木目

  じいちゃんが昔

  ぼくに言ったんだ。

  木に目があるのを知ってるか?

  ぼくは、しらない、とこたえた。

 
  そのあと、じいちゃんは「木目」

  という言葉を教えてくれた。

  木の板の、

  みょ~んとのびた、その線。

  ぶつだんでふわふわ揺れる、

  ろうそくの炎にも似たその模様。

  じいちゃんの言うとおり、

  たしかに目にみえて。

  それはたしかに「木の目」だった。


  木の神様が、見ているんだよ、と。

  じいちゃんは言うけれど、

  ぼくは怖くて、怖くて。

  トイレにも。寝るとき見上げる天井にも。

  横になったときの目の前の壁にも。

  そこかしこに木の目はあって。

  じいちゃんは、見守ってくれているんだよ、

  と言うけれど。

  ぼくは本当に、本当に怖かったんだ。


  じいちゃん。

  じいちゃんは、木がとっても大好きだったね。

  ある日、じいちゃんのまなざしに

  とてもよく似た木の目を見つけたら

  ぼく、怖くなくなったんだ。


  じいちゃん、今日もぼく頑張ってるよ。
 
  元気だよ。

  ちゃ~んと、見ててね。

木目

木目

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-26

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