澄ませる時期に向う頃

縦に並んだ氷が融けて
個数の区別をきっとやめても
何かを思った雨粒が
傘のアーチをなぞっても



跳ねた滴の数の分だけ
鏡がちょっと曇りになって
降った雨脚と水面の間で
時間が小さい頃になっても。



雨の降った日の部屋で
タンという一音が聴こえたから。



本の栞が閉じた頁で
お話と涙が一緒になっても
数行先の未来の中で
きっかけになる透明になって



初めて描いた朝顔の
双葉に乗った朝露に頼って
薄く明けてく雨の中で
画用紙だって買いに行って。



H2Oの化学式が
不思議な気持ちを覚えさせて
晴れ間に触れた水飛沫が
水鉄砲ではしゃいでいても



梅雨の終りがまだ先で
雨音の中に包まれて
アスパラガスの手触りが
雨のテーマと関係してても。



タオルで拭った後にだって
吸い込まれない気持ちがあるから。



乾かす髪の時間になって
書き忘れたメモを思い出して
零れる晴れ間を部屋に入れて
澄んだ空気と手帳を開いて



水と巡りを感じていって
傘を持って出かける前に
サボテンに一寸の水をかけて。



深い息継ぎに耳を澄まして
とくんと巡るものもあって。

澄ませる時期に向う頃

澄ませる時期に向う頃

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-06-27

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