限界点
雨の日も風の日も。
来る日も来る日も。
彼は支え続けて来た…
戦いに敗れたあの日からずっと。
もうどれくらいの時が流れたのだろう。
この罰に終わりは無いのか…
ずっしりとした重い罪が彼を常に苛んでいた。
休むことは許されない。
この罰はいつまで続くのだろう…
ある時彼は気付いた。
彼を罪人にした「彼」が居なくなったことに。
でも本当に居ないのだろうか…
どこからか、自分を見張っているのでは無いのだろうか…
その考えが彼の忍耐力を奪い始めた。今まで耐えてきた罰のなんと過酷で苦しかったことか…
それから幾日か経った時。
彼はもう自分がこの罰を耐える力を失なったのを知った。
こうなったらもうどうなってもいい。
「もう、うんざりだ!!」
そう叫んで彼は肩に担いでいた球体を、じわりじわりと肩から下ろし、そして、添えていた手を放した…
球体は暗闇の中に吸い込まれて行った。
※
彼の名はアトラス。
ゼウスと戦ったティターン族である。
ゼウスとの戦いに敗れた後、地球という天体を肩で支える罰を与えられていたのだった。
※
「司令部に繋いでくれ」
太陽系の観測をしていた艦隊の乗組員が、モニターに告げた。
「定時連絡か?」
モニターの向こうで司令部の係員が尋ねた。
「ああ、変化が起きた、太陽系の惑星のひとつがブラックホールに吸い込まれたんだ」
「…詳細を述べよ」
こうして20XX年、地球は消滅したのである。
限界点