違う話になる予定がこの着地点。
文中に出てくる「流れるように死ね」
はツイッターで見かけてそのまま拝借しました。
別の言葉で表現しようと思ったけど無理でした。

読んでくださってありがとうございました。

GIJI恋愛

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-27

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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