名前を持ったその思い

名前

今日も言葉ばかりが生まれ、距離は少しも縮まらない。

今日も涙ばかり流し、言葉は1つも届かない。

そんな日々に名前をつけたら、永遠にこの地獄から抜け出せないことも、貴方にこれまで通り会うことも出来ないということも、全て知っていたのに。

私は、どうして、名前をつけてしまったのだろう。

貴方の名前を呼べない寂しさを、この苦しみに名前をつけて慰めているのだろう。

貴方は1つも知らない。

言葉に埋もれて涙に溺れて狂おしいほどに貴方の幻影に焦がれていることなど。

今日も、明日も、これからずっと、貴方は知ることはないし、どうか知らないでいて欲しい。

名前を持ったその思い

自分の気持ちに、名前をつけて、それから慌てて「無し」と言ってももう遅かった。

付けた名前はココロの深淵に届いてあっさりと受理されてしまった。

これにより、アタマでどれだけ言い訳をしても、偽装を重ねても、ココロはアタマの言うことなど全て知らん顔。

名前を持ったその思いは真実であり、必死の隠蔽も無駄であった。
名前を持ったその思いは、ココロで大きく育ってゆく。

持ち主が苦しみを訴えても、我関せずと、歌を歌って、踊りを踊って、言葉をザクザクと産み出してゆく。

持ち主は、ただ1人で、その名前をつけた思いを持て余しているのだ。

苦しい苦しいと、悶えながら、それでも甘やかな終わりをずっと夢想しているのだ。

名前を持ったその思い

名前を持ったその思い

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-22

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