sweet magic*
お菓子の国のお姫様メルが転校生の男の子が気になり始める…。
鳴りやまない心臓を抑えながらその人と話しているうちにもっともっと気になる存在へとなっていく。
~お菓子の国のお姫様が男の子に初めての恋をする物語~
ここは甘い匂いが漂うお菓子の国。
文字通りすべてがお菓子で出来ていてみんな幸せに暮らしている。
庭で掃除をしながら空を見上げてみると海のようにきれいな青空が広がっていた。
そのままお嬢様の部屋がある2階の片隅にあるカーテンが風に揺れていた。
ふと時計に目をやるともうそろそろお嬢様を起こさなければならない時間となっていた。
私はほうきを置いて慌てて2階に駆け込む。
「お嬢様、お嬢様。もうそろそろ起きなければ遅刻しますよ!」
ドア越しから言うがお嬢様の反応はない。
僕は「失礼します」といいながらそーっとドアを開ける。
お嬢様はぬいぐるみがたくさんある大きなベッドで寝ていた。
「お嬢様、お嬢様っ」
「うーん・・・何ですの?あめ。」
「メルお嬢様、学校に遅刻なさいますよ?」
お嬢様はしぶしぶ布団から出てだるそうに立ち上がる。
お嬢様はそのまま部屋の隅にあるドレッサーの前に座って髪を整える。
僕はその間お嬢様のお食事の準備をしていた。
お嬢様は髪を整えた後、優雅に椅子に座る。
「いただきますわ。」
「どうぞ。」
お嬢様は嬉しそうにほおばっていた。
僕もなんだか嬉しくなってにこにこしながらお嬢様のそばで見守る。
そうして食べ終わると制服に着替え学校に行く準備をなさる。
お嬢様は高校2年生の16歳。学校は「私立 華音山高等学校」。
お菓子の国にある高校の中で一番の名門校となっている。
「行ってきますわ。今日もご飯おいしかったですわ。」
そういってお嬢様は学校に向かった。
僕はお嬢様を見送った後「忙しい、忙しい」と言いながら後片付けを始めた。
ーそのころのメル…
私は、甘野月 める。
メルはトコトコと上品に学校に向かっていた。
しばらく行くと正門が見えてきました。門の前には色々な使用人が主を見送っています。
「ごきげんよう、メルさん」
「ごきげんよう、ここあさん。」
いつもおしゃべりをしている「白鳥 ここあ」さんに偶然出くわして肩を並べて歩く。
今日は恋のお話。
「メルさんはお好きな方とかいないんですの?」
「そうですわねぇ…今のところそういう方はいらっしゃいませんわ。」
「そうなんですの?メルさんお顔お綺麗なのに。たくさんの方がメルさんに夢中ですわ。」
「私じゃないですわよ、きっとここあさんですわ。」
と他愛のない話をしているといつのまにか教室の前だった。
ここあとは残念ながらクラスが違う。お互い肩を落としながら名残惜しそうに手を振る。
ここあを見送った後メルは自分のクラスの扉に手をかけそのままゆっくりと開ける。
「わぁ~!メルさん!ごきげんようっ」
「ごきげんよう、ショコラさん。」
「ごきげんよう!メルさん!」
「ごきげんようですわ、イチゴさん。」
メルはクラスの人からたくさん話しかけられて今日も人気者だ。
メルはお菓子の国一の美人でお金持ち。性格も優しくて、思いやりがあって上品だ。
メルは女の子のあこがれだった。
メルの席は窓側の後ろから2番目の席。
カバンを置いて教科書をしまっていくと奥に何かがつっかえていて教科書が入れられなかった。
そこで教科書をいったん机の上に置いてから机の中を手で探った。
「…?なんですの?」
ようやく見つけて手を机の中から出して〝それ″を広げる。
そこにはきれいな字で「#メル様へ」と書かれて気になって先を読み進める。
『#メル様へ
あなたに一目ぼれしました。
よかったら放課後中庭でお茶しませんかっ』
と書かれていた。メルは頭を抱えて丁寧に折ってから机の中に再び戻す。
メルは悩んでいた、どう断ろうかと。こういう手紙が初めてなわけではない何度もある。
ーキーンコーンカーンコーン
チャイムが頭上で鳴り響き慌てて授業の準備に取り掛かる。
何とか先生が来る前に準備し終えてほっとしていると次の先生の言葉に耳を疑った。
「今日は1人転校生が来ます。どうぞ、入って。」
ざわざわと教室内が少し賑わってきたのと同時に1人の男の子が緊張気味に歩いてくる。
見た目は、短髪で優しそうな眼、そして何よりとても背が高かった。
「桜音 海(さくらね かい)です、よろしくお願いします。」
少しドキドキしながらもはっきりとした口調で自己紹介をする。
「じゃあ、席は甘野月さんのお隣よ。」
「はい、」
そうしてたくさんの視線を浴びながらメルの隣の席へとやってくる。
「甘野月様、よろしくお願いします。」
「よ、よろしくお願いしますわ。」
メルの心臓はドキドキと鳴りやまず思わず胸を抑えるがいくらたっても鳴りやまなかった。
(な、なんですの?私病気になってしまったんですの??)
メルは初めて感情に戸惑っていた。
メルはチラッチラッと隣の席の男の子を見つめていた。
男の子は少し困った顔をしていた。メルは慌てて視線をそむける。
「あの~…」
「ふぇ!?な、なんですの?」
「僕今日転校してきたばっかりで教科書とかないので見せてほしいんですけど…」
「構いませんわよっ」
じゃあ…と言いながら海は机をメルのほうへと寄せる。
メルは驚いて口を魚のようにパクパクと何度も繰り返すだけだった。
「あああああああああ、あの・・・・・っ」
「なんですか?」
「きょ、距離近くないですのっ!?」
「あ、すいません…じゃあ離しますね、すいません。」
「あわわわわ(汗)ち、違うんですのよ、見せますわよっ」
「…?」
海の頭の上には??マークがたくさん浮かんでいた。
一方メルはそんなことに気にしてる場合ではなくただ頬をほんのり赤く染めて慌てているだけだった。
「あのっ…」
「はい、?」
「私のことは、メルでいいですわ。海さんってお呼びしてもよろしいですか?」
「はい、よろしくお願いします。メルさん。」
そういってにこっとメルに笑いかけた。
メルの心はもう海でいっぱいだった。
「海さん、お友達たくさんできたらいいですわね!」
「そうですね、でも最初の友達がメルさんで嬉しいです。」
sweet magic*