雀とカメラ

雀はフィルムで眠る

何時からだろうか?キミの写真が笑わなくなったのは。
僕はカメラのスイッチを押してキミを撮った。それは簡単な事でキミの笑顔が好きだったからだ。何処にいるときもニコニコと微笑むその表情は雨の日でも風の日でも快晴の空と命を育む太陽の存在だった。
でもある日。キミは僕がシャッターを押すたびにひきつった顔を見せ始めたね。気付かないふりをしていたけども、結局その時から始まっていたかもシレナイネ。
一枚、一枚がそれを証明していた濁りなんだと。

「鹿嶋先輩」
スズメの声がする。と言うよりもスズメだ。可愛い部類に入るがちょっぴり地味な小鳥。
まぁでも僕は無視をした。眠いんだ許してくれ。そうしていると再びスズメは鳴いた。
「鹿嶋先輩!起きてください!もう部室閉めますよ!」
大声、と呼ぶよりも怒鳴り声に近い威勢あるスズメは鳴いて僕の伏せている頭を呼び起こした。
「いたたた! よせよせ、起きているから、そんなに引っ張るな!」
僕はスズメらしかぬ強健な腕力の少女に向かって言う。
「やっぱり、起きているんじゃないですか!だらだらしないで下さい帰りますよ!」
眼鏡をかけ、おさげの女の子は強気な口調で文句を吠えた。
僕は眠気が覚めて「はい、はい、帰りますよー。ではまた明日ね」あくびをして返事を返す。
そうした後、僕は空の鞄を持ち上げ帰ろうとして、椅子から立ち上がりドアをガララと開けた。
「私も帰ります」
眼鏡の少女も小さな声で言った。

僕は夕焼けの赤いプリズムを網膜に焼きながら廊下を歩く。その隣で少女も歩いていた。
そうしてスリッパの乾いた音を消す様にして眼鏡の少女は口を開いた。
「鹿嶋先輩」
「どうした」
「ださないんですか?」
「何を?」
「写真展にです」
スズメは時にふっくらと膨らむものだ。その様にして眼鏡の少女は「鹿嶋先輩はもう写真は撮らないんですか?」真面目な顔で真面目な表情で言う。そんなものだからか僕は頬をぽりぽりと掻いてしまう。
「そうだな。撮らないかな」
目を床に伏せて答える。すると少女は「どうしてです!私、生まれて初めて観ました。鹿嶋先輩の撮った太陽の様に笑う少女の写真!あんななに素晴らしい作品!忘れられません。あの時から、私は…」
僕は歩くことをやめて立ち止まった。
「何時見たんだよ」
「この高校に入学する前です」
軽いため息を吐く。自然と出た生ぬるい息は眼鏡の少女の前で蒸発する。
「いやな思いでだな」
「だからもう写真を撮らないんですか?」
「先輩はもう三年生。だからお願いです、もう一度だけカメラを持って下さい」
廊下の窓の前に立って眼鏡の少女はそう言ってカメラを僕に渡した。
「別にいいけどさ」
僕は君に向かって構えた。
「え?え?え?」
「太陽の様に笑えるの?」

パシャ

眼鏡の少女は下を向いて頬を赤くしている。
「いきなり撮さないで下さい…」
すっと言葉は否定的な癖にそれとは対象に眼鏡の少女は少しだけ嬉しそうにニッコリと笑っている。その感情を隠しているのだ。
僕も思ってしまう、スズメの笑顔にしては最高に満点だと。
僕はまぶたをおろしてその瞬間をシャッターを押した。
「ふふふっ。鹿嶋先輩に撮ってもらえたぁー」
昔、そう言ってくれたキミを思い出して違う君が笑っているのだ。
いいきぶんなのか、わるいきぶんなのか不思議な気持ちだったが夕焼けの温い光は眼鏡の少女を一層、愛しく照らしていた。

雀とカメラ

雀とカメラ

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-17

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