望郷の宴/韻文詩と短歌

今宵も澄み渡る秋の夜空に

昇りし月は煌々(こうこう)として

草陰(そういん)の虫の音は()むを知らず

何処(いずこ) からともなく流れくる琴の音は

時の彼方より響く佳人(かじん)の調べか

(しば)し盃を休ませ 笛を手に吹き合わせれば

その(みやび)なること絵物語りの夢の如し


酔い覚めて見渡す朝露の縁

枕もとに紐解(ひもと)きし一巻(いっかん)あり

さては昨夜の出来事は夢の為せる(わざ)

都は(はる)かに遠く 我が望郷(ぼうきょう)の想い ()てることなし


月の夜に佳人と(ちぎ)りし琴の宴
     覚めて(かな)しや 絵物語の夢 

望月(もちづき)(かす)めて渡るあの(かり)
    嵯峨(さが)の船にて(なが)めしあの頃

文交(ふみか)わし末は妻にと想い(びと) 
    都の月に我を(しの)ぶや

露を置く宵待ち草よ(なれ)ともに
    (いず)れの日にか都の月見ん
 

望郷の宴/韻文詩と短歌

望郷の宴/韻文詩と短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-12

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