泡のように消えて

30年振りの同窓会、付き合っていた彼とのピュアな時代を思い出す、そんな彼に会い主人公はまたあの頃の幸せを思い出す。

一晩だけでいいから思い出を

「中学の同窓会の案内が届いてるよ」この春から大学を卒業して就職した長男がテーブルの上に置く
実家に住所を聞いて送って来たのであろう同窓会案内通知は旧姓ではなかった。
中学を卒業して30年
私もいい感じに歳を取って来ている
気になる事と言えば夫婦での老後と健康ばかり

「中学かぁ懐かしいなぁ〜」私はすぐに当時付き合っていた彼を思い出した、
元気にしてるのだろうか?彼は来るのだろうか?
懐かしくピュアな思い出が頭の中を回想シーンへと描いて行った。

参加してみようかな、、、
同窓会参加に丸をつけ投函!少しでも綺麗に見せなくてはとその日から自分磨きに励む、気持ちがワクワクして嬉しくて楽しかった。

会場は同級生が経営している小さな旅館
入口には第6期甲川中学同窓会と記載されてあった
私は中学を卒業したと同時に他県の高校へ進学し
大学へは行かず就職
その時知り合った主人とスピード結婚し今は県外で暮らしている。
今日は30年振りに会う同級生ばかりで正直怖かった、受付に見覚えのある顔が笑顔で挨拶を交わしていた、「久しぶり〜元気にしてたぁ」
30年経った同級生はいくらか体型が変わっているいったい誰なのか分からない人もいた、中には目立たなかった人がとても輝いていたりと不思議な感じでした。私はドキドキしながら受付へ向かう
名簿に名前を記入し旧姓バッジをもらい決められた席へ着く。
久しぶり〜から始まり何人もの同級生と懐かしい挨拶と会話を楽しだ

私は彼がいないか目で追った。
まだ来ていないようだった、

私は人気者の彼が大好きで男友達の力を借り盛り上げてもらち無理矢理付き合ってもらったような感じでした、私達は特に何をする訳でもなく一緒に登下校するだけでした。
それでも私は幸せで毎日が楽しかった。
そんな私達も高校受験になりお互い会う時間もなくなり別々の高校へ決まり自然消滅のような形で
私の恋愛も終わった。

「潤〜」
私の耳の中で名前が響いた!
彼が会場へ来たのだ、私はそっと目を彼に向けた
優しく柔らかな雰囲気は全く変わっていなかった、
むしろ素敵なオーラが彼を覆って全開でした。ドキドキしたのと胸が苦しくなった。

彼は同級生と挨拶を交わし盛り上がっている様子
なかなか私に気づいてくれない彼の周りには女達が群がっていた。

私は自分で挨拶へ行く勇気もなく気づかない振りをし隣の席に座っていた友達と話し込んだ。
プライドと呼ぶのだろうか私は彼から話しかけてくるのを待っているという最低な女になっていました。まもなく同窓会も始まり、司会進行役が懐かしき中学時代の私達の写真をスライドで流し始めた。
会場の盛り上がりはピークに達し皆がそれぞれに席を移動し懐かしい話や現在の話に盛り上がっていた。

「中山さん」
声を掛けてきたのは彼がだった、笑うとなくなる垂れた目が何とも懐かしく爽やかでした。
そして私を呼ぶ名前は変わらず…

「お久しぶり!元気にしてた〜」
彼があまりに見つめるので私の顔は恥ずかしさで引きつっていた。

「中山さん今どこに住んでるの?」
初歩的な質問から始まりそれに答える。
「結婚はお子さんは?」
「何か綺麗になったね!」
私はそれに淡々と答えそして同じ事を質問する。
彼はは今アメリカ在住らしく子供も2人と自慢げに話している。

「潤君は全然変わらないね〜」
「え〜そう?だいぶおじさんになったけどね〜」と少し肉のついたお腹を指差し笑いを取ってきた。

お互い多くを語らず初歩的な会話で何だかぎこちなく時間があっという間に過ぎた。

同窓会も終わりに近づき二次会へ行く話で盛り上がる、「中山さんは行くの?」彼が聞いてくる
「潤君も行くの?」
私は彼が行かないのなら私も行かないと決めていた。

「行くよ、一緒に行こうよ」
その言葉に私の胸はキュンと熱くなりドキドキし始めてきた。

二次会でも彼はみんなから囲まれ人気者で
私は隅の方で嫉妬すら感じるつまらないものだった

嫉妬、私は本当にそんな自分が大嫌いだった
彼と自然消滅してからもずっと好きで好きで
引きずっていた。彼に彼女が出来たと聞いた時本気で泣いた夜もあった、そんな未練がましい自分が大嫌いだった。そして、今も、、、

