京月夜/新作短歌
長き髪 貴人の白き指流れ
墨跡を見て思う月かな
御所の屋根 白き庭すみ 月映えて
大宮人の影や何処へ
【島原の月に】
島原の里に昇りし名月を
名花の膝のうたた寝で見ん
故郷の君に抱かれ明し夜の
月をば今は他人の傍ら
窓の月 心あらばや今一度
恋しき人に一目だけでも
【 恋月夜 】
東山 松ヶ枝越しに昇りくる
月よりもなお君が文待つ
肩衣を白き指にて閉じし女
立ちゆく縁に十五夜の月
去りゆけど月の満ち来るまたの宵に
忍びて入らん御簾の影へと
【 月の祇園 】
月の宴 好きなお方の前で舞う
白き化粧に心隠して
舞いながら扇の隙間に目をやれば
心ときめき三味の音も消ゆ
お月はん 今夜も合わせておくれやす
たんとお団子上げますさかいに
足早に座敷へ向かう柳影
今宵の空には十六夜の月
(また出来次第、筆者)
京月夜/新作短歌