復讐者
どうやっても殺せない男
とにかく合法で人を殺したい。
そんな理由で俺はこの時代を選んだ。
後悔しないか、という神の声にすぐさま頷く。
生きていたときはそれが叶わなくて無念のまま死んだ。
死んだ世界で修行を積めば転生先が選べると聞いて真っ先に思い浮かんだのがあいつの顔だった。
あの男に復讐するまで俺は死んでも死にきれない。
その思いでまた現世に甦った。
暫くして目を開ければ小さな俺が産声を上げていた。どうやら生まれたらしい。
早くあいつを探し出して殺したい。
俺の大事な人を殺したあいつを。
俺は恋人を前世である男に殺された。
その男は俺の親友だった。
憎かった。だけど男は次の日自殺してしまった。俺はやり場のない怒りで生涯を終えた。
今度は絶対に逃がさない。あの男を必ず殺す。
20年経ち、やっとこの世界に順応した俺はまず母親を殺した。
コイツは俺に保険金を掛けて殺そうとしたからだ。しかもそれが合法だというから驚きだ。
この世界では理由があるなら殺人を犯してもいいという法律があった。
だから俺を気に食わないという理由で殺そうとした同級生も殺した。
階段から落としたり、シャーペンで喉をブッ刺した。勿論無罪だ。
やるかやられるか、一触即発の世界で俺は生き抜いてきた。
全てはあいつを殺すため。
そして遂に奴を見つけた。
あいつもこの世界で転生して大学生になっていた。
過去に何人も人を殺していた大量殺人鬼だった。
しかしそれも全て免除されている。
彼は生まれながらのサイコパスだからだ。
病気だから殺人をしても罪を問われない。
俺はあいつを殺す理由がない。
だからあいつに殺されるために彼の親を殺した。俺だとわかる証拠を残して。
だけどあいつは俺を殺しには来なかった。
あいつが殺しに来れば正当防衛が成立する。
その為に俺は仕方なくあいつの友達も殺したがそれでも俺を殺しには来なかった。
数日後あいつは自殺した。
理由は自分を殺したかったらしい。
またしても俺は奴を取り逃がしてしまった。
そしてまた転生してもあいつを殺すことが出来なかった。
何度生まれ変わってもあいつと同じ体に生まれ変わってしまうからだ。
しかし大切な恋人を殺した男をこの手で殺せるまで俺は何度でも転生し続けるだろう。
この男を殺せるのは自分しかいないのだから。
復讐者