このままで今日は終わるのか?
それだとつまらない!
私は素直になろうと決め彼の方へ近づき2人で話さないかと誘った。

彼は笑顔で答える
「いいよ、何か飲み物いる?座る?」優しく気遣ってくれる彼に甘えてみて少しわがままになってもいいのではないかと思った。
結婚して20年、主人には特に不満もなく逆に幸せにしてもらっていた方だと思う。
でも、彼を目の前にしあの時のピュアだった気持ちが蘇って来て何とも言えない気持ちになっていた。

「相変わらずの人気者ね、そう言えば私が潤君と
付き合うとなった時、私は殆どの女性を敵にしたのよ〜」
「そうだったの?ごめんね」

実際それがきっかけで私は同級生女子から睨まれ無視されるまでになっていた。
でも、逆にそれが誇らしくて私は嫌じゃなかった

「俺、最初中山さんのこと友達以上恋人未満だった、でも一緒にいるようになり好きになった」

少しの沈黙があり彼と目が合った
「私はずっと好きだった!」
不思議とすんなり言葉が出た。
彼の表情は少し強ばったように感じた。

「でもあの時、俺ら自然消滅みたいな感じで別れたもんね、いい加減な形にしてしまってごめんね、でも俺のファーストキスは中山だしでもてないよ」

「えっ?ファーストキス?私も潤君がファーストキスだったよ」

意外だった、男の人もファーストキスは大事にするのだと…何だろう不思議

彼は優しい垂れた目で私を見つめてくる
彼は私が未だに自分の事が好きなのでは?
と思い自信に満ちているそんな表情をしていた。
いいじゃないそれで!
私は今夜だけはといいじゃない!と思った。

「ここを出ない?」
その言葉を待っていたかのように私は頷く。

同級生何人かに冷やかされながら私達は外へ出た
何だか気持ちがいい、嫉妬が私の背中へ突き刺さる感じが懐かしく気持ちがよかった。

私達は中学の時によく歩いた川の土手を無言で歩く
無言でもいい、私は当時を振り返り顔がにやついていた、真っ暗だし見られてはいないだろう

「ここ覚えてる?」
「うん覚えてるよ」
「俺らが初めてキスした所だね」

胸の鼓動が聞こえるのではないかと思うぐらいドキドキが止まらなかった。

沈黙が流れ彼の顔が私の目の前へ
私は優しく目を閉じた。

あの時と同じ!あの時と同じ感触!
あの時と同じ香り!

私は抱かれてもいいと本気で思った。
不倫と呼ばれるかもしれないけど今夜だけなら
いいと思った。

彼の手が優しく顔を包み込む
激しく絡んで来るキスを心から受け入れた
嬉しくて幸せだった。

「いい歳のおじさん、おばさんが何だか変だね」

笑いながら私の手を引き歩き出す。
何という素敵な時間なのだろう、まるで映画に出てくるワンシーンみたいだと私は愛に浸っていた

私達は古びたホテルに吸い込まれるように
入った、いい歳をした2人がラブホテルだなどと
笑われるかもしれないけど私は構わない

優しく垂れた目で私を見つめてくれる
そして優しく私の体を包み込む。
何もかもがピュアで優しかった。

「ごめんね、こんな事して旦那さんに悪い事をしてしまったね」

「私の方こそ奥様大丈夫?」

私は今夜だけでいいから、今夜だけでいいから
あの時の私達になりたいとお願いした。

彼は何度も何度も私を抱いた!
そして何度も何度もキスをした。

そして、私達は今夜限りの愛を育んだ。
いつ会えるか分からない今夜だけを大事に大事に。

彼の背中を見つめ「さよなら」と
発した瞬間泡となって消えた。

泡のように優しくピュアで美しく

泡のように消えて

私達は一晩だけの思い出を作った、それは世間からしたら不倫かもしれないけど私は続編だと思った。

泡のように消えて

でも今夜だけなら構わない

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-18

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