やってごらん。
「なんでも自分でやってごらん」彼女はそう言って畳の部屋を指さした。
「こうね、しゅっと掴むのよ、しゅっと」彼女はそう言ってしゅっとこぶしを繰り出した。
夢うつつに、こんな体験をした。
ある山で、畑の中、私と彼女は土地開拓をしようと草刈りに来ていた。
彼女は私の師匠だ。農家スタイルの彼女に私は敵わない。私のそれは今どきの流行のウインドブレーカーで、彼女は敢えて古い農家の嫁スタイルで布の軽い服装だ。
なんかおばあちゃんといる気分、いや違うな、達人といる気分だ。
私はそう思い、「あなたって格好から入るのね、お財布寂しくなったでしょう」と笑われた。いやいやそっちこそ、本格的すぎでしょーと冗談を飛ばすと、そうかなー逆にいけてなーい?なんかプロって感じ。と言うので、「確かに、プロだね」とうんうん頷いておいた。
さて、と草刈りに鎌やら電動のこぎりやら取り出したが、私が電動のこを持つと「死ぬ可能性が高くなる」と言って、彼女に取り上げられた。
仕方なく鎌を持つ。
ざくっざくっと苦労して切っている私をしり目に、ブイイイイイと音をさせて若木を切る彼女。
いいなー、どっちが苦労してんだか、と思い、視線を前に戻すとそこには青大将。
「ぎゃー」
私は尻餅をつき、蛇はしゅるしゅると逃げた。
何やってんの、当たり前にならなきゃダメじゃん、と彼女に怒られた。
その夜は地元のスーパーで買った鹿肉を鍋に入れ、「高級食材だ」と言って秘蔵の酒などだし、鯵を確かめながらこだわった料理をした。
これからは狩猟も検討する?と聞かれて、いやそれはあなたに任すと言うと、「ほんとヘタレだぜー」と言って彼女はあぐらを崩した。
音楽をかけ、Jポップを聞いて彼女が踊る。
私はもっぱら見ているだけ。梅酒を飲みながらあははははと笑っていた。
次の日、その家でトイレに入っていた際、しゅーっと言って白い蛇が出た。
便器の裏から、ぬらり。
「おんぎゃあ!」
私はパンツ一丁で飛びだし、下も全部脱ぐ人だと彼女にばれた。
彼女はしゅっと蛇を掴んで見せて、「大丈夫、子供だよ。どっかのペットが逃げたのかな、大人しいね」と言って蛇を可愛がっている。
私は「早く放って、捨てて!」と言い、彼女は「この蛇買おうよ」と言った。
うんぎゃー。
私がズボンを履いていると、彼女が蛇を放した。するすると蛇は畳の部屋へ向かっていく。
「大丈夫だよ、自分で捕まえてごらん」
彼女が言うので、最初見た時より小さく見える蛇に若干ビビりながらも、えいっと掴んでみた。
蛇は大人しい。柔らかく手首に絡んだ。冷たい体温が気持ちがいい。
「そうそう、これからはなんでも自分でしなくちゃね」
そこで目が覚めた。
自分はまだ都会にいる。これから田舎に引っ越す予定。
案外綺麗で快適な六畳間を謳歌しながら、「田舎って大変そうだ」と思った。
でも白い蛇は、田舎にしかいないんだ。
夢の中の彼女を、私は知らない。
やってごらん。
なんか見た夢です。