望郷の宴/韻文詩と短歌
今宵も澄み渡る秋の夜空に
昇りし月は煌々として
草陰の虫の音は止むを知らず
何処 からともなく流れくる琴の音は
時の彼方より響く佳人の調べか
暫し盃を休ませ 笛を手に吹き合わせれば
その雅なること絵物語りの夢の如し
酔い覚めて見渡す朝露の縁
枕もとに紐解きし一巻あり
さては昨夜の出来事は夢の為せる業か
都は遥かに遠く 我が望郷の想い 果てることなし
月の夜に佳人と契りし琴の宴
覚めて哀しや 絵物語の夢
望月を翳めて渡るあの雁を
嵯峨の船にて眺めしあの頃
文交わし末は妻にと想い人
都の月に我を偲ぶや
露を置く宵待ち草よ汝ともに
何れの日にか都の月見ん
望郷の宴/韻文詩と短歌