三日月の爪

「不在」があなたへの想いを大きくする

 職場に置いてきた宿題はなんだっけ
 いつだって思い出せない

 家のあちこちにあなたの匂いが残っていて
 鼻から入って私の胸に刺さってくる
 抜けなくなってしまった棘を持て余している

「不在」があなたへの想いを大きくする

 失ってから気づく
「あなたと出逢えてよかったな」?
 失いたくなかったから
 もう過去形
 失いたくないから

 家のあちこちにあなたの匂いが残っていて
 私を閉じ込めて放さない
 窓を通して見える三日月が
 床に落ちているあなたの爪みたいだ

 最後の夜につけていった下着の色はなんだっけ
 いつだって思い出せない

「不在」があなたへの想いを大きくする
 むくむくと膨らんでいつかきっと私をこなごなに壊してしまう

三日月の爪

三日月の爪

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-09-12

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