分速3メートル 第1章 「時を超えた再会Ⅰ」

今となっては昔の話となっていたあの頃…そしてそれに歯向かう力はなく、手紙でも距離は埋められず…15年と言う時はあっという間に過ぎてしまっていたのだ…。でも…奇跡は起きる…。それを二人は知らなかった…。



 徹夜明けの朝、春の香りが気持ち良かった。中野坂上のアパートで作業を黙々と続ける。今日で今抱えている仕事はひと段落しそうだった。久々に歩いていた。代々木公園の桜を見て、昔通った参宮橋の踏切に差し掛かる。



 私はこんな日はと、思いちょっと散歩をしていた。井の頭線を乗り換え、小田急線に乗り、代々木公園へむかった、すると、参宮橋の踏切に差し掛かった



そして、誰かとすれ違った

昔知っていた人と似ている。そんな感触が二人を襲った。振り向こうとしたが遮断機がおり、二人の間を列車と言う鉄の塊が遮った。

 「長い」

僕はつぶやいた、身を半歩引いて、電車が通り過ぎるのを待った。もうすぐ、もうすぐ通り過ぎる。その瞬間もう一両の電車が遮った。

 私は、もうここにいても意味がないと思った。きっと向かい側にいる人もそうしてるだろう、と思った。仕方なく歩き始める。あれが誰かは解らない。でもいい、何かが漲った、それでいい、そう思うだけだった。

 ようやく通り過ぎた電車は、さっそうに去って行った。しかしそこには女はいなかった。

 今は、フリーのプログラマーとして働いているが少し前までは、会社にいた。彼女もいた。なのに、ある日突然、何かのプロセスが壊れた気がして、そして、自分の何かが壊れた。そう確信して、会社を辞めた。それ以来、調子はいい仕事も月二、三本は必ず入ってきた。そのおかげで生活に不自由することは無く、好きな時に仕事をして、遊んで、と言ったプロセスを自分なりに立ち上げることができた。

「それでいい、そしてそれがきっと何かの為になる。」

僕の思いは現実になりつつあった。

 最近は凄い、私はそう思い続けた。電子書籍の売り上げはこの半年でとんでもなく伸びた。ネットをざっと見ただけでも何件も出てくる。

「もう書店何てみんな潰れて全部タブレットやスマホの時代になるのかなぁ…。」

前に仕事仲間が新しいスマートフォンをみんなに見せながらつぶやいていた。そしてもちろん、私の勤めている会社もいやおうなしにこの関連の仕事を引き受けなければならなかった。もちろん仕事は火の車だ、周りを気にせずやるしかない。しばらくしてようやくプロジェクトは終わり、一段落した時の事、知り合いがよかったらお茶をしないかと誘ってきた。別に大した用があるわけではなく応じた。

 その日は、仕事は休みだったが雨だった。私はどうも雨が好きになれないと、思いつつ、渋谷のカフェでお茶をしたり、デパートで服を見たりしていただけだった。

 今日は仕事の打合せでたまたま渋谷に出ていた。貴樹は仕事に打ち込むことを悪い事とは思っていなく、日曜日だというのにわざわざ仕事を進めていた。いくつかの仕事が終わり、比較的暇な時期でもあったのもあったが、その日は何故か、昼過ぎに仕事は終わったのに、町をふらついていた。それでも、日曜日の渋谷は一人で来るのには雰囲気のわかない街だと思う。家族やカップルでにぎわう駅前で一人歩いているのはどことなくさびしい気持ちだった。

 友達と別れた後、どうせなのでと、夕食を食べて帰ることにした。明里は今を楽しみたいと十分におもっているからこそ、今こうして生活できているのだと、深く考えていた。評判のスパゲッティのおいしい店に入り一人でいるのも、さびしいと思うことは無かった。でもまさかここで、一つの時空を超えたような再会が待ち受けているとは知らないはずだ

 貴樹は珍しく外食をした。特に「珍しい」ことに意味はないが、彼は会社を辞めてから、決まって三食自炊する習慣ができていた。でも、今日外食したのは正解だと思っていた。おいしそうなスパゲッティをフォークに絡めるときの感触はたまらないものだ。 などどおもいつつ。一人で食べ、コーヒーをすすった。すると

 一人の女の客が入ってきた

分速3メートル 第1章 「時を超えた再会Ⅰ」

本編第一章です。更新がなくて誠に申し訳ございませんでした。 私のブログでも「分速3メートル」のその後が描かれた小説が掲載されていますので、ご覧ください…。

分速3メートル 第1章 「時を超えた再会Ⅰ」

  • 小説
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更新日
登録日
2012-06-26

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