木目
じいちゃんが昔
ぼくに言ったんだ。
木に目があるのを知ってるか?
ぼくは、しらない、とこたえた。
そのあと、じいちゃんは「木目」
という言葉を教えてくれた。
木の板の、
みょ~んとのびた、その線。
ぶつだんでふわふわ揺れる、
ろうそくの炎にも似たその模様。
じいちゃんの言うとおり、
たしかに目にみえて。
それはたしかに「木の目」だった。
木の神様が、見ているんだよ、と。
じいちゃんは言うけれど、
ぼくは怖くて、怖くて。
トイレにも。寝るとき見上げる天井にも。
横になったときの目の前の壁にも。
そこかしこに木の目はあって。
じいちゃんは、見守ってくれているんだよ、
と言うけれど。
ぼくは本当に、本当に怖かったんだ。
じいちゃん。
じいちゃんは、木がとっても大好きだったね。
ある日、じいちゃんのまなざしに
とてもよく似た木の目を見つけたら
ぼく、怖くなくなったんだ。
じいちゃん、今日もぼく頑張ってるよ。
元気だよ。
ちゃ~んと、見ててね。
木目