平成ティラノ
コンマ30ハ虫類
しおのコナがついたそれはピカピカと光線をダシテ割れました。いや中からワリマシタ。殻があつい縞のはいったタマゴでした。
ペカ、ペカ、ペカと艶のあるひたいをてらしたミドリイロノ生き物がすがたをあらわしました。
がぎょんー!がぎょーん!
大きなコエデ鳴きます。さけびます。おくちから火のたまをポコポコとはきます。
ミドリイロノ恐竜のあかちゃんでしょうか?それとも怪獣のあかちゃんでしょうか?
それにしても生まれたばっかりなのにツヨインデスね。
「あーぁ、僕にもこんな時代があったのになぁ…」
公園で走り回る小さな子ども達を観ながら僕はつぶやいた。日曜の真っ昼間から仕事とは何をやってるんだ僕は……そんなふうにため息を吐き、窓から怪獣の世界を眺めていると「まーたサボってんな!」調子の良い声と共に僕の背中を元気な手が叩いた。
「いってえ! 何をするんですか!先輩だからって怒りますよ」
髪がウイスキーのように茶色い女社員がニヤニヤと笑っていた。
「威勢がいいね、でも現実逃避はいかんよ。ほらほら働け」
「やる気がでません。他の社員は来てないんですよ。それに見てください子どもは楽しそうに走り回っているんです」
「ふーん。それで昔、自分にもあんな怪獣時代があったと妄想してたわけ?」
「はい、そーです」
「何それ、アホみたい」
先輩は手を叩いてケラケラ笑う。
「ぜんぜん可笑しくないです!笑わないでください!」
そう言うと先輩は僕に指を向けて「やってみ」と言うから僕は「はい?」と聞き返す。
「だぁからー、怪獣やってみって、言ってるの」
「意味がわかりません」
「やらないと今日の弁当代ださないぞ」と本気な目で僕に視線を送る。
この弁当代とは経費の事だが先輩の印がなくては降りないのだ。
そして僕はこのパワハラ的な行為にムカつきつつも、この上司に向かって両手で爪を向けて悪そうな恐竜をイメージさせた後、シブシブ嫌な顔で「ギャオオオン!」と声を発した。
「あははははは」
先輩はお腹を抱えて笑う。うぜぇなこいつ。と僕は思った。
「先輩! 」
僕は大きな声で言った。
「なに?」
「次は先輩のばんですよ」
「はぁ? なんで私が言うわけ?」
「人の恐竜声をバカにしたんだ。先輩は大層素晴らしい鳴き声を聞かせてくれるんですよね?」
「いや、聞かせないし」
「ってことは僕の勝ちって事で…」
「何よそれ」
「会社の立場で勝って恐竜で負ける…先輩の人生、あじけないなぁ」
「確かに、あんたに負けたくないわ。全てにおいてね」
「だったらさぁ!やってください」
「くっ、よくみとけよ。若造!これが平成のティラノじゃ!」
先輩は両手を頬の近くで構え勇ましく叫んだ。
「が、がおん」
なるほど怪獣だ。火を口から吐く代わりに顔から火を立派に燃やしている。
「あ、先輩の勝ちで」
しおのコナがついたそれはピカピカと光線をダシテ割れました。いや中からワリマシタ。殻があつい縞のはいったタマゴでした。
ペカ、ペカ、ペカと艶のあるひたいをてらしたミドリイロノ生き物がすがたをあらわしました。
がぎょんー!がぎょーん!
大きなコエデ鳴きます。さけびます。おくちから火のたまをポコポコとはきます。
ミドリイロノ恐竜のあかちゃんでしょうか?それとも怪獣のあかちゃんでしょうか?
それにしても生まれたばっかりなのにツヨインデスね。
「先輩、飯おごりますよ。ラーメンでいいですか?」
「あぁ、私にもあんな時代が…」
「今度は先輩が現実逃避ですか!」
平成ティラノ