朝、目が覚めると窓の外は大雨だった


 こんな日はちょっぴりセンチメンタルになる。
せっかくの日曜日の昼だっていうのに、外は雨。

 「もしもし?私だけど、これ聴いたら連絡ください」
留守電を私は電話の目の前で体育座りをして聞く。
留守電の主は学生時代の友人だ。
 今日は旧友たちと渋谷へランチに行くはずだったのだが、あいにくの雨。

こんな日は出かける気にもならなくて、かといって友達に謝罪の連絡をすることも億劫で、本当に我儘な人間だと認識する。
彼女たちも私の性格を知っているのか、集合時間を1時間以上も過ぎているのに先ほどの留守電以外なんの連絡もなし。

それはそれで寂しい気もするが、もう行かないと決めたのだから、あまりしつこく連絡されるのも嬉しくない。

 私はあまり雨が好きじゃない。というか、雨は嫌いだ。
雨が降ると全ての計画が台無しになる。
遠足や運動会、修学旅行。
学生の頃から雨は嫌いだった。

雨が降ったから学校を休む。なんてことはしょっちゅうあったし、そのたびお母さんに
「そんな理由で学校休んじゃダメでしょう」
と怒られた。けれどお母さんは無理に学校に連れてこうとはしなかった。
 どうやら私の周りの人間は私のことをよく理解してくれているようだ。

 友達との約束をドタキャンしたくせに、家にいてもすることがなくて嫌になる。
これもまた雨が嫌いな理由だ。
換気できないから掃除はできないし、洗濯もできない。
誰のせいにもできないから私は一人で怒る。

 本棚に並んである中から、西加奈子の きいろいゾウ
の文庫本を手に取る。
 高校生の時から繰り返し繰り返し読んでるから、もうボロボロになってしまっている。
 読書に集中すると、雨の音が聞こえなくなってきて、なんだか安心する。

 本を読むというのもちょっぴり飽きてきて、読書に集中できなくなると、また雨の音が聞こえてきて寂しくなるから、嫌だなぁ。と感じて。
 なんとなく昔交際していた人に連絡がとりたくなった。
驚いたことに破局してからもう2年経つというのに、電話番号をまだ暗記していて
 あぁ、私はまだ彼のことが好きなんだなぁ。って思う。

 彼は6回目のコールで「もしもし?」ってでてくれて
私はその低くて落ち着いた声を聴いて涙がでそうになった。

彼は私が目的もなく電話かけたことを知っているから、わざわざ
「なんか用?」
って聞くこともないし、かと言って自分勝手にぺちゃくちゃ喋ろうとしないから、その静かな電話独特の雰囲気が私を凄く落ち着かせる。

 「私、雨嫌い」

静かに私がそう言うと

「うん。知ってる」

なんて優しい声で答えてくれるから、私は簡単に2年前のことを思い出すことができる。

とても優しいセックスをしてくれた彼は、一通りの行為を済ませた後に必ず、私の大好きなオレンジジュースを冷蔵庫からだしてきて「ずっと一緒にいような」って相変わらず低い落ち着いた声で言ってくれた。

 私は泣き声を聞かれたくないから
「ありがとう」と言って電話を切った。
 私はまだ彼のことが好きだし、彼もきっとまだ私のことが好き。
だけどきっともう会うことはないだろう。

 私はどうしようもないくらい大声をだして泣いた。床に涙や鼻水がこれでもかってくらい落ちて、なんだこれじゃあ家の中も外も大して変わらないじゃない。
なんて思って窓のほうに目をやると 雨はとっくにあがってて、太陽が街を照らしてた。

 私は「今さら、遅いわ」なんて思いながら、「今どこにいるの?」なんてメールを旧友に送る。

 雨は嫌い。

こんな日はちょっぴりセンチメンタルになる。

短編小説です。 まとまりのない文、ないオチ。 でも頑張って書きました

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-28

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