穴

穴があいていた。

いつもは全然気にしていなかったからか、
そこに穴があるとは気がつかなかった。

なんだろう。
すごく不安な気分だ。

不安、いや、
そうじゃない。

なんとも居心地が悪い感じだ。

いつもと変わらない風景だったはずが、
この穴に気がついてしまったが故に、
いつもと違う感じがして、
なんとなく落ち着かない。

居心地が悪くて仕方がない。



でも。

しばらくその穴を見ていると、
この穴もなかなかもしかしたら、
意外といい感じじゃないのか?
と思えてきたりして、

いや、むしろ、
穴があいてる方が、
しっくりするというか、
趣があっていい。

うん。

これは、実にいい穴だ。

見てるだけで心が穏やかになる、
素晴らしい穴だ。

なぜ今まで気がつかなかったのだろう。

こんな素晴らしい穴を見過ごしていたなんて、
なんてフシ穴だ。

穴があいていた。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-14

